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尖閣~防人の末裔たち

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 藤田と広田が頷いて返事をするのを見届けると、田原は、目の前の机の引き出しを片っ端から開けて、中身を確認し始めた。大小様々なメモリーカードの入った引き出し、領収書などの書類が入った引き出しなど、几帳面に整理された引き出しが、調べやすいと感じる反面、古川への申し訳なさが込み上げてきた。
 仕方がないことなんだ。
 田原は自分に言い聞かせると先を急いだ。
 いちばん幅の広い引き出しを開けた時、ふと重ねられた葉書が田原の目に留った。田原はその束を取り出すと、一枚ずつ確認した。年賀状に暑中見舞い、差出人は田中悦子。全て同じ女性からだった。4年分の葉書の裏面には、それぞれ女性らしい可愛らしくも奥ゆかしい図柄と共に住所と電話番号が印刷されていた。住所は栃木県小山市、電話番号も印刷されているのは最近珍しいな、と田原は思ったが、何より田原の興味を引いたのは、空白に几帳面に書かれた文章だった。田原が見る限り、古川への思いやりに溢れている。もしかして恋人か?いや。。。小山市。。。そうか、元妻だ。。。
 田原は、河田から新聞社を辞めた古川が、小山にある妻の実家の印刷会社を継いだという話を聞いたことがあった。。未だに付き合いはあるということか。使えるかも知れない。。。
「すまん。」
 田原は思わず呟いた。一瞬藤田と広田の視線を感じた。
 文面を読んでしまったことへの詫びなのか、それとも。。。俺は何をしようとしているんだ。。。自分でも分からない詫びの気持ちが沸々と心を泡だてているようだった。
 田原は、携帯を取り出すと、葉書の住所と電話番号を撮影した。
 
 書類の間や、布団の隙間、絨毯の下に。。。徹底的に探した。明らかに違うタイトルが付いているDVDの中身まで確認した。。。ありとあらゆる手段を尽くしたが、3時間経ってもあの写真の入ったDVDは見つからなかった。。。
 田原は、ある覚悟を決めて河田に電話をした。
 明日、朝一番の飛行機で石垣に帰り、善後策を決めることになった。河田の声には、一昨日の晩、写真に気付いた時の荒々しさは無く、覚悟のようなものを湛えた静かで力強い声だった。


作品名:尖閣~防人の末裔たち 作家名:篠塚飛樹