赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで
終戦後。未成年に関係する条例がすべて改正されて、『お茶屋』が
『料亭』と改名され、年齢制限が厳しくなる。
満18歳からでないと、お座敷に出られない事態になる。
『18歳の振袖など、見ていて気持ち悪い』という声が、あちこちで
いっせいにあがる。
だが条例には逆らえない。
いずこの花柳界でも、雛妓(すうぎ)の対応に四苦八苦することになる。
女性が着るきものの袖には、意味が有る。
その昔。万葉の若い女性たちは、袖を振り、男性を誘ったと言われている。
当然のことながら、結婚してしまえば袖を振る必要がなくなる。
ゆえに女性は、結婚した瞬間から袖を留める。
袖の短い、留袖などを着ることになる。
元禄時代の記録によれば、若い男女はともに振袖を着ていたと記されている。
振袖は通常、男子は17歳の春。女子は結婚の有無にかかわらず19歳の秋、
袖を短くするとともに脇をふさいだ。
その後、振袖は女性の衣装として発展した。
関所を通る際。未婚女性は、振袖を着用していないと通過できないほどだった。
着用していないと、年齢や身分をごまかしていると因縁をつけられた。
未婚女性といえば、振袖を着用するものという認識が広まっていたからだ。
ゆえに関所の近くにはたいてい、貸し振袖屋があったという・・・
ひと目惚れという病気は、ある日、突然やってくる。
白い子猫をひと目見たあの瞬間から、たまは、熱病のような片思いを
味わっている。
だが。白い子猫は、あの日以来いちども姿を見せない。
声を掛けたくて仕方ない。しかし、姿を見せないのではそれも叶わない。
もやもやしたままのたまが、座布団の上で横になる。
清子が愛用している座布団だ。
15歳の少女特有の匂いが、なぜかたまを安心させる。
ごろんと横に伸びたたまが、そのまま、気持ちの良い眠りの中へ落ちていく。
夢の中に、愛する白い子猫が出てきた。
(おっ。願いが叶ったかな。いとしい白猫ちゃんの登場だ!)
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 6話から10話まで 作家名:落合順平