戒厳令都市デタトンの恐怖
「こちとら、何でも、お見通しなんだよ。判ってんのかよコラ」
スカイは携帯電話に言った。
「何の用だ。まず、テメェの名前を名乗りやがれ」
女は携帯電話の向こうで言った。。
「アタイかい、アタイは、ボンドネード・ファミリーのモルガ・ボンドネードだ。聞いてんのか、この野郎」
スカイは気がついた。
スカイは携帯電話に言った。
「ボンドネード、あのウダルで、冒険屋をやっているボンドネードか」
スカイ達は、そのボンドネード・ファミリー達と競争する競合ルールの仕事を終えたばかりだった。
モルガ・ボンドネードは言った。
「判ってんじゃねぇかよ。おい、テメェ等、ツラ貸せ。デタトンに来いや。正確にはレインボー・リバーの下流のフラワー・ビレッジだ」
マグギャランが、スカイの携帯電話に口を当てて言った。
「当然、駄目だ」
モルガ・ボンドネードは言った。
「何だとコラ、テメェは、騎士のマグギャランだな、コノヤロウ」
およそ、女の喋り方とは、とうてい思えなかった。スカイと、マグギャランが前に二人で仕事に行った男と女がアベコベのジェダンの街の下品で凶暴な女達に相通じるモノがあった。
マグギャランは携帯電話に言った。
「ああ、そうだ。デタトンなどに行く必要など無い。俺達をミュータントにして殺す気か」
モルガ・ボンドネードは言った。
「ぐだぐだ、言ってないで来るんだよ。テメェ等は、お国の為に、働こうって気は無いのかよ」
スカイは携帯電話に言った。
「まず、お前がデタトンに行けよ」
それが、世の中の道理というものだった。
モルガ・ボンドネードは言った。
「あんだと、スカイ・ザ・ワイドハート、テメェこのヤロウ、何、ふざけた事抜かして居るんだよ」
マグギャランはスカイの携帯電話に言った。
「ふざけているのは、お前の方だぞモルガ・ボンドネード。俺達は、ミュータントになるのは、まっぴらゴメンだ。こんな電話、切ってしまえ」
マグギャランはスカイの携帯の通話ボタンを押して切った。
スカイは首を傾げて携帯電話を、しまいながらマグギャランに言った。
「何で、俺達が、今、モーゴ男爵の町マーカーに居ることを知って居るんだ」
どうも腑に落ちなかった。
マグギャランも首を傾げていた。
マグギャランは言った。
「さあな、今日日の科学という魔法の進展は、めざましいからな。俺達の知らない技術が在るのかも、しれない」
スカイ達は、ピラミッド・ハンバーグを食べ終わると次に宿泊する街を目指してトンベロ街道を歩いていた。街道の横は牧草地で木の柵で区切られていた。トンベロ街道は、ある程度の人通りのある街道だった。
スカイは向こうの方から馬が走ってくるのを見た。
スカイは言った。
「なんだ、馬が走って来るぞ」
マグギャランは言った。
「あれは早馬だな。何かの伝令かもしれん」
スカイは言った。
「いや、あれは、俺達と同じ冒険屋じゃねぇのか」
伝令にしては四頭の馬に四人の人間が乗っていて数が多すぎた。
マグギャランは言った。
「たしかに伝令の格好には見えないな」
スカイ達の目の前で、四頭の馬が止まった。
若い男が三人と、一人の若い女が居た。
金髪をオールバックにした、革の上下を着て鎖を身体に巻き付けている男が言った。
金髪の男は言った。
「W&M事務所のスカイ・ザ・ワイドハート、マグギャラン、コロナ・プロミネンスだな!オレ達は「鋼の鎖」だ!」
よく見ると、他の茶色い短髪の男や、黒い髪を真ん中で分けた男も鎖を身体に巻き付けるように束ねていた。
そして、黒と灰色のゴスのような格好をした。長い黒髪の巻き毛の女が人形を首からぶら下げて持って居た。
スカイは、ピンと来て思わず、叫んだ。
「まさか、モルガの差し金か!」
マグギャランは叫んだ。
「不味いぞスカイ!コロン!ポロロン!逃げるぞ!」
スカイは言った。
「判った!」
スカイは返事をして、ボケーッとしているコロンの腕を引っ張った。コロンはハッとしてビクッとして前を向いたまま後に向かって走り出した。
ポロロンはスカイ達に言った。
「何故、逃げる必要が在るのです。わたくし達には、やましい所など一切在りません」
ポロロンは街道沿いの囲いを乗り越えようとしているスカイとマグギャランとコロンを見ていた。
スカイはポロロンに叫んだ。
「やましい所が無くても悪いことは起きるんだよ!」
ポロロンは言った。
「わたくしが説得をします」
そして道の真ん中へ歩いていった。
スカイは言った。
「取りあえず草地に逃げるぞ!」
スカイはマグギャランとコロンと一緒に走って逃げ出した。
ポロロンは良く通る大声で言った。。
「皆さん!如何なる理由があって、この者達を呼び捨てにするのです!」
ポロロンは駆けよって来る騎馬の前に出た。
短髪の男は言った。
「何だ、あの娘は?」
金髪の男が言った。
「さあ、判らないな。履歴書の顔写真のコロナ・プロミネンスは、あっちの眼鏡女だ」
中分けの男がポロロンを見て言った。
「ああ、だが美人だ」
スカイとマグギャランはコロンの腕を引っ張って囲いの上に引き上げようとした。だが、コロンは両腕に杖と呪文書を持っていて足が滑って、柵の上に、なかなか上がれなかった。
短髪の男は言った
「逃がすか!」
鋼の鎖の、三人の男達が、束ねて身体に担いで巻き付けていた、鎖を解いて、ブンブンと唸るような音を立てて振り回しはじめた。
スカイは見ながら言った。
「野郎達、奇妙な武器を使いやがる」
マグギャランは言った。
「分銅鎖に気を付けろよスカイ、あれだけ遠心力が付いていると当たると大事だぞ」
短髪は分銅鎖を投げた。
マグギャランの方へ飛んでいった。
マグギャランは言った。
「何とするか!」
マグギャランは飛んできた分銅鎖の分銅を手刀で叩き落とした。
スカイがマグギャランを見ていると、右足に飛んできた鎖が絡まった。そして引きずられた。
スカイは言った。
「うおおっ」
スカイは、思いっきり顔から地面に、ぶつかって転けた。柵の上から引っ張られて落ちて空中で一回転したが勢いが付いていて顔から地面に落ちたのだ。
ポロロンが地面に激突したスカイを見て言った。
「ああっ!スカイ!大丈夫ですか!」
スカイは、鼻面を押さえて鎖が絡まった。右足を見た。
スカイは言った。
「テメェ!何しやがる!」
スカイの右足が急に引っ張られた。
スカイは言った。
「うおっ!」
馬に乗っている黒い髪を真ん中で分けた男は、無言のままスカイを馬で引きずった。
スカイは言った。
「うおりゃ!このヤロウ!イテェだろ!」
スカイは引きずられながら、左足で立ち上がって、ケンケンを開始した。
ポロロンが叫んだ。
「スカイを離しなさい!」
マグギャランは言った。
「ええい、スカイが捕まった!今、救出に行くぞ!俺のユニコーン流の力を見せてやる!とおっ!」
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道