戒厳令都市デタトンの恐怖
「なんだよ、先に人が居たのかよ」
レニーは、見るからに低レベルそうなパーティーを見ていた。
金髪三白眼の戦士に、イケメンの騎士、頭の悪そうな学派の女魔法使い、そして、なぜか、白いウエディング・ドレスを着た美少女?
良く判らない組み合わせだったが。
冒険屋の組み合わせは、良く判らない事が多いため、不思議では無かった。
イケメンの騎士は言った。
「この二人の中に、二十歳以上、二十九歳未満の美女は居ないようだな。残念だ」
ウエディング・ドレスの美少女は言った。
「なんですか、その年齢区分は」
イケメンの騎士は言った。
「うむ、それは、詳しくは言えぬが。詳しく言えぬ事なのだよ。二十歳未満には語る事が禁止なのだ」
ウエディング・ドレスの美少女は言った。
「答えになって居ません」
御領主様の、お嬢さまは言った。
「あのう、ボク達は、今、二人しか居ないのですが。助けてください」
スカイはデタトン製薬の第五工場の奥に居た、二人の女を見た。
一人は革の上下を着て剣を持った、剣士と、もう一人は魔法の発動体らしい腕輪を付けた魔法使いだった。
スカイは言った。
「オレはスカイ。戦士だ」
マグギャランは言った。
「うむ、俺は騎士のマグギャラン」
コロンは言った。
「……わちゃいは魔法使い見習いのコロナ・プロミネンス」
ポロロンは言った。
「わたくしはポロロン・アッパカパーです」
剣士の女は言った。
「ボクは、騎士見習いのピココ・グリップ。こっちは、魔法使い見習いのレニー・ハンドリング」
スカイは言った。
「よく、二人だけで、ここまで来たな。オレ達は、徹底的に走って逃げ回って、ようやく、このデタトン製薬の第五工場まで来たんだ」
ピココは言った。
「誰がリーダーなんだ」
スカイは言った。
「オレだ」
ピココは言った。
「スカイ。ボクにリーダーの、なり方を教えてくれ」
スカイは、いきなり変な事を聞かれて、怪訝に思った。
スカイは言った。
「オレがリーダーと言うより。冒険屋のキャリアが一番長いからだな」
ピココは言った。
「なぜ、年長のマグギャランがリーダーじゃ無いんだ」
マグギャランは言った。
「それは、オレは冒険屋のキャリアが浅いからだ」
コロンは言った。
「……あちゃいは、リーダーに向いて、いないから」
ピココは言った。
「スカイ、師匠と呼んで良いか」
スカイは言った。
「いや、オレ師匠とか縦関係、嫌いだから、よしてくれよ」
ピココは言った。
「そうか。でも、ボクは、今、リーダーを続けていく自信が無いんだ」
しみったれた顔をしている、ピココを見てスカイは話しを変えた。
スカイは言った。
「だが、ここが、古代モンスターの発生源で在る事は間違いないな」
マグギャランは言った。
「うむ、次々と古代モンスター達が生み出されて居るでは無いか」
コロンは言った。
「……何が起きているか判らないの」
ポロロンは言った。
「悪です、悪が為されています」
スカイは言った。
「ピココ、この先に何が在るんだ?」
ピココは言った。
「まだ行っていないから判らない」
マグギャランは言った。
「この足に生暖かい感じの生きている床の上を歩くのは気味が悪いモノだなスカイ」
コロンは言った。
「……なんだろうね」
ポロロンは言った。
「きっと、このデタトン製薬の第五工場全体が、古代モンスター化しているのです」
マグギャランは言った。
「いや、こんな古代モンスターをオレはコモ騎士共通試験の勉強で学んだ覚えは無いぞ」
スカイは言った。
「とりあえず、古代モンスターの発生源は突き止めた、アンにウイッキイド・ゴーストの携帯電話で連絡すれば、オレ達はお役御免だ」
更に奥に入ると、十本近く在る煙突らしい筒に次々と古代モンスターが、ベルトコンベアの様なモノで運ばれて中に入っていった。
スカイは言った。
「ここから古代モンスターを打ち上げているんだな」
マグギャランは言った。
「コレが、古代モンスターの生息場所が1日に数百メートル拡大していく秘密か」
ポロロンは言った。
「それでは、アンに連絡をしましょう。わたくしが携帯電話で連絡を入れます」
突然、辺りに奇妙な笑い声が響き始めた。
「げひゃひゃひゃひゃひゃぁぁぁぁぁ!」
そしてスカイ達の前にキノコ頭の全身にキノコが生えた怪人が現れた。
「私は「魔界七勇士」大毒キノコ頭のフンカール(おおどくきのこあたまのふんかーる)」
スカイは言った。
「なんだよ、このキノコ頭は」
マグギャランは言った。
「ふむ、大ドクロ頭のジャギールと同じ魔族では無いかね」
コロンは言った。
「……魔族なら四大元素魔法は戦うの」
大毒キノコ頭のフンカールは言った。
「私が、ミドルン王国の兵士達二千五百人人を一度に古代モンスターに変えたのだ。全ては「魔界の使者」マンドン・ジャボル様の意志なのだ。食らえ!魔界の胞子発射!」
頭からキノコの胞子を噴射した。辺りが、なぜか黄色い胞子で満たされた。
スカイは口の中に胞子が入った。
「なんだよ、このマズイ胞子は。変なモノ発射するんじゃねぇよ」
コロンは言った。
「……スカイ、周りを見て、マグギャラン達に異変が」
マグギャラン、ポロロン、ピココ、レニーの身体が変化を開始していた。
マグギャランは言った。
「何だ。オレの身体が、変わっていくぞ何か、頭に角が生えて、フカフカのムートン肌になって居るような気がする」
ポロロンは言った。
「私の身体も、なぜか爪が尖って、肌が、ゴツゴツの鱗が生えてきて」
ピココの顔は花に変わっていた。
ピココは言った。
「ボクの身体は、植物になったようだ」
レニーの身体は金属の光沢でロボットになって居た。プラスチック風の眼に、四角い頭のロボットだった。
レニーは言った。
「私の身体は機械に、なって居る」
スカイは呆気にとられて、マグギャラン達の変化を見ていた。
スカイは言った。
「おい、なに、オマエ等人間やめているんだよ」
コロンは言った。
「……みんな、どうしたの?」
スカイとコロンの前で、マグギャラン、ポロロン、ピココ、レニーの四人はモンスターと化した。
マグギャランは顔がライオンの獣人間になりつつあった。
マグギャランは言った。
「なぜ、スカイとコロンだけ、人間のままなんだ」
ポロロンは、顔がワニのカイマン人間になっていた。
ポロロンは言った。
「そうです。おかしいです」
ピココは顔が牡丹の花の植物人間になって居た。
ピココは言った。
「スカイ。なにか、人間のままでいるコツがあるのか」
レニーはロボットになって居た。
レニーは言った。
「そんなもの無いと思います」
スカイは自分の身体を見た。そしてコロンも見た。どちらも人間のままだった。
スカイは言った。
「確かに何も起きていないよな」
コロンは眉間に皺を寄せた。
コロンは言った。
「……判らないの」
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道