心霊探偵☆藤村沙織の事件簿
病院は新興住宅地の一角を切り開いて、堂々とそびえていた。
メディカルセンター三浦。
県道に面した正面玄関はひとの出入りもありにぎやかだが、少年の家がある裏通りのほうは車の行き来も少なく閑散としている。
裏口というからてっきり職員用の通用口かと思っていたが、どうやら物品を運び入れるための搬入口のようだ。今は産廃業者のトラックがきて、医療廃棄物の梱包された箱を荷台へ積み込んでいる。おそらく夜になればシャッターが下りてしまうのだろう。
駐車場もふくめると、病院の敷地はかなりのものだった。念のためここへ来るまえに役所へ寄って登記簿を調べた。病院が建つまではずっと農地だったようで、土地にまつわる血なまぐさい過去を示唆するものはなにもない。
ワゴンRのエンジンをとめて一時間ほどながめていたが、なんということもない、ふつうの病院だ。もちろん幽霊がいたって、霊感のないわたしには見ることができないけれど……。
「今日は収穫なしか」
ちょうどお腹も減ってきたし、とりあえず何枚か写真を撮って帰ることにした。
作品名:心霊探偵☆藤村沙織の事件簿 作家名:Joe le 卓司