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2020.5.13「和音占い師Sayokoのライブ」にて

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愛は天下の回りもの 
大切なモノは それは明日

A 幸せのクローバー 私への贈り物
果てしなく続いている緑の絨毯が

B できるならこの熱い想いを
送ってね 四つの葉に変えて

A喜んで笑っている私のその顔を
草原の夏の空 想い浮かべている

C 時が何かを変えてはくれない
何もしないで寝ている人には
だからさあ行こう!どこまでも夢を描いて
行こう 行こう どこまでも
運を味方につけようよ 
大切なモノは それは明日


これは明るく希望のある歌詞で、綺麗な応援歌が心に染み渡るみたいだ。
隣のリナはうん、うん頷いて聴いていた。

目の前で歌っているSayokoの横顔はうつむき加減でほとんど目をつむっていた。
たまにゆっくり首を振ると髪がさらさらと動くだけであった。
静かな大人しいライブだ。
ライブと言うより声楽ピアノ弾き語りコンサートだと僕は思い、もうすでに退屈モードを感じていた。

僕は隣のリナに耳元で
「ねえねえ、Sayokoさんっていくつなの?」
ついついバカな日本人の典型的な質問をしてしまった。
僕の悪い癖。
「知らないよ!同じ位か、あたしより少し上だと思うよ」
Sayokoの世界に陶酔していたリナは僕の質問のくだらなさに、
見向きもせずに面倒臭そうにそう答えた。
リナの言い方に、「ふーん」僕は狼狽と、質問した事に後悔を感じ、
少し自己嫌悪で不機嫌な気持ちになった。

実を言うと、僕は声楽の歌や合唱隊、特にオペラの女性ソプラノの歌が苦手なのだ。
ソプラノを聴くとだんだん奥歯の虫歯が痛み出した経験もある。
いわゆるトラウマと言う奴だ。
「綺麗な声だけどこの調子じゃ、たまったモンじゃない!!」
僕はすねた半分、逃げ出したくなった。
「リナには悪いが、腹痛の振りをしてトイレにでも逃げ込んでスマホのゲームでもやってようかな?」
そんな心の葛藤を背負いながらもその場を耐えた。

ところが、ふとステージのSayokoをよーく見てみると、スポットライトの当たっている
彼女の横顔がとても美しい事に初めて気がついた。
鼻から2つの唇、顎にかけての真っ直ぐな線、これは歯科助手のリナが常日頃言っていた、
上下の顎のかみ合わせの完璧な美のラインだと説明してくれたのを思い出した。
「本当だ、そう言われて見ると綺麗だな」僕は彼女の歌と横顔、そして丁寧にピアノを奏でる白魚のような長く細い指と演奏する美しい姿に、ボーッと見とれてしまった。

2曲目が終わり、拍手が起こり、また少しの沈黙の後に再びインストルメンタルを弾きはじめMCのような語りが始まった。
黒子は波の音を作る楽器を使った。

語りMC

あなたは旅行が好きですか?外国ならどこに行きたいですか?
私はミクロネシアのアジアの海に行きたいと思います。
そしてそこはスコールのある街。
突然のスコールで天然のシャワーで全身ビッショリ濡れたら気持ちがいいと思います。

国内ならあなたと一緒に、森林や樹海で木の匂いの中で雨に打てれて、心と身体の全ての汚れや邪気を流れ落とし、山のパワーを吸い上げて共有したい。
そして海なら雨の真っ暗な夜の海に入り、血液に近い海水の天然塩のパワーをあなたと分ち合いたいです。

このBGMのインストルメンタルは「窓の外」と言うタイトルだ。

彼女のカリスマ性がまだ分からない僕にとって、このMCの内容に関してはノーコメントだった。暗い曲だが、他のお客さんは馴染みの曲のように拍手をしていた。
それよりもピアノを弾きながらよくあれだけ、間を取ったり、強弱をつけて喋れるな。
と他の客と違う所に関心していた。
あと、僕を含めて一般の人が初めてあの内容の語りを違和感なく聞けるのは、とても良い言葉の発音と喋りのうまさなのだという事に気がついた。
3曲目が始まる前にSayokoはマイクの位置をゆっくり直した。
歌の3曲目、4曲目は打って変わってマイクに口をかなり近づけて囁く様に歌い始めた。
これは専門的に言うとウィスパーボイスだ。宇多田ヒカルがそれに当たる。
タイトルは「セピアカラーのシネマ」「木漏れ日の中で」とパンフレットに書いてあった。

歌の3曲目「セピアカラーのシネマ」

歌詞

A 知らない異国の街
すれ違う異国の香り
B 偶然のいたずら
あなたとの出会いの瞬間
「Nice Meet You…」
素敵なその瞳

C 君の過去を消してあげる
君の明日を描いてあげる
二人の姿が街並みに消えてゆく
長い並木道のラストシーン La la la

A 昨日から私を
連れ出したAir Plain
刺激が強すぎるこの空は

B 偶然の過ち
私が振り向く瞬間
「Nice Meet You…」
セピアカラーのシネマの中に

C あなたの過去を消してあげる
あなたの明日を描いてあげる
二人の姿が街並みに消えてゆく
長い並木道のラストシーン La la la


3曲目は海外の旅先で知り合う男女の恋心をエキゾチックなアジアン風のアレンジで、
小柄の黒子がボンゴや色んなパーカッションの楽器を匠に操った。
歌詞の中の「あなたの過去を消して、あなたの未来を描いてあげる」
というリフレインが印象的だった。
囁いた歌なので聴き様にはとても切なく、色っぽい感じでもあった。

4曲目は聞き用によっては不倫を歌った詩にも思えた。
歌の4曲目「木漏れ日の中で」

歌詞
A 揺れているのは あなたの木漏れ日
あー あの日と まるで同じような場面
肩に手をやり 歩く二人の影が
幸せな時を 確かに刻んでいるから

B このまま帰るなんて 許されないかしら?
夕陽も帰ろうとして 許されないよね

C Sun Stream Through The Leaves Of Trees
木の葉の様に 揺れる私の想い
でも素直になりたいの 
揺れている木漏れ日の中で

A 揺れているのは 私の木漏れ日
あー あの日と 忘れてしまったような時間
肩に手をやり 抱き寄せるあなたの想いが
Love Story色のドラマを演じているから

B このまま帰るなんて 許されないかしら?
夕陽も帰ろうとして 許されないよね

C  Sun Stream Through The Leaves Of Trees
時間を止めたがる 私の想い
でも愛を掴みたい 
揺れている木漏れ日の中で

間奏では鼻歌、ハミングやスキャットでメロディを綺麗に奏でた。
僕は一瞬、何の楽器の音なのか分からなかった。とても意表をついた試みだ。
歌唱は打って変わって囁いている様だが、メロディやコードが凝っているのと、オブリガード(歌のメロディの無い所に入れる楽器のフレーズ)がとても凝っていてアレンジも良い。
客観的に弾き語りをしながらでは難しいそうなプレイを彼女は淡々と行った。
難解なフレーズを弾くときは右肩を少し上げて弾く癖を見つけた。
その事よりも、とにかく細く白い右手の指の速さに僕はビックリしてしまった。

そう言えば、気にはしていなかったけれど、ステージの後ろのテレビモニターは彼女の正面の顔を捉え、丁度彼女の後頭部のあたりに設置してあり、何となく彼女の顔の大きさ位に写っていた。