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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで

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 花柳界というと、なにか独特で特別な世界という印象がある。
世間は花街を、奇異の目で見る
これは花街と遊郭を混同した勘違いだ。だがそれはいまだに横行している。

 花街には明確なルールが有る。
だがこのルールは、外からはまったく見えない。
特定の常連だけをお客として認めている。これはまったく怪しいシステムだ。
このシステムが、花街の謎にさらに拍車をかけている。

 花街には、中での出来事を、外に漏らさないというしきたりがある。
漏らされて困る様なことが、夜な夜な起きているわけではない。
花街は今でもそうした伝統を、ただただ、厳格に守り続けているだけなのだ。

 春奴母さんの原点は、江戸の深川。
深川は、明暦(1655~1658)の頃から、材木を扱う港としておおいに栄えた。
そのため、大きな花街がここにあった。
商人同士の会合や、接待の場に欠かせないのが、芸者衆たち。
最初のうちはほかの土地から芸者衆が通ってきていたが、やがて、
深川に居を構える。
始祖は、日本橋で人気を博していた「菊弥」。
「菊弥」は日本橋で揉め事がおこし、やむをえずこの深川に
流れてきたという説もある。


 深川には独特の土地柄がある。
顧客は、人情に厚い、粋な職人達が多い。
そうした顧客の好みが、辰巳芸者の身なりや考え方に、色濃く現れている。
薄化粧のうえ、地味な身なり。たいていが鼠色系の着物。
冬でも足袋を履かない。素足のまま、下駄を鳴らして花街を駆け回る。
当時男のものだった羽織を羽織って、お座敷に上がる。
男っぽい喋り方。
気風がいい。情に厚く、芸は売っても色は売らない心意気を自慢する。
辰巳芸者は『粋』の権化として名声を馳せる。
当時の江戸でおおいに人気をあつめる。


 源氏名も「音吉」「蔦吉」「豆奴」などの、男名前を名乗る。
東京の芸者衆には、「奴」のついた芸妓名を名乗る人が多い。
そもそもの由縁が、こうした辰巳芸者たちの存在だ。


(9)へつづく