戒厳令都市デタトンの恐怖
「未だにオレ達には古代モンスター化の兆候が現れていない。デタトン市で何が起きたのかは謎のままだ」
ポロロンは言った。
「スカイ、マグギャラン、コロン、アンと連絡が付きました」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「私達、デタトン問題対策委員会に集まってきた情報ですと、第五工場が怪しいらしいのです。これから、デタトン製薬の第五工場に向かってください」
スカイは携帯電話に言った。
「オレ達は、デタトン市に入って、すぐ南東門の所で、大ドクロ頭のジャギールと言う魔族と戦ったっきり、デタトンの中で逃げ回っているんだよ」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「なぜ、魔族と戦ったと判るのですか」
スカイは携帯電話に言った。
「大ドクロ頭のジャギールというヤツが自分で「魔界七勇士」と名乗っていたんだ」
コロンは携帯電話に言った。
「……間違いないの、魔族なの」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「なるほど伝説の魔族ですか。一体全体、古代モンスターに魔族まで出てくるとはデタトン市の中で何が起きているのでしょうか。ぜひとも、デタトン製薬第五工場を目指して内部を調べてください。殆どのパーティは連絡が付かず、全滅したようです」
スカイは携帯電話に言った。
「なんだよ、オレ達も全滅させるつもりかよ」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「スカイ・ザ・ワイドハート、あなた達のパーティに今まで欠員がでましたか」
スカイは携帯電話に言った。
「まだ出ていないが、危ないだろう」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「大丈夫です。あなた達の様に悪運が強ければ大丈夫です」
スカイは携帯電話に言った。
「なに安請け合いしているんだよ。オマエは安全な所に居るだけだろう」
ポロロンは言った。
「いえ、正義です。正義が必要なのです。わたくし達は正義を行う必要があるのです。わたくし達は正義のために、デタトン製薬の第五工場に行かねばなりません」
マグギャランは言った。
「デタトン製薬の第五工場か。あの、ここから見える煙突から何かを空中に発射しているぞ」
レニーは御領主様の、お嬢様と留衣と一緒にデタトン製薬の第五工場まで辿り着いた。途中で古代モンスターに襲われたが、動きが遅いタイプだったので何とか逃げ延びた。
ピココは言った。
「ここがデタトン製薬の第五工場なんだ。既に普通の状態じゃ無いぞ」
デタトン製薬の第五工場の扉は開いて、何本も立っている巨大な煙突から、何か巨大な物体を空中に発射していた。
ピココは言った。
「レニー、留衣。中に入るぞ」
なんで、この御領主様の、お嬢様は頭が、おかしいの?こんな異常な状態なら中に入る必要は無いでしょ。
だが、ピココは剣を抜いた。
レニーも魔法の発動体の腕輪を、さすって、白き波濤学派の魔法が使える様にした。
外は一見すると、異常が無いように思えたが、中に入ると違っていた。
デタトン製薬の第五工場の中は、びっしりと、謎の青い血管が浮き出た生命体で覆われていたのだ。床も壁も脈打ち生きている生命体に覆われていた。
留衣はデジカメを取り出して、デタトン製薬の第五工場の内部を撮し始めた。
レニーは怪訝に思った。
なぜデジカメで、デタトン製薬の第五工場の中を撮す必要があるのか。
メドウズへの連絡はウイッキイド・ゴーストの黒い携帯電話で行うはずだった。
レニーとピココ、留衣は、デタトン製薬の第五工場の中を歩いて奥に入って行った。工場の中では壁の昆虫の卵のようなモノから、次々と、古代モンスターが生み出されていった。まるで古代モンスターの工場だった。
留衣はウサギの顔が付いたデコレーションされた携帯電話を掛けた。
留衣は携帯電話に話していた。
「留衣です。フラクター選帝国ヤマト領のミサキ様ですね。現在、ミドルン王国で問題となっている、デタトン製薬の古代モンスター騒ぎの内部情報を手に入れました。デタトン製薬の第五工場が発生源です。ミドルン王国が、内密で研究していた、謎の生物の写真をデジカメで入手しました。ええ、判りました。今から、持ち帰ります」
留衣は携帯電話を切った。
「留衣、何をしているんだ」
留衣はニコニコしながら言った。
留衣は言った。
「スパイ活動です」
ピココは言った。
「どういうことなんだ留衣。ボク達を騙していたのか」
留衣はニコニコしていた。
留衣は言った。
「うーん。騙しては居ませんよ。ただ、スパイ活動をする必要があったのです。ミドルン王国で古代モンスターが現れた。これは、十分にフラクター選帝国に知らせる必要がある事件です」
ピココは言った。
「留衣、答えてくれ。ヤマト人は皆、スパイなのか」
留衣はニコニコしていた。
留衣は言った。
「誤解を恐れずに言えば。皆スパイでしょう。ヤマト人は、ヤマト人という少数民族の為に働いているのですから」
ピココは言った。
「留衣はスパイをするために、ボクの仲間に加わったのか」
留衣はニコニコしていた。
留衣は言った。
「わたしを、パーティーのメンバーに誘ったのは、ピココ様ですよ。もう忘れたのですか」
ピココは言った。
「だが、留衣は、スパイを、するつもりだったんだな」
留衣はニコニコしていた。
留衣は言った。
「そうとも言えますし、違うとも言えます」
ピココは言った。
「ボクを騙したな」
留衣はニコニコしていた。
留衣は言った。
「騙される方が悪いんですよ。こんな人格的に出来た人間なんて居るはず無いでしょ。物わかりが良く、協調的で、困った事を言わない。何時も笑顔で居る。私も疲れたわけですよ。演技を続けるのにですね。丁度いい頃合いです」
ピココは言った。
「そうだったのか」
もう留衣はニコニコしていなかった。
「それでは、私は、スパイの仕事が終わったので、この危険なデタトン市から脱出させて貰います」
ピココは言った。
「留衣!ボク達を見捨てる気か!」
留衣は嫌な笑いを浮かべた。
留衣は言った。
「ええ、そうとも言えます」
そして巫女の服を脱いだ。内側には黒い色の忍者スーツを着ていた。
留衣は嫌な笑いを浮かべたままだった。
留衣は言った。
「それでは、私は、このデジカメの映像をフラクター選帝国に送り届ける仕事をします。今まで、お世話になりました、御領主様の、お嬢様とレニー」
留衣は、いつものスローモーな動きからは想像できない速さで壁を走って消えていった。
レニーは急な展開に付いていけなかった。
ピココがレニーを見た。
「ボクとレニーだけじゃ、このデタトンから生還する事は不可能だ」
レニーは言った。
「ピココ様。ここが、古代モンスターの発生源で在る事は間違い在りません。メドウズにウイッキイド・ゴーストの携帯電話で連絡を付けてフラワー・ビレッジまで逃げ帰りましょう」
だが、ピココは目に見えて落胆していた。
ピココは言った。
「ボクは何で、こんなに人望が無いんだ。裏切られ続けている」
突然、声変わりしたぐらいの少年の声がした。
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道