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テオブロミン

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https://www.youtube.com/watch?v=lnSTl9R91ec
Tomita - The old castle


翌朝、県警のヘリが迎えに来てくれた。
警察に一部始終を伝えたが、とても信じてもらえる感じではなかった。
「お疲れのようですね、いいですよ。お話は後ほどで。」
ところがいっしょにやってきた電力会社の保線職員は納得しているようだった。
「あれはね・・このお山の神様なんですわ・・。
このダムで沈んだ谷に住んでいたんですわ。
本来、彼らの住処を自分らが踏みにじって沈めてしまったんですけどね。
昔はもっといたんですけどね、いま・・ひとりになっちまった。
たぶん最後の・・ひとりでね。可哀想なんですけどね。
だから毎年雪が降る前にね、御鎮まりくださいと
お供えなんかもするんですよ、今でも。
ここ数年見てなかったから、あなた幸運ですよ。
でもね、あなた、滅多なこと云っちゃぁダメですよ。
お山の神さまに遭ったことは内緒にしてくださいね。
あなたのためにも。ね。」

ヘリから森を眺めて見ると、もういちど会いたいと思ったが
見つけることは出来なかった。
「あの・・今度・・チョコレートもお供えしてあげてくださいませんか」




作品名:テオブロミン 作家名:平岩隆