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尖閣~防人の末裔たち

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 古川も頷きながら、聞き慣れた河田節を反芻(はんすう)していた。 何か上手く使えないか。。。一方的に語りかけるだけじゃ反響が起きるまでに時間が掛かる。そんな余裕はない。まごまごしていると、本当に魚釣島は中国に侵略されてしまう。かといって、あの動画だけで国が動くとは思えない。
「いや、まだ、あの動画を完全に使いこなしてはないですよ。上手く言えないんですけど、あのインパクトの反響をすぐに政府や中国にブツケなきゃ。日本国民は本気です。って、政府も重い腰を上げやすくなると思います。」
 古川が呟いた。
「確かにこのままじゃ、マジで中国にヤラれちまう。しかし反響ったって、この平和ボケした国のことだ、どれぐらいの人間が賛同するやら。。。」
 権田の髭ジョリが一層激しさを増す。
 呆れたようにその指先を見ていた古川の顔が光を指したように輝いた。
「そうですよ。それだっ!票を取ればいいんですよ。」
 古川が鳴らした指の音がキャビンに響いた。
「そっか、テレビにだって、地デジだから、青、赤、緑、黄色のボタンでアンケートやクイズやってるもんな。それでアンケートを取ればいいんだ。おい、お前、冴えてんな~。
電話貸してくれ」
 デカしたぞっ、権田が古川の肩を昔のように小突いた。
 懐かしい横顔が岡村に電話をしているのを見つめながら、古川はふと思った。
-もし、河田さんの訴えと票が逆だったら。。。いや、考えまい。それが民意というものだろう。。。それに河田さんならば、逆だった場合も考慮済みだろう。その場合一体何が起こるのだろうか。。。河田さんの次の一手は何なんだ。。。-
 呆然と考えを巡らせていた古川の目に、親指を立てて見せた権田の得意げな表情が飛び込んできた。
 後は、民意、か。。。心配してもしょうがない。
 古川も笑顔を作って親指を立てて見せた。自分でも笑顔がひきつっているのが分かった。

作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹