戒厳令都市デタトンの恐怖
コロンは言った。
「……どこかに「魔邪刻石」が在るはずなの!」
スカイは言った。
「大毒キノコ頭のフンカールと同じか!」
コロンは言った。
「……そう!」
マグギャランは言った。
「なんだ!その「魔邪刻石」とは!」
スカイは言った。
「魔族の弱点の宝石だ!」
マグギャランは言った。
「そんなモノは見当たらないぞ!」
ピココは言った。
「捜すんだ!必ず!マンドン・ジャボルの身体に、弱点の宝石が在るはずだ!」
マンドン・ジャボルは言った。
「魔界の疾風!」
マンドン・ジャボルの全身から八方向に疾風が走った。
スカイは避けた。
コロンは炎の波を出して相殺した。
マグギャランも避けた。
ピココも避けた。
レニーは吹き飛ばされた。
レニーは叫び声を上げていた。
「いやあああああああああ!」
マンドン・ジャボルの疾風に吹き飛ばされたレニーは部屋の端まで吹き飛んでいった。
マグギャランは言った。
「見たかスカイ!」
スカイは言った。
「何も見てねえよ!」
マグギャランは言った。
「ヤツが、「魔界の疾風」を放つ瞬間、額に赤い宝石が現れた!」
スカイは言った。
「それが、「魔邪刻石」か!」
コロンは言った。
「……スカイ!接近して、パラボラ・ジャンプで跳ぶの!」
マグギャランは言った。
「次の攻撃がタイミングだ、肉を斬らせて骨を断つのだ!」
ピココは言った。
「ボクが、囮になる!グリフォン流は堅守を誇る流派だ!」
ピココは前に飛び出していった。
マグギャランは言った。
「オレも囮だ!スカイ!コロン!次で決めろ!」
マグギャランも前に飛び出していった。
マンドン・ジャボルの武器の先端に雷光が集まり始めた。
マンドン・ジャボルは言った。
「魔界の雷光撃!」
部屋全体に雷光の目茶苦茶に走り始めた。
やがて雷光は巨大な極太の雷光に収束しようとしていた。
スカイは言った。
「今だ!コロン姉ちゃん」
スカイとコロンは一気に走って、マンドン・ジャボルの前へと飛び出していった。
コロンは走りながら杖でスカイの背中を叩いた。
スカイの足の裏から、炎が吹き出し、スカイは飛び上がった。
マンドン・ジャボルの額には深紅の宝石「魔邪刻石」が見えていた。
スカイは剣を振りかぶった。そして「魔邪刻石」に突き刺した。
マンドン・ジャボルの額の「魔邪刻石」は砕けた。
紫色の煙が、マンドン・ジャボルの額から立ち上がった。
マンドン・ジャボルは叫びだした。
「うぎゃああああああああああああ!」
マンドン・ジャボルは全身を振り回し暴れ始めた。
スカイは空中で一回転して、膝のバネで着地した。
スカイは言った。
「手間、掛けさせやがって」
スカイは後ろを振り返った。
スカイは言った。
「みんな無事か」
マグギャランは言った。
「ああ、大丈夫だ」
コロンは言った。
「……うん」
ピココは部屋の端で意識を失って、ぐったりしているレニーを引っ張ってきた。
マンドン・ジャボルの身体は縮み、頭の禿げた、眼鏡と顎髭の白衣の男が居た。
マグギャランは剣を突きつけた。
マグギャランは言った。
「オマエがケイミー・ボーリズだな」
ピココは、よだれを垂らして白目を剥いているレニーの頬を叩いた。
ピココは言った。
「起きろレニー」
レニーの眼に焦点が合い始めた。
コロンは言った。
「……スカイ忘れちゃダメ。「魔界の尖塔」を破壊するんだよ」
スカイは言った。
「判ったよ、コロン姉ちゃん」
スカイの剣に、コロンの炎の魔法が宿った。
炎を吹き上げる剣をスカイは「魔界の尖塔」目がけて、振り下ろした。
一回目で、ひびが入った。
二回目で、大きく砕けた。
三回目で全体が細かく砕け散った。
後には、小さなネズミの死骸が、残っていた。
ポロロンは、Dr.パンプアップ・ハイを追いかけて行った。
ボロロンは言った。
「待ちなさい!Dr.パンプアップ・ハイ!あなたは正義に仇為す巨悪の首魁!」
Dr.パンプアップ・ハイは立ち止まった。
Dr.パンプアップ・ハイは白衣のポケットから、葉巻を取り出すと。40?ぐらい火が出るオイル・ライターで火を付けた。そして口からドクロ型の煙を吐きだした。
Dr.パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「君は正義が好きなのかい?」
ポロロンは言った。
「正義が無ければ世の中には悪が、はびこります」
Dr、パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「正義なんて、自分が、やっている悪いことを美化するための、この世で一番,薄汚いズルイ、ウソなんだよ」
ポロロンは言った。
「どういう事ですか。正義がウソの筈は在る訳在りません。自分の心の良心に基づいて、正しいと思うことを行うのです。それは、つまり、正義とは自分の良心にウソを付かない事の筈です」
Dr.パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「ふーん。なかなか上手いこと言うね。でもさ、それじゃあ、ちょっと意地悪して聞くけれどさ。正義の為に戦争を起こして人殺しをする事は、正しい事だと言えるのかな。正義という名前でウソを語っているんじゃ無いかな?」
ポロロンは言った。
「正義の戦争はあるはずです。それは、絶対悪を滅ぼすための戦争です」
Dr、パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「ふーん、面白い事を言うね。その絶対悪とは何かな」
ポロロンは詰まった。
「それは、たぶん…」
Dr.パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「で、さあ。もし、その絶対悪の悪いヤツに従っている、下っ端の人間が、たまたま、悪いヤツに仕方なく従っているだけだとすれば、どうするのかな?」
ポロロンは言った。
「それは、自分で選んだはずです。」
Dr.パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「もし、自分で選んだのでは無く。頭が悪くて騙されて居るだけだったら、どうするのかな。それは、自分で選んだと言えるのかな」
ポロロンは言った。
「それならば、説得します」
Dr.パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「でもさ。もし説得する前に、殺しちゃったら、どうするのかな。絶対悪に騙されて居る、哀れで頭の悪いバカな下っ端を」
ポロロンは困惑した顔で言った。
「それは…もし、そういう事が起きたら惨い話です」
Dr、パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「でも世の中は、そういう事が、よく起きるんだ」
ポロロンは言った。
「そんなことは起きるべきでは在りません」
Dr.パンプアップ・ハイはニヤニヤ笑いながら言った。
「そうそう、諦めちゃおうよ。世の中、悪くて汚くて良いじゃん。人間なんて、そんな上等な生き物じゃないんだよ。正義なんて字面だけの口先だけの出任せなんだよ。悪くて汚い奴等を使って、滑稽な道化芝居を、やるのが、一番正しい事じゃ無いかな」
ポロロンは言った。
「ダメです。正義は必要です」
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道