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di;vine+sin;fonia デヴァイン・シンフォニア

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 ルイフォンから放たれたナイフは、ぎらりと陽光を反射させながら、銀色の軌跡を描き、空へと向かっていた。
 ぱりーん、という硬質な高い音が響く。
 硝子の街灯が、ナイフによって撃ち砕かれていた。
 はっ、と状況を理解したタオロンは、自身の持つ優れた身体能力のすべてを使ってブレーキをかける。
「逃げるぞ!」
 叫ぶと同時に、ルイフォンは金色の鈴を翻し、メイシアをふわりと抱きかかえた。彼女の戸惑いも構わずに、路地裏へとさらっていく。
 たたらを踏み、すんでのところで留まったタオロンの鼻先を、ぱらぱらと虹色の光の欠片がかすめていく。
 見た目の美しさとは裏腹な、冷酷な刃の万華鏡。
 地に落ち、繊細な響きを打ち鳴らして、粉々に散り乱れた。
「やってくれるじゃねぇか……」
 足元に広がる鋭利な紋様を前に、青ざめながらも、タオロンは微笑んだ。

 一方、路地に逃げ込んだルイフォンは、上目遣いに訴えかけられていた。
「あの……、降ろしてください……」
 毅然と振る舞ってはいるが、メイシアの唇の色は薄く、小刻みに震えていた。汗でしっとり濡れた掌は、無意識のうちにルイフォンの腕にしがみついている。相当に怖い思いをしたのだろう。
 ルイフォンはこのまま抱きかかえていたい衝動にかられたが、じっと見詰められていてはそうもいかない。名残惜しげにメイシアの髪に顔を埋めると、彼女は「きゃっ」と、小さな悲鳴を上げる。再び抗議される前に、すばやく彼女を解放した。
 メイシアの頬は朱に染まり、いつもの自然な表情が戻っていた。ルイフォンは微笑を漏らした。
「行くぞ」
 そう言って、彼は歩き出す。
 ふたりの目的は、迎えの車が来るまで自分たちの身を守ること。無駄に戦う必要はない。タオロンには悪いが、付き合ってやる義理はないのだ。
 できればこのまま、どこかに隠れて遣り過ごしたい――ルイフォンは周囲を見渡す。
 少し先の建物の扉が、半開きのまま、ぎぃぎぃと風に揺れていた。