戒厳令都市デタトンの恐怖
ピココは言った。
「スカイは冒険屋の経験が長いんだな」
スカイは言った。
「もう七年間も、やっているからな」
スカイ達六人は、デタトン製薬の第一研究所の中を歩いて行った。
地下へと入っていった。
地下の方が、地表部よりも天井が高かった。
そして血管の様なモノはドンドンと太くなっていった。
天井が、ひときわ高い、吹き抜けの様な空間に出た。
天井からは日光が降り注いでいた。
そして黒い石の柱が在った。
コロンの言っていた「魔界の尖塔」に間違いなかった。
そして、「魔界の尖塔」の横には、六本腕に蛇の胴体をした怪物が居た。
スカイは言った。
「どうやら、来るべき所まで来ちまったようだな」
マグギャランは言った。
「最終決戦だが。我々のレベルと、装備で戦えるのかスカイよ?」
ポロロンは言った。
「待ってください!不審な人影が!」
巨大な怪物の横には、筋肉質の白衣の男が居た。
筋肉質の白衣の男はニヤニヤ笑い、巨大な怪物に手を振った。
巨大な怪物は言った。
「待ってくれ!Dr.パンプアップ・ハイ!私を元に戻してくれ!マンドン・ジャボルのままで嫌だ!」
ポロロンは、大毒キノコ頭のフンカールにされていた、研究員ハイデル・マトミンの言葉を思い出した。
謎の男Dr.パンプアップ・ハイ。
この男が悪の根源!
「謎の男、Dr.パンプアップ・ハイ!あなたが悪の根源なのですね!」
ポロロンは部屋の反対側の通路に入っていく、Dr.パンプアップ・ハイの後を追って走った。
スカイとマグギャラン、コロン、ピココとレニーはマンドン・ジャボルと対峙した。
スカイは剣を構えた。
スカイは言った。
「オマエがバケモノの頭だな」
マンドン・ジャボルは言った。
「何者だオマエ達は」
スカイは言った。
「オレ達は冒険屋だ」
マンドン・ジャボルは言った。
「私を殺しに来たのだな」
スカイは言った。
「そうだ。このバケモノめ」
マグギャランとピココも剣を構えていた。
マグギャランは言った。
「ふむ、バケモノだが、人語を解するようだな」
スカイは言った。
「オマエが、デタトン市の古代モンスター騒ぎ、魔族騒ぎを起こしていたんだな」
マンドン・ジャボルは言った。
「私は人間に戻れないんだ。どうにかして、人間に戻してくれ」
スカイ達は虚を突かれた。
スカイは言った。
「オマエ、人間やめているじゃん」
マンドン・ジャボルは言った。
「ほんの出来心だったんだ。誰でもある、好奇心だ。私は、ガミオン大臣から紹介された謎の男Dr.パンプアップ・ハイから、デタトン製薬に製造を依頼された、錬金術の薬の製造責任者に任された。だが、その錬金術の薬の化学式は、今まで見た事の無い物だった。私は興味を持った。そして、マウスを使って実験をしてみた。そうするとハツカネズミの寿命が無くなった。つまり今でも生き続けている。私は本物の不老不死の薬だと気がついた。そして、自分自身に、この正体不明の錬金術の薬を使うことにした。それは、そうだろう。永遠に生きられる寿命が手に入るんだ。誰だって、そんなチャンスを逃すはずはない。だが、おかしい事が起きた。私の身体は、怪物になってしまったんだ。こんな無様な人間とは似ても似つかない、怪物の姿になってしまった」
マグギャランは言った。
「おかしな薬を使うから、そうなるのだ」
コロンは言った。
「……それは「魔王」という錬金術の薬」
マンドン・ジャボルは言った。
「なんだ、その「魔王」という薬は、私は、コモン共通錬金術師免許を持つ一級錬金術師だ。だが、「魔王」などという錬金術の薬は聞いた事無いぞ」
コロンは言った。
「……私も名前を聞いた事が在るだけ。化学式は知らないの」
マンドン・ジャボルは言った。
「化学式なら、在るんだ。パンプアップ・ハイから貰った。それを見てくれ」
マンドン・ジャボルは紙を取り出して、三本在る左腕の真ん中の右腕でコロンに渡した。
コロンは、しばらく紙を見ていた。
コロンは言った。
「……これは、何の変化も起きない。化学式」
「確かに私も、この化学式だけでは、こんな身体になるとは思えない。だが、この化学式を使って作った錬金術の薬を作って飲むと、私の身体は、このマンドン・ジャボルの身体になってしまったんだ」
コロンは眉間に皺を寄せて考え始めていた。
コロンは言った。
「……どうなっているのかな?」
マグギャランは言った。
「コロンよ、なぜにして、そのような超マイナーな、しかも超イケナイ錬金術の薬「魔王」を知っているのだ」
コロンは言った。
「……フレイア先生が教えてくれたの」
マンドン・ジャボルは言った。
「どうして、私は、こんな身体になってしまったんだ」
コロンは言った。
「……それは、この化学式以外の何か別の要素が在ったはずなの」
マンドン・ジャボルは言った。
「それでは、このDr.パンプアップ・ハイから受け取った化学式で作られた不老不死の薬は、なんだったんだ」
コロンは言った。
「……これは、錬金術の薬ではない」
マンドン・ジャボルは言った。
「どういうことだ」
コロンは言った。
「……多分、あなたが、パンプアップ・ハイから貰った紙の化学式は、培養に必要な鉱物の生体鉱化作用を行う為の素材を作り出すための材料の化学式。魔族化するためには、他の錬金術の薬が必要なの」
マンドン・ジャボルは言った。
「別の錬金術の薬が在ったのか。私は二重の螺旋学派「壮健なる神水」学派の魔法使いでもある。そういえば、私がマウスに投与した錬金術の薬と私が飲んだ錬金術の薬は、同じ実験道具を使っていた。それは、Dr.パンプアップから受け取ったサンプルと同じだった」
コロンは言った。
「……でも、なんで、あなたは、「魔界の使者」を名乗っているの」
マンドン・ジャボルは言った。
「それは…」
スカイは言った。
「そういや変だな。オマエ怪しいヤツだよ」
マグギャランは言った。
「確かに怪しい外見だけで無く、別の意味でも怪しいだろうか。なぜ、オマエはデタトン市を支配したのだ」
マンドン・ジャボルは言った。
「それは、私は、古代モンスターを操る力を得たからだ。この怪物の身体には古代モンスター達を生みだし操る力を持っているのだ」
マグギャランは言った。
「それは、オマエの意志なのか」
マンドン・ジャボルは言った。
「他に、どうしようがあるのだ。こんな怪物の身体をしていれば、モンスターとして殺されてしまう。だから、私は、この身体の奥底から聞こえてくる、魔界の意志を実行していたのだ。だから私は「魔界の使者」を名乗った。この「魔界の尖塔」から命令を受けているのだ。お前達を殺せと!」
マンドン・ジャボルの眼が赤く光り出した。
マンドン・ジャボルは、六本の腕を伸ばした。その手には、斧や槍なとの武器が握られていた。そして全身が鎧で覆われた。
スカイは言った。
「コロン姉ちゃん、コイツの弱点が、わかるか!」
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道