赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 11話から15話
「そう言われてみれば、そうだ。
おいらがここへ来た頃から、あの子は、毎日ベッドに寝たきりだったなぁ」
「心臓病は、症状が出なければ、見た目は普通の人変わりません。
でもあの子は、お外で遊ぶことも、登校することも自由にできないの。
身体だけじゃないの。心にも痛みを感じながら、必死に生きているの。
心臓病って身体にもきついだけど、心にも、とっても辛い病気なの」
「それならおいらも、おんなじさ。
君を愛するようになってから、君なしでは生きられなくなってきた。
会えないときは、胸がうずく。
チクチクと一晩中痛んで、寝られないもの」
「嘘つき。うずくのは、あなたのやんちゃな下半身でしょう。
顔さえ見れば、すぐにやりたがるんだもの。
あのねぇ・・・・女の子の身体は、とてもデリケートにできているの。
受け入れる準備が出来た時だけ、応えてあげることができるの。
人間なら毎日でも出来るけど、わたしたちはそうはいかないの。
いつでも発情しているのは、この広い猫の世界を見回してみても、
きっと、あんた一匹だけだわよ」
朝から不謹慎な会話を交わしているたまとミイシャを尻目に、
清子が階下と2階を忙しく、ドタバタと往復している。
「ねぇ。なんで朝からドタバタと動き回っているの、清子は。
どう見ても、無駄な動きばかりしているわ」
「実はな。姉さん巡りの泊まり込みの旅が、今日からはじまるのさ。
朝までに荷物をまとめておけと言われたのに、清子は根っからの呑気者だ。
朝になって、準備が出来ていないことにやっと気が付いた。
だからああして、はた迷惑なほど動き回っているんだ」
「一緒に行くはずの、お母さんはどうしたの?」
「お母さんは、放任主義者だ。
姐さん巡りの旅は、毎度のことだから悠然と構えている。
慌てなくてもいいから、忘れ物をしないように自分で用意をしなさいと、
下で涼しい顔をしている。たぶんね。
今ごろは、悠然とお茶を飲んでるはずさ」
「カバンに、同じものを、入れたり出したりしてるだけじゃないの。
出かける準備なんか、まったく進んでいませんねぇ。
段取りも悪いけど、要領も悪いのねぇ、清子って子は」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 11話から15話 作家名:落合順平