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心霊探偵☆藤村沙織の事件簿

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 事務所へ戻ったのは夕方近くだった。デスクへ着くなり、先に調査を終えたらしい沢田くんが肩を落としながらやってきた。
「所長ダメです。医療ミスで死亡した患者が大勢いるのかと思って調べてみたんですが、亡くなったのは病院が設立されてからわずかに二人だけでした。どちらも老衰で、べつにあやしいところはありません」
「……そう。あてがはずれたわね」
「あの病院、評判は良いらしいですよ。医療ミスどころか、他所でさじを投げられたような重篤な患者さんを積極的にひきうけて、それをみごとに治療してるんです。とても幽霊の恨みを買うようなところとは思えません」
 ため息をついて、沢田くんが入れてくれたコーヒーをすする。ちょっと調べればボロが出るかと思っていたが、どうやら考えが甘かったようだ。
「あの……さしでがましいようですが」
 すみっこのデスクで電卓をたたいていた権田さんが、遠慮がちに声をかけてきた。うちの事務所で経理のアルバイトをしてもらっている老人だ。
「そういう場合は、亡くなった数よりも、生還したひとの数を調べたほうがよろしいかと存じますが」
「え、どういうこと?」
「プロスペクト理論の応用ですが、まあ難しい話はやめておきましょう」
 そうだった。この老人、今でこそうちのような貧乏会社で嘱託をやっているが、かつては財閥系のシンクタンクで分析員をしていた経済学のスペシャリストなのだ。それにしても幽霊と、命拾いした患者とのあいだになんの関係が……まてよ。
 わたしの胸を、ある暗い予感がよぎった。
「ああ、それと所長」
 悪い予感に追い打ちをかけるように、彼は言う。
「今月もどうやら赤字ですな」