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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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影さえ消えたら 2.復元

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 屋根の上で子供たちが騒いでいる。大輔に近寄ろうとした小さい隼人がトタン屋根の上で足をすべらせて、大慌てでまた上に戻っていく。

「じっとしてろ! おまえまで落ちるぞ!」

 隼人が叫ぶと、屋根のむこうから小さい隼人が顔を出した。

「だってぇ……落ちたらだいちゃんが死んでまう」
「いま俺が行くから! 大輔もこらえろ!」

 下で支える人間がいないので、木製の階段は使えない。隼人は息を飲んで工場の一階にかけこんでいった。陽のささない工場の内部はひんやりとしていて、無数のネジやボルトの類が足の裏側に痛みを送ってくる。天井からぶらさがる無数のワイヤーや切れた電線に肝を冷やしながら、二階につながる階段を探した。

 砂利をまきこんだスライドドアをこじ開けていると、外から悲鳴が聞こえた。言葉にならない叫び声の中に「落ちる―っ!」という声を聞いて、隼人は再びシャッターの外にむかった。

 表に飛び出したその瞬間、雨どいが崩落して大輔の身体が宙に投げ出された。首に巻いた赤いマントが空に舞い上がる。綾女が金切り声を上げる。

 ――小さい大輔が死んだら、大輔の未来は消失、する?

 閃光のように脳内をよぎった考えをふりきり、隼人は力をふりしぼる。なまった筋肉を駆使して地面を蹴り上げる。大輔の図体が目前に迫る。

 ――絶対に、落とせない!

 渾身の力をこめて隼人は両腕を投げ出した。

 大輔の身体を受けとめた――と思ったその時、脳に衝撃が走った。

 それきり外界の音は全て消え去って、隼人の意識は途絶えてしまった。