尖閣~防人の末裔たち
男は後ろ手で傍らの椅子を前に出した。
「悟さん、言うとおりにしてっ!」
悦子の金切り声が響く。
その時だった。
「彼女の言うとおりだよ。指示に従い賜え。」
背後にある扉が開く気配に古川が振り返ると同時に、強張った表情の男と目が合う。その表情が前に会った時とは全く状況が違っていることを露わにしていた。
声の主は、その男のさらに後ろにいた。
「なぜあなたがここに。。。?」
古川は驚きのあまり酔っぱらいを演じるのを忘れ、真顔で男に問いかけた。
「お芝居はそこまでだ。古川さん」
男が答えるよりも先に、その後ろから田原が得意げな笑みを見せた。
作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹