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ひこうき雲

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「あ、はいっすみません。でもガキって。。。私、23です。あ、すみません。ノート、買っときます。でもシステム手帳がいいかな。私、手帳結構好きなんです。アドバイスありがとうございます。主任のは、Fプランナーですよね?」
 俺は、一瞬言葉に詰まる。Fプランナーは俺の愛用だ。よく知ってるな。っていうか、まったくペースを乱してくれるぜ、このガキは。。。
「よく分かるな、ハムちゃんも手帳好きなのか。じゃ、俺の言ったこと分かるな。営業の先輩に何を言われてるかが知らんが、手帳は好きなのを使わせればいい。と俺は思う。そろそろ昼飯だ。戻るぞ。分からないとこがあれば明日な。よく復習しておけよ。」
 あ~あ、結局手帳の話にすり替えられて終わっちまった。相手を不快にせずに自分のフィールドに話を持ち込めるのは確かに営業向きかもしれん。心の中で苦笑しながらシステム手帳にしては厚めの黒いFプランナーを小脇に抱えた。
 立ち上がって丁寧に腰を折って礼を言った公子は、忙しない手つきで資料をトートバックに入れた。
 
 午後は、試作レビュー会議だ。朝のうちにチェックした資料を鳥井が出席者の数だけコピーをしてくれている筈だ。こんなことまで開発者がやるんだから、残業も減るはずがないな。他社はどうなんだろうか。。。
 俺が出ないと部屋から出るのは申し訳ない。といった新人独特の雰囲気を滲ませながらドアに立つ公子に、先に出ろ、と手で促す。
 コピーぐらいはコイツに頼むか。。。
 女性には自然と遠慮してしまう自分の不器用さに、いつものことながら嫌気がさした。

作品名:ひこうき雲 作家名:篠塚飛樹