ひこうき雲
そんな思いに慣れてきた俺の心の中からは、いつの間にか迷いの気持ちが消え去り、冨川の言葉を思い返す必要もなくなっていた。
あの面接官の「頑張って」という言葉の意味に再び行き着いた俺は、タイミング良く回ってきた車内販売の女性から缶のウィスキーの水割りを買った。
まだ陽が高いうちに、、、という気兼ねは、缶の水滴をタオルで包みこむように丁寧に拭う30絡みの販売員のしなやかな指先に、なおのこと強まる。
こういうときは男性の販売員の方がいいのにな。。。思う勝手な自分に苦笑したが、そうでもしないと涙が出そうだった。
俺は、どうすればいいんだ。。。あの面接官の最後の笑顔に答えはない。。。
ビールなら気兼ねする必要もないのかもしれないが、今は強い酒が飲みたい気分だった。今は何も考えたくない。
俺は販売員が背中を向けると同時に缶を開け、半分近くまで一気に飲んだ。