尖閣~防人の末裔たち
ゆっくりとタイトルが画面から遠ざかっていくと入れ替わりに沖合に浮かぶ3隻の巡視船が現れ、それらを遠ざけるようにカメラがズームを引くと、ゆっくりと向きを変えて岩肌で無機質な奈良原岳の山頂から、麓を映していき、白地に濃淡のそれぞれの青系のラインが引かれたヘリコプターを中心に捉えると、今度はそのヘリコプターをズームした。機体に書かれた「海上保安庁」という文字が画面の中央に来ると、カメラの動きを一旦止め、さらにズームしながら、黒くくすんで、穴やめくり上がったパネルが目立つエンジンカバーを映した。
-我々は、この島から「日本人」を排除しようとするいかなる行動も認めません-
銃撃されて損傷したヘリコプターの白いエンジンカバーをバックに黒い文字が決意を表すように現れた。
そして、画面が切り替わり、M16A1自動小銃を発砲している数人の兵士を斜め後ろから撮影した静止画になる。その先にはキャビン上部のエンジンカバーから火花と煙を上げる海上保安庁のヘリコプター「うみばと」が映っていた。さらに両手を後ろに縛られて列になって歩く海保のパイロットスーツを来た男達と、背中に「海上保安庁」と大きく書かれたジャケットの男達が映る。その周辺には、顔を迷彩に塗りたくった迷彩服姿の兵士達が映る。そして彼らのうちの1人がズームアップされ、肩に下げた自動小銃を映す。そこで急に画面が真っ暗になり、
ー我々は、武装しています-
画面いっぱいに、白い文字が堂々とアップで映り、そこで動画は終了した。
「よし。いい出来だ。音を入れないというのは、正解だったな。文字の説得力が生きてくる。」
河田が笑みを浮かべながら、水野の肩を叩いた。
「ありがとうございます。この後のシーンとして長官の宣言を入れさせていただきます。撮影の準備は出来ております。」
水野は、立ち上がると河田に向かって敬礼をしながら答えた。
河田は頷きながらをれを届けると答礼をして力強く口を開いた。
「よし、では行こうか。よろしく頼むぞ。」
「はっ、こちらです。」
水野に続いて、河田は歩き出した。単管パイプで組まれた骨組みの間に設けられた入り口の布を水野が開くと、強烈な南洋の日差しが目に痛いくらいに届いた。
目覚めよ!日本!
この強烈な南洋の陽光を受けて目覚めよ!
この島をどう扱うかで、今後の日本国の立ち位置が決まるのだ。。。独立国家としての有りようが。。。
河田は、司令部の外に出ると背筋を伸ばして空を仰いだ。握った拳に力が入り汗ばむ手を開くと、海風が心地よく汗を扇いでくれているようだった。
作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹