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怒りんぼのカオリちゃん

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 もう、ゾウさん公園はやめて、反対がわにある商店街を目ざす。ポケットには百円玉が三枚、カオリがスキップするたびに、ちゃりん、ちゃりんと心地よい音を聞かせてくれる。うひひっ、これでたこ焼きとアイスクリームが買える。それでもおつりがくる。
 しばらく歩くと、保育園のわきにある雑木林で、男の子が三人ケンカしているのを見かけた。その顔ぶれを見て、カオリは思わず電信柱のかげに身をかくした。げげっ! あれは四年生のシブヤだ。学校でも有名なイジメっ子。しかも弱そうな下級生ばかりをねらってイジメるたちの悪いやつ。もうひとりは、たぶんシブヤの友だち。そして哀れな本日の彼らのエモノは……ああっ、背の低いシアトルマリナーズの帽子をかぶった子。
 あれはユウのやつだ!
 弱虫ユウが、史上最悪のイジメっ子、シブヤ一味にからまれてる。どうしよう、助けに行きたいけどカオリにとってもシブヤは怖い上級生、ついこの前もクラスの北沢くんがランドセルを川のなかへ放り込まれて泣いていた。北沢くん、うちのクラスのなかでは体も大きいほうなのに、やっぱり四年生にはかなわなかった。ましてやユウのやつはチビで弱虫、ああ、どうしよう、家に帰ってパパかママでもつれてこようかしら。
 シブヤは、にたにた笑いながらユウの肩を小突いたり、ふとももにヒザ蹴りをくれたりしていた。ふつうだったら、それだけで泣いちゃうけど、でもユウのやつはだまってうつむいてる。なんか、とっても可哀そう。それに、弱いものイジメばかりしているシブヤたちにだんだん腹が立ってきた!
 カオリは怒ってない、カオリは怒ってない、カオリは心の広い女の子、こんなつまんないことで怒るもんですか、あーバカバカしい。いや、ぜんぜんバカバカしくない、あついらの横暴をこれ以上ゆるしてはおけないわっ!
「ちょっと、あんたたちヤメなさいよ!」
 気づいたときには、もうカオリは電柱のかげから飛び出し、がるるっ! シブヤたちに食ってかかっていた。ちゃんといつものように、ぴきぴきぴきっと、おでこに青筋も立てている。
「なんだ、おまえ?」
「あたしは、この子のクラスメイトよっ。それよりあんたたち四年生のくせに、二年生をイジメるなんてひきょうじゃないの! しかも二対一よ!」
「うるせえ、ブースっ!」
 シブヤが、どんっと肩を突き飛ばした。カオリはそのまま道路のうえに尻餅をつく。ワンピースのおしりがたちまち泥んこになった。うう、くやしくて涙が出そう……。
 でもそのとき、ユウが「うおーっ」と叫んで両腕をめちゃくちゃに振り回した。ぶんぶんぶんぶん! 格闘技の常識なんてからっきし無視した、ヤケクソ攻撃! 見るとユウのやつ、ぎゅっと目をつぶってる。
「わわっ、なんだ?」
 でも、その迫力に気おされて思わずのけぞったシブヤの鼻っつらに、ぺちん! 一発決まった。まぐれ当たり。シブヤは「痛ェー」と言って鼻をおさえ、その場にうずくまった。ユウは肩で、はあはあ息をしている。カオリはそんな二人のようすを、かたずを飲んで見守った。