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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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あの日、雨に消えた背 探偵奇談10

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「仕方ないよ、前世で相当あくどかったんじゃない?でも、伊吹先輩なら入れるはずです」

伊吹はじっと洞窟の奥を見つめている。

「神の水面は、隠された罪も、自身すら忘れている思いも映し出す。瑞くんに感じている罪悪感の正体がわかるかもしれません。いつの日か、覚悟ができたら、どうぞ」

雨に打たれながら、伊吹は黙っている。まるで洞窟の中にいる者と、無言で対峙しているかのように、じっと動かずに。

「…雨がひどくなってる。帰ろう」

伊吹は洞窟に背を向けたけれど、瑞にはわかった。
伊吹もまた、あの日と同じにいざなわれている。呼ばれているのだと。
いつかくぐる日が来るのだ。

「冷た~このままだと風邪ひきますね」
「ちょっとおまえんちの神社で雨宿りさせてもらっていいか」
「どーぞどーぞ」

先を行く颯馬と伊吹の背中に、瑞は静かに呟く。


「…死ぬまで先輩を忘れずにいたら、今度は俺の勝ちだ」


終止符を打てるのなら、この時代で。この二人で。
そんな誓いを込めて。


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