赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 1話~5話
赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (5)
春奴姐さん
「ただいま、戻りましたぁ!」
清子がカラリと格子戸を開ける。下駄を脱ぐ。
奥に向かって声をかける。その隙に、たまが懐からピョンと飛び降りる。
たまが、スタスタと廊下を歩きはじめる。
しかし。途中で立ち止まる。
ヒョイと振り返ったたまが、『ご苦労だった』と清子の顔を見上げる。
『いいえ。毎度のことですから。どういたしまして』と清子が目で笑う。
フンと首を振ったたまが、『俺の本当の飼い主は、どこだ?』と、
いきなり廊下を駆け出していく。
「懐くのか、懐かないのか、気まぐれすぎてはっきりしない子ですねぇ。
悪戯盛りのたまは・・・
あっ、いけません。たまは泥足のままです!」
雑巾をつかんだ清子が、あわててたま追いかける。
清子の足音を聞きつけたたまが、立ち止まる。
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 1話~5話 作家名:落合順平