あなたが残した愛の音。
第9章 禁断の愛の果て
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それからも博之は、ひとみのアパートを数回訪れ、二人の関係は深まる一方だった。
禁断の愛。誰にも言える筈がなかった。
そしてその関係は、2学期が終わるまで続いた。しかし、2学期の終業式以降、ひとみ先生はもう、博之の前には現れなかった。
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博之は病床のひとみの手を握り、
「もっと早く連絡してくれればよかったのに、先生にだけ苦労をかけてしまって」
「私の軽率な行動が、そうさせたの」
「それでも、愛音さんには不自由な人生を送らせてしまって、僕の責任でもあります」
「木田君に責任はないわ。認知する必要もない。あの子もそれは分かっている」
「これからは、僕がしっかり見守ります」
ひとみは終始、涙を流しながら話した。博之の目にも涙が込み上げてきていたが、こぼすのを我慢した。
ひとみは、我が子の父親が、中学生だったということを、ひたすら隠して人生を送ってきた。これからもそのことは、秘密にして欲しいと頼んだ。博之は、それがひとみの遺志であると理解した。
博之は両手で、ひとみの手を強く握り直して、
「あなたのことが本当に好きでした。突然いなくなって、あれからよく分からない気持ちが込み上げて来て、苦しかったです」
「ごめん・なさ・・ぃ・・・」
「でも、あなたのほうが、もっと大変だったでしょう。それと同じ思いを、愛音さんにはさせたくないと思います。もう、ぜったい」
作品名:あなたが残した愛の音。 作家名:亨利(ヘンリー)