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daima
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novelistID. 61590
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シロカネのホロケウ

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そう、俺はこの日の為に生きてきたのだ……お前を殺すこの日だけを夢見て生き長らえてきたのだ!


ウォセが穿った牙穴から真っ赤な血を空に撒き散らしながら、エタラカの鋼の体が全身で叫ぶ。


しかし……。


〈ターーーーーン!!〉


「な……に!?」


エタラカは知らなかった……人間達の命を奪うことへの貪欲さを。エタラカは知らなかった……獣達が狩られる以上に人間同士が殺し合い、屍の数だけ鉄砲が進化していたことを。

単発銃から連発銃へ。レラの命を奪った鉄の塊から火を吹いて飛んでくる恐ろしい速さの何か……それが一発だけだと思い込んでいたエタラカは隙を見せてしまった。

放たれた銃弾はまだ空中に留まるエタラカの、腹の皮を裂き胃袋を突き破り背の骨を砕いてから彼方へと消えた……笑うように咆哮しながら……。


〈ドサッ……〉


勝利を確信した狩人は、自分の仕留めた獲物を確かめる為に足早に歩を進める。一歩、二歩、三歩……。

獲物の前にしゃがみ、生意気な面でも拝んでやろうと右手を頭の上に差し出した。


「ガルフゥーーー!!」


瞬間、閉じていた筈のエタラカの瞳がカッと見開いた。そして、眼の前にある仇の腕に喰らいつき自らの体が捻じ切れんばかりに引きちぎった。

狩人は悲鳴を上げてのたうち回る。

利き腕を失くし鉄砲の持てなくなった狩人は命を奪われたも同然……。最後の最後、事切れる寸前で蘇ったエタラカは、レラの復讐を成し遂げ森の獣達を守ったのである。


『ゥウォフゥーーーーー……』


その時、消えゆきそうな意識の中で微かに、悲しげな狼の遠吠えがエタラカの耳に届いた。


「俺の為に泣いてくれるのか……ウォセ。だが、どうやら俺様は……ここまで……みてぇだ」


『ゥウォフゥーーーーーー、ゥウォフゥーーーーーー……』


「ハァ……ハァ……聞こえる、聞こえてるぞ……。初めてにしちゃーうめえもんだ」


『ゥウォフゥーーーーーーーーーーーーーーー、ゥウォフゥーーーーーーーーーーーーーーー……』


「ありがとな……俺の……ウォ……セ」


初雪が風に舞いながら、抱きしめるようにエタラカの体を包み込んでいった……。

幸せだった頃の二匹の声が、雪空の中に踊っている。


(ねえ、エタラカ? この子の名前ウォセって付けようと思うの……)

(吼える? 何だかみょうちくりんな名前だな……)

(この子が吼えて、メチャクチャなあなたの居場所を教えてくれたら、私はすぐに飛んでいって……あなたを見付けられるでしょ?)



〈了〉


【キャラ名解説】
 ・名前 ……アイヌ語訳
 ウォセ ……吠える
エタラカ ……めちゃくちゃ
シアプカ……老大な雄鹿 
 ピリカ ……可愛い
アムルイ……鋭い爪
 レラ  ……風
作品名:シロカネのホロケウ 作家名:daima