テオブロミン
弐
https://www.youtube.com/watch?v=hjxbwZG20Wc
Tomita "Pacific 231" (1978)
ふて寝したのか、岩に突っ伏したようにして寝ていた。
深い眠りから目が覚めるとまだ暗かった。
というよりは空腹のため目が覚めた。
なにか物音がする。
近い。振動まで伝わってくる。
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
外から岩の表面を何者かが引掻いている・・。
その瞬間思い出したのは樹木の皮を剥いだ熊の爪痕・・!
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
異臭が漂う・・牙でも研いでいるのか
執拗なまでに休むことなく
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
しかし熊ならこの季節・・冬眠しているのではないのか?!
おいおい・・空腹で冬眠できなかったってアレか・・・!?
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
クンクン、クンクン
なにか嗅ぎまわっているようだ。
なんてことだ、頬から流れている血の臭いか!
足跡も残しまくりだ!
なんであそこで大声で叫んでしまったんだ!
餌はここにありますよ!と
教えているようなものじゃないか!
低いうなり声の後再び岩にかじりつく。
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
息を潜めて身体を穴の奥に縮こまらせて
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
一旦静まった・・。
ほっと胸を撫で下ろしたそのとき
岩の間から太く毛むくじゃらの長い腕が
勢いよく突っ込まれて!
更に身を縮めて。
大きな鉤爪をもつ手で
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
ガリガリ、ゴリゴリ
と辺りを引掻きながら・・
もうだめだ・・。
執拗に引掻きまわして・・。
そう思えたがほんの僅かの差で届かなかったようで。
さすがに諦めたのか腕を引き抜いた。
だが夕方の私のように
憤懣やるかたなかったのであろうか。
咆哮をあげた。
うーヴヴヴヴヴヴヴううぅぅォォォォォーッ!!
その余りの迫力と恐ろしさに意識を失った。