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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで

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 祭りが近づくにつれ、女たちが忙しくなる。
独立して自活している6人の弟子たちが、かわるがわる春奴の置屋へ
やって来る。
狙いはただひとつ。平家絵巻行列の、主役の座。
祭りが近づくにつれ(毎年のことだが)、女たちの争いが熾烈化していく。


 『それにしても・・・・』たまが大きくあくびをする。

 (まったく。女どもにも困ったもんだ。
 何時までたっても、おいらを子供扱いしゃがる。
 初めて来た時は、たしかに、手のひらの上に乗るお子様サイズだった。
 『あらぁ、まぁ可愛い~』などと褒められる大きさだった。
 ところがよ。体重はもう、とうの昔に2キロを超えたんだぜ。
 3ヶ月すぎれば子猫も、思春期にはいる。
 それなのに清子ときたら、ぜんぜんおいらのことを気にしない。
 風呂から、素っ裸で出てくる始末だ。
 前も隠さず、どうどうとおいらの前を歩いて行く。
 還暦を超えた春奴母さんまで、上半身裸のままで化粧を始める。
 オイラ。痩せても枯れても男の子だぜ。
 頼むからもう少し神経を使ってくれ。
 おいらはもう、このあいだから、思春期のど真ん中へ入っているんだぜ)

 しかし部屋中に立ち込める女どもの粉(おしろい)の匂いは、
嫌いじゃないがな・・・とたまが目を細める。
天気もいいし、ぼちぼち散歩にでも行くか、とたまが立ち上がる。

 全身の力を使い、ひとつひとつよじ登っていた2階への階段も、
今は苦もなく、トントンと越えていくことが出来る。
軽やかな足取りを保ったまま、あっというまに清子の部屋へたどり着く。

 清子の部屋は天気の良い日だけ、ちいさな隙間が作られている。
カーテンのすき間から、6月の風が吹き込んでくる。
すき間からたまが顔を出す。
隣家の青い屋根瓦が、たまの目に飛び込んでくる。

 真相向かいの部屋の窓は、ピンクのカーテンで覆われている。
小学6年生になった女の子が、この部屋に住んでいる。
こちらも天気の良い日だけ、カーテンがおおきく開け放たれる。
少女は病気がちだ。
休んでいる日の方がおおい。
そのため、たまと、すっかり顔見知りになっている。

 (おっ閉まっているぜ。ということは今日は学校かな・・・)

 そのとき。ピンクのカーテンが、ふわりと揺れた。
見たことのない白い子猫が、ガラス越しの窓辺に現れた。
初めて見る猫だ。
『おっ、』即座に反応したたまに気が付かず、くるりと白猫が背中を向ける。

 『なんだよ。背中を向けちまったぜ。顔を見るひまもなかった。
 なんでぇ、いきなりの無視かよ・・・・ふん、面白くもねぇ』

 たまが、窓辺で身体を丸める。
気持ちの良い6月の風が、たまの鼻先をかすめていく。
細めた目で白い子猫を見ているうち、いつしかウトウト眠りにおちていく。