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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 11話から15話

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『喉が乾いた』とつぶやいた清子のひとことが、大騒動を巻き起こす。
舞台の主役が代わり、白拍子たちが優雅な舞を披露する頃、
ぐったりしている清子の介抱のため、春奴一門の芸妓たちが、
てんやわんやの大騒ぎになる。

 「誰やぁ。清子に酒を飲ませてしまったのは!」

 「仕方ないやろ。喉が渇いたとこの子が大騒ぎをするんだもの。
 水かと思ったら、入っていたのはお清め用の清酒やった。
 ひとくちで呑んでしまった、清子が悪いんやぁ」

 「最初から最後まで、緊張をし過ぎたのが間違いの原因や。
 いくら初舞台と言うても、ここまで緊張しなくてもいいものを。
 力の抜き方をしらない不器用者やなぁ、この子ったら」

 「いいから、そっちを持って。
 面倒くさいからもう、このまま担いで、ウチまで持って帰ろうか」

 「あんた。おんぶしてやりなさいよ。体力だけはウチの門下で一番だもの」

 「でもなぁ。綺麗やったでこの子。ウチ、久々に感動したわ。
 一切手を抜かず、最初から最後まで巫女の役目を貫徹するなんて、
 案外、熱い気持ちを持っているじゃないの、この子」

 「阿呆なこと言わんといて。ただの加減知らずの、粗忽者や。
 芸子が仕事を終わるたびに、酒を飲んでいちいち倒れていたんでは、
 商売にならへん。
 もう少し根本的に、酒に強くさせる必要があるわ」

 「アホなことをいわんといて。
 15の子に、酒の特訓をさせてどうすんの。常識が疑われてしまうわ」

 「そう言わんと頑張ったんだもの、清子を褒めてあげようよ。
 根性だけで乗り切るとは、子供ながら大したもんや。
 物覚えの悪い亀のような子やけど、可愛いところも案外あるもの。
 早よ行こう。醜態の写真を撮られんうちに。
 この子を早く隠そう。
 こんな、酔いつぶれたみっともない証拠写真を残しておいたら、
 この子の面目が丸つぶれで、可哀想やないか」

(13)へ、つづく