尖閣~防人の末裔たち
新型潜水艦の発生音を変えるためにスクリューを変える工事をする、工事自体はは大したことではないが、各種試験がやり直しになる。それで1年就航を伸ばした。
田原は多くを語らなかったが、「全てお前らのせいだ」と言われているように権田には聞こえた。
結局、例の取材は、潜水艦の工事を理由に上司に中止を申し入れた。そして全く姿を見せなくなった鈴木浩一については、契約を取り消した。とだけ報告した。
「あれ以来、俺は報道の自由を失った。。。あんなことにさえ巻き込まれなければ。。。」
権田は、半分以上氷が溶けたグラスにウィスキーを注ぎ足すと、一気に呷った。下に痺れるような刺激と余韻を残したまま、喉から胃まで熱いモノが移動していく。権田はグラスをテーブルに叩きつけるように置くと、
「今に見ていろ。。。お前の犬に成り下がるために記者になったんじゃない。俺の原点は、上野村の新聞記者だ。」
上野村の熱い夏、あの新聞記者の笑顔がパッと記憶の幕いっぱいに広がる。あの新聞記者。。。名前はなんて言ったっけ。。。
少年の日の思い出が頭の中を駆け巡る。権田は何となく心が和んでくるのを感じた。。。心地よい雰囲気につつまれているような。。。
権田はいつの間にか寝息を立てていた。その寝顔には先ほどまでの苦悩はなかった。
作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹