赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで
「おや。例の銀行マンとは、もう別れたんだろう?。
風の噂でそんな風に聞きました。
空き家になったと思ったら、なんだい、もう次の男を見つけたのかい、
おまえは。
忙しいねぇ女だねぇ、お前も。
舞は上手だというのに、肝心なところで男の扱いが大雑把すぎるから、
毎度のように、長続きしないんだよ」
「独り身で過ごしているお母さんに、とやかく言われたくありません!」
「うふふ。そう怒んなさるな。とにかく万事よろしく頼みますよ。
じゃ、あたしは用事を思い出しましたから、今日はこれで失礼します。
新しい男によろしくね。
では、頼みましたよ。清子の舞の件は。
じゃね。
ああ・・・・忙しい。、忙しい。忙しいったらありゃしない」
「あっ。お母さん。お母さんったら!。あ~あ、行っちゃったぁ・・・」
豊春が褒めていたのは、清子が正座した時の美しさ。
清子の正座は、足の甲がきちんと畳に付く。
上を向いた土踏まずの上に、清子の丸いお尻がすっぽり収まる。
そのまま背筋を伸ばし、膝に両方の手を置く。
それだけでごく自然に、凛とした清子の正座が完成する。
こんな風に正座が絵になる女の子は、最近では、とにかく珍しい。
(座る姿はピカイチです。でもねぇ・・・・
肝心の舞いになると、ロボットじゃあるまいし、ギクシャクと
ぎこちないのよ。
座ったときのこの子は、身震いするほど綺麗だというのにさぁ。
ああ・・・もったいない。天は人に2物を与えませんねぇ、
ホントウに・・・)
事あるたびに6番目の弟子の豊春が、そんな愚痴をこぼす・・・
(8)へ、つづく
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで 作家名:落合順平