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尖閣~防人の末裔たち

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 堪忍袋の緒が切れて、多分派手にブチ上げた。と言いたいのだろう。家族ぐるみで長年付き合ってきただけあって、久々に会話をしても阿吽(あうん)の呼吸で心地よい。
「そうなんだ。このままじゃ、日本は駄目になる。すこしスパイスを効かせてやらないとね。」
 河田は、スパイスだけは、やたらと発音を良くした。
「ああ、アっドミラルがいつも言ってた。「ワサビ」が必要ってやつだね。それは分かるよ。今の日本は、いい武器といい兵隊さんがいても、動かすことができないからね。私も一緒に行動する友達はちゃんとしていて欲しいからね。
 でもね「ワサビ」を効かせすぎると、四川料理の国とキムチの国が。だから別の辛さが来るよ。我々は、それは嫌なんだな。
 うちの情報では四川料理の国は、東シナ海にいる艦隊を命令を出した。と言っている。あのエアクラフトキャリアー(空母)のいる艦隊だ。ま、彼らのエアクラフトキャリアーは使い物にならないけどね。」
 相変わらず、言葉遣いによらず、的を得たことを言う。。。流石は百戦錬磨の海兵隊を率いる男だ。
「でも、こないだは、あの空母の戦闘機にウチのP-3Cがやられそうになったよ。」
マークの日本語に釣られて河田の口調も砕けてくる。
「あ~。あれね。我が国もビックリしたよ。知ってるかいあの時、ウチはデフコンを上げたんだよ。でも、結局、1機は船から飛び出してランディングに失敗。もう1機は燃料が無くなって海に落ちた。」
 流石はアメリカ、全てお見通しだな。デフコン。。。ディフェンス・コンディションか、懐かしい言葉だ。
 デフコンは、自衛隊でも使っている制度で、危険に対する対応を取り決めたランク付けである。5段階に分けられている。ちなみにデフコン5が平時、デフコン1が戦時だ。
「そうか、彼らはまだまだだね。空母を運用するにはノウハウが必要だ。ウチの御先祖もかなり苦労してモノにした。しかも元々はロシアの空母だ。ロシアそのものが空母に対するノウハウがない。」
「そうだね。インペリアル ジャパニーズ ネイビー(大日本帝国海軍)のタスクフォース(機動部隊)は最強だった。アメリカは、物と生産の力があったから勝てた。残念だけどお金と資源のある国が最後には勝つのさ。」
 そう、機動部隊は、アメリカのお家芸のように思われがちだが、空母を中心として、大砲も及ばぬ足の長い航空機を武器にした艦隊である機動部隊は、太平洋戦争の前に日本が編み出し、実践してきた。しかし、太平洋戦争中盤以降、それを真似し、大量に空母と航空機を生産することができたたアメリカに逆に日本は袋叩きにされたのだった。
「まあね。今はその誇りと伝統だけは残っているよ。」
「伝統も誇りも大事さ。それがあれば何度でもやり直せる。
ところでアっドミラル、今回は私にどのカードを使ってほしいのか?私が君を助ける番だからね。」
 苦笑する河田に、マークが声のトーンを落とした。

作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹