戒厳令都市デタトンの恐怖
ソフーズは、社長室の机から日誌らしい革表紙のバインダーを引き抜いた。
ソフーズは言った。
「在ったぜ、ローサル」
シャールは言った。
「錬金術の魔法の薬なら、オレが見よう」
ターイは言った。
「事務系ですよ。私が調べます」
シャールは言った。
「確かに、そうだな」
ターイはソフーズから、バインダーを受け取った。
そして中を見た。
ターイは言った。
「在りました。番号は第一研究所を示す、L1の記号で略称されていますが。L1の所長ベランチョス・ラッシールへの指示です。最近のモノではガミオン大臣から、デタトン製薬に、錬金術の薬品の製造と、人間の身体のクローン培養を依頼しています。担当者は第十五研究主任ケイミー・ボーリズです。他にもL1では、様々な指示をデタトン製薬の社長から受けています。全て。ミドルン王国政府からです略号でGと書かれています。どうやら、人体実験を行っていたようですね。不老不死の秘薬を作り出すために、人体実験を行っていた」
ローサルは言った。
「本当かよ。デタトン製薬っていったら、テレビで家庭薬の広告流している、お上品な会社だぜ」
ソフーズは言った。
「でもよ、ローサル、古代モンスター事件を起こしたんだぜ」
シャールは言った。
「実験体は、多分、クローン人間だろう。二重の螺旋学派は、たまに、クローン人間を使って新薬の人体実験を行う」
ターイは言った。
「そのようですね。クローン人間の実験体はモルモットの頭文字でMと呼ばれています。だが、ガミオン大臣から製造を依頼された錬金術の薬は。化学式を記した手紙と一緒に送られたそうです」
ローサルは言った。
「それじゃ、次は、デタトン製薬の第一研究所に乗り込むとするぜ。ガミオン大臣達が隠したがっている何かが在るはずだ」
レニー達鋼鉄少女隊と、ダイナマイト・シルバーズは、デタトン製薬本社の財務会計課に入っていた。
生きのこった、他の冒険屋のパーティ達も、財務会計課に入ってきた。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「我々は、異なるパーティだが。デタトン製薬の帳簿を調べるために協力しよう」
モヒカン頭の戦士が言った。
「そうだな。オレ達は協力した方がいい」
顔を真っ白に塗った黒い髪の女戦士が言った。
「私達のパーティも協力する」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「それでは、ミスター・シーン達に任せよう」
レニーは、デタトン製薬本社の財務会計課のオフィスの中を見ていた。
筋肉老人魔法使いミスターミスター・シーンは言った。
「会計簿の中から異常を捜すんだ。目安は、通常の錬金術の材料の購入費から、最近までの取引の中で、今までとは違う、錬金術の材料を購入している場所を捜す。今年以降の方が確実だろう」
各パーティの魔法使い達が帳簿を調べ始めた。
筋肉女老人レンジャー、ミセス・ポッポー
は言った。
「キャンディ・ボーイズの四人は、どこに行ったのかしらね」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは行った。
「判らないが。我々とは違う目的があるのだろう」
女の声が上がった。
「在った!」
黄色いサングラスを掛けた、若い女魔法使いだった。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「どんな取引だ」
黄色いサングラスを掛けた、若い女魔法使いは言った。
「ミドルン王国政府からの資金で、大量の錬金術の薬の製造を行う材料の購入が行われている」
筋肉老人魔法使いのミスター・シーンは言った。
「どれぐらいの規模だ」
黄色いサングラスを掛けた、若い女魔法使いは言った。
「合計で二百万ネッカー(2000億円)の材料費が動いている。全部ミドルン王国政府からの資金よ」
レニーは呆れていた。
なんていう大金が動くの。
さすが政府。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「これが、どんぴしゃりの筈だ。どうやら、我々は、ミドルン王国政府の関係している事件に巻き込まれたようだ」
モヒカン頭の戦士は言った。
「やっぱり、ミドルン王国政府も信用できないよな」
黄色いサングラスを掛けた若い女魔法使いは言った。
「私が、読み上げましょう。この二百万ネッカー(2000億円)の材料を購入して、製造するために予算が配分された、工場はデタトン製薬の第五製薬工場です」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「我々の向かう先は、デタトン製薬の第五製薬工場だ」
突然、財務会計課の室内の明かりが消えた。
そして真っ暗闇に包まれた。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「何が起きたんだ。ミスター・シーン「ライト」の魔法を使ってくれ。レニー君も、このぐらいの魔法なら使えるはずだ」
レニーは慌てて、「白き波濤学派」の六元魔法の一つ光の魔法を使うための準備に入った。
だが、レニーが魔法を使う前に消えた室内の明かりが再び灯った。
そして、3メートル近く在る、緑色の肌の巨人が、財務会計課の室内に背中を曲げて立っていた。
「オレは、魔界七勇士の一人、大鋼体巨身のダガルジャ(おおこうたいきょしんのだがるじゃ)だ」
そして巨大な1メートル近く在る拳を振りかぶって、床を殴った。
途端に建物が震え始めた。
地震の様にレニーの立っている床が揺れ始めた。
ピココは言った。
「レニー!留衣!逃げるんだ!」
そして、ピココはレニーと留衣の手を引っ張って走った。
レニーも、つられて走った。
床に、ひび割れが生じた。
そして壁にも、ひび割れが生じた。
レニーはピココに引っ張られて留衣と一緒に、階段を駆け下りた。
ローサル達は、背後で、デタトン製薬本社の建物が大きく割れて倒壊していくのを見ていた。
ソフーズがガムを噛みながら言った。
「他の冒険屋達は、あの中で、ご臨終かよ」
ローサルは言った。
「いや、逃げ出してきたようだぜ」
倒壊していく、デタトン製薬本社の建物の中から冒険屋達が走り出してきた。
シャールは言った。
「また、魔族なら、戦う必要はあるか」
ローサルは言った。
「いや、余計な所で遊んでいるヒマは無いぜ。デタトン製薬の第一研究所を目指そうぜシャール」
ターイは言った。
「我々は魔族を狩りに来たのでは、ありませんよシャール。デタトン市で行われていた陰謀の全容を知る事が目的です」
シャールは言った。
「確かに魔族とは言ってもランクは低いようだな。わざわざ戦う必要も無いか」
ローサルは言った。
「そうだぜ、シャール。オレ達でも十分戦える魔族達だ。それよりも、ガミオン大臣とデタトン製薬の秘密の方が重要だぜ」
ターイは言った。
「目指すは、デタトン製薬の第一研究所です」
ソフーズがガムを噛みながら言った。
「だがよ、簡単に、行かせてくれないようだぜ。古代モンスター達がゾロゾロと出てきやがった」
デタトン製薬本社の建物の周りの街路に、古代モンスター達が、溢れかえっていた。
ローサルは言った。
「シャールとターイの魔法を温存する。ここは戦わずに逃げるぞ」
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道