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di;vine+sin;fonia デヴァイン・シンフォニア

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 慌てふためくメイシアを見て、いたずら心が刺激されたのか、ルイフォンが大真面目な顔で彼女にぐっと迫った。
「仕事上がりの男が、女の膝を枕にしない道理があるか?」
「え? あの? そういうものなんですか?」
 メイシアは狼狽して、冷静な判断力を完全に失っていた。顔を真っ赤にした彼女の間抜けな質問に、ルイフォンは噴き出すのをこらえながら深々とうなずいた。
「そうなんだ」
「はい、分かりました」
「じゃ、ここに乗ってくれ」
 きょとんとするメイシアに向かって、ベッドをぽんぽんと叩いて示す。
「え?」
「俺、今から寝るから、膝枕よろしく」
「え? え、ええええ?」
「お前は、俺の付き添いだろ?」
 メイシアに反論の隙を与えず、ルイフォンは強引に押し切る。彼女は何か騙されているような気がしてならなかったのだが、彼のご機嫌な顔を見ると、抗うことができなかった。
 膝の上に頭を載せたルイフォンが、目を閉じて、猫が喉を鳴らしているときのような満足気な表情を見せる。ほどなくして、彼は嬉しそうな微笑みを浮かべたまま、規則的な寝息をたて始めた。印象の強い言動のために、起きているときには忘れられがちな端正な顔立ちは、やすらぎに満ちていた。
 メイシアは無意識に、彼の髪を梳く。柔らかな癖毛が、滑らかに指の間を抜けていった。
 彼の眠りを守ることに不思議な心地よさを感じ、彼女はこの時間が長く続けばよいと願った。

「ルイフォンは、まだいるか!」
 勢いよく店に飛び込んできたトンツァイに、ワイングラスを磨いていたスーリンは、思わず手を滑らせそうになった。耳を打った大声に非難を込めて、彼女は頬を膨らませる。
「どうしたんですか?」
「今、新しい情報が入った! 至急、ルイフォンに伝えたい」
 スーリンの表情が、さっと切り替わる。「すぐ呼んできます」と言い放ち、次の瞬間には彼女は走り出していた。
 残されたトンツァイは、手近にあった椅子に勝手に座り、小刻みに膝を揺らす。
「ルイフォンのやつ、携帯端末の電源を切りやがって……」
 ぶつぶつと口の中で文句をいう。
 彼の手には、すぐに伝えるべき情報があった。
 すなわち――。

 ――藤咲メイシアの異母弟、藤咲ハオリュウが解放され、藤咲の屋敷に戻された……。


〜 第二章 了 〜