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戒厳令都市デタトンの恐怖

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「一日ぐらい、時間差が出るが、迂回ルートを通るぞ。マーカーの町経由で、ツルッペリン街道を目指してニーコ街行きのツルッペリン街道へ出る。ツルッペリン街道に出れば、後は最近走り出したフラクター製のバスに乗ってニーコ街までいける。このバスに乗れば。運賃は高いが、旅行の日数が減って宿泊費が大幅に削減されるわけだ。結果的には得になる」
マグギャランはフラクター製の家電の通販カタログを見ながら言った。
 「うむ、時は金なりというからなスカイ。なかなか良いアイデアだ」

レニー達はマーカーの街へ入るために検問所に居た。
 ピココは鼻歌を歌っていた。
「ランラ、ラン、ララララ、ララララン」
御領主様の、お嬢様は鼻歌を歌いながら、マーカーの町へ入るために並んでいた。何故だが知らないが、癖なのか、何時も、立って止まっていると、踵を上げて背伸びをしていた。それにしても鼻歌なんか歌っている、ような状況では無いのだ。
 赤と黒の短い丈のマントを羽織ったミドルン王国の役人の男性がやって来た。茶色い、もみ上げを長く伸ばしたような髭を生やしていた。小柄で少し腹が出ている四十台後半ぐらいの赤ら顔の男性だった。
 役人の男性は言った。
 「冒険屋の方ですね。デタトン問題の解決に向かってくれませんか」
ピココは言った。
 「うん、ボク達は、これから、デタトン問題対策委員会が設置されているフラワー・ビレッジへ向かうんだ」
おおっと感嘆の声が回りから上がった。そして拍手が起きた。
御領主様の、お嬢様は満更でも無さそうな顔をして手を挙げて応えていた。
留衣はニコニコして何時も通りで、意外にシャイなサイは顔を赤くしていた。
 レニーの気分は沈んでいた。もうすぐ、デタトン市があるブードー子爵領まで、あと少しだった。こんな、やり取りは、このモーグ男爵領の町、マーカー町まで来るまでの間に何回も在った。ただ拍手を貰うためだけに、デタトンに向かっているとすれば、それは、とんでもなく間抜けな事だった。こんな見栄を張って、デタトンへとドンドンと近づいている現況がレニーには信じられなかった。だが現実にはレニーは、どんどんとデタトンへと向かっていた。
 これから、どうなるの。
 レニーは悲嘆に暮れた。
モーグ男爵領のマーカー町の正門の門番の前の検問所にスカイ達は並んで居た。赤と黒の丈の短いマントを着た中年の髭男がスカイ達に話しかけてきた。この黒と赤の短いマントはミドルン王国の役人が着る制服のような物だった。
役人の男は言った。
「冒険屋の方たちですね、ミドルン王国の政府の公報です。デタトン問題の解決に協力してくれる冒険屋達を急募しています」
 スカイは手を振って追い払った。
スカイは言った。
 「あー、駄目駄目。俺達は、デタトンには興味無いから」
 マグギャランも手を振って追い払った。
「そうだ、もっと、美女が出てくる場所でなければ話にならん。これから、俺達は、食事を取らなければならんのだよ。ランチだよランチ。判るかね君。おい。あっち行った行った」
役人は言った。
「あなたより若い少女達もデタトンに行っているのですよ国益の為にです」
 マグギャランは面倒くさそうに言った。
「最近のギャル達に、ありがちな珍しい物、見たさの観光ツアーだよ。我々には関係ないのだ」
 そしてスカイ達は街の受付に向かっていった。
スカイ達は身分証を提示した。
ポロロンの前で門番が止まった。
門番は言った。
 「身分証は」
ポロロンは口をつぐんだ。
マグギャランは門番に言った。
「この娘は、イシサ聖王国から、政治的な理由から亡命をした娘なのだ。ゆえ在って我々が身柄を預かって保護している。まあ、君、これを見たまえ、私はコモン共通国家試験に合格した騎士だ。この私が、この娘の身元を保証するから、町へ入れてくれ」
 マグギャランは、首にぶら下げている。
プラチナ製の騎士証を見せた。
 さっきの役人が、やって来て言った。
 「プラチナ・プレートを持っている騎士ならば、何故、デタトン問題の解決に向かわないのですか」
 マグギャランは騎士証を、しまいながら言った。
 「騎士道的には美女の相手をするのは良くても、ミュータントの相手は、する必要は無いのだよ君。判ったかね」
この騎士証は非常に役立つ物で、スカイ達は、これで、何度も助けられていた。

スカイ達はマーカーの町の料理屋で昼飯を食べていた。このマーカーの町では、ピラミッド・ハンバーグという名物が在った。スカイ達は、ロード・イジア要塞への行き道はデタトンを、それほど迂回せずに行ったからマーカーの町は通らなかった。 
そしてスカイとマグギャラン、ポロロンはピラミッド・ハンバーグMサイズ定食というランチセットを「元祖ピラミッド・ハンバーグ亭」で注文して食べていた。スカイとマグギャランはプロテイン・ドリンクも注文していた。コロンはSサイズだった。
 確かにピラミッド型の形をしたハンバーグが鉄板に載っかって音を立てて出てきた。
マグギャランは食べながら今後に、ついて話をしていた。
マグギャランは言った。
「コロンがダンジョン競技で儲けた金で、気前よく、借金込みで家を買ったせいで、俺達も、コロンの家に部屋代払って、間借りしているからな。中古物件とはいえ、かなり広い屋敷で、お前が住む場所ぐらいは在るぞポロロン。そろそろ二階の部屋のリフォームも終わっているだろう」
 ポロロンはピラミッド・ハンバーグを食べながら言った。
 「今となっては、アッパカパー要塞で何不自由しない、ぬるま湯の中の温室育ちであった事が、この数日間の内に良く判りました。わたくしも、これからは逞しく、強く生きていきます」
 スカイの赤と黒の虎縞模様の携帯電話が着信音「オイレンの歌」を流し始めた。スカイは携帯電話を取りだした。スカイは通話ボタンを押して、耳に当てた。
スカイは携帯電話に言った。
 「はい、スカイ・ザ・ワイドハート」
初めて聞く女の声が携帯電話の向こうからした。
 「おい、W&M事務所のコーラーのスカイ・ザ・ワイドハートだな」
 ギャングのような声使いの女の声が入ってきた。どう聞いても筋者くささが抜けない酷い、しゃべりかただった。コーラーというのは、冒険屋業界の昔の連中が使う言い回しで、リーダーの事をコーラーと呼ぶのだ。
 スカイは携帯電話に言った。
 「ああ、そうだよ。それが、どうしたんだよ」
 スカイは、誰かに恨みを買っているかと、思って、記憶を手繰ってみたが、思い返せば、恨みを買うような仕事を結構してきている事に気が付いて深く考える事を止めた。
女は携帯電話の向こうで言った。
 「おい、スカイ・ザ・ワイドハート、テメエ等は、ブード子爵領の隣りのモーゴ男爵領の町マーカーに居るな。このヤロウ」
スカイは携帯電話に言った。
 「はあ?何で、そんなことまで、判るんだよ」
 スカイは、マグギャランとコロンと、ポロロンを手で招いて呼んだ。そして携帯のボリュームを上げた。
 女は携帯電話の向こうで押し殺した声で言った。