詩篇天竺浪人
孕みグモ
トタンの屋根のかた陰に
でんと居すわる孕みグモ
風が吹いても雨の日も
巣のまん中にしがみつき
わが子愛しやチョウチョとって食おか
わが子かわいやトンボとって食おか
秋の斜日はワインの色で
風がはこぶよ焚き火のにおい
クモは卵のふくろを背負い
◯◯◯◯◯◯の子守唄
わが子愛しやチョウチョとって食おか
わが子かわいやトンボとって食おか
やがて生まれた子どものすがたは
ギヤマン細工のたからもの
琥珀のようにうすらと透けて
秋の日ざしに輝いて
けれども生まれた子グモのむれは
とってもとても腹ぺこで
あまりに飢えてたものだから
目のまえにいる親グモを
母とは知らず噛みついて
よってたかって食いついて
きれいさっぱり平らげて
世間へ散ってゆきました
首だけのこった母グモは
地べたに落ちてころがって
それでも歌っておりました
◯◯◯◯◯◯の子守唄
わが子愛しやチョウチョとって食おか
わが子かわいやトンボとって食おか