戒厳令都市デタトンの恐怖
「……待って。他の工場も地下水路で取水したり排水したりして、繋がっているはずなの。だから地下水路を調べなければダメ」
アンが言った。
「カンがいいですね。コロナ・プロミネンス。この戦争用の地図には、当然二枚目に地下水路の地図が付いています」
スカイはアンの言うとおり地図の二枚目を、めくった。
そこには、地下水路が描かれていた。
レインボー・リバーに流れ込む事になって居る、地下水路が出てきた。
スカイは言った。
「これじゃ、今のままでは、古代モンスターの発生場所を特定する事は難しいな」
マグギャランは言った。
「うむ、まさか、今のままでは、デタトン市に突入しても。オレ達は皆目、見当が付かない事になる」
コロンは言った。
「……待って、よく考えて。デタトン製薬の本社には、薬を製造する工場の記録があるはずなの」
スカイは言った。
「だが、コロン姉ちゃん。第一から第三まである研究所の方が、こういう、古代モンスターが発生するような普通の薬じゃない、異常な錬金術の薬を研究しているはずだぜ」
コロンは言った。
「……でも、本社には、お金を動かした記録が残るはずだよ」
マグギャランは言った。
「オレは、延々と、デタトン製薬の財務の記録を読んでいるのは嫌だぞ。ミドルン王国一の製薬会社、デタトン製薬の財務の記録が、どれだけ分厚く長いものであるか、想像しただけで目眩がする。コロンは会計ができるか」
コロンは眉間に皺を寄せた。
「……できない」
スカイは言った。
「そうだ。他パーティとの連絡で調べるのはどうだ」
マグギャランは言った。
「確かに情報の、やりとりは重要だが。アンが、オレ達に他のパーティーの情報を渡すかが問題だな」
マグギャランは信用できない目でアンを見ていた。
スカイは言った。
「アン。オマエは、オレ達に協力する気はあるのかよ」
アンは言った。
「ええ、任務の範囲内で協力します。この任務の目的は、ミュータントではなく、古代モンスターの発生場所発見し根絶する事です。あなた達は私を信用しないかもしれませんが、昨日、エアカーで迎えに来た事を思い出してください」
スカイは言った。
「オマエ、ゼッテー信用できねえよ」
ポロロンは言った。
「スカイ。アンは、こう言っているのです。アンを信用しましょう」
マグギャランは言った。
「スパイの女を簡単に信用できるわけは、ないだろうポロロン」
ポロロンは言った。
「いえ、私はアンを信頼します」
アンは言った。
「私が、他のパーティから受け取った情報は、あなた達に渡しますよ。ただし、ロマシク・ボンドネード経由ですが」
スカイは言った。
「やっぱり、あの野郎が責任者かよ」
マグギャランは言った。
「うむ、やはり、信用できないヤツであったか」
アンは言った。
「ロマシク・ボンドネードからは、隠しておくように命令がありましたが。ばれてしまった以上、責任者で在ることを隠す必要は、ありませんね」
スカイは言った。
「それじゃ、オレ達は、正門と、レインボー・リバーから離れた、南東門から入る。そして適当に流しながら、他のパーティが調べた情報を得てからデタトン市の中で動く事にするか」
マグギャランは言った。
「確かに他に選択肢は無いようでは在るな」
アンは言った。
「判りました」
レニー達、鋼鉄少女隊と筋肉老人達、ダイナマイト・シルバーズは、メドウズから渡された地図を見ていた。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「我々は、デタトン製薬の本社に最も近い、南西の門から入ろう」
ピココは言った。
「どうして南西の門なのですか。ミスター・シーン」
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「デタトン製薬の本社を調べたい。私は、ミスター・ジェイが領主を務めていた、ブレキ男爵領の執政官を務めていた。だから、財務諸表を見る事は得意だ。デタトン製薬の取引記録を調べて、異常な数字を探し出したい」
レニーは、筋肉老人魔法使いミスター・シーンを見ていた。
そういう繋がりで、筋肉老人戦士ミスター・ジェイと一緒に居るの。
レニーは、ピココと一緒に歳をとる事は嫌だった。エターナルの魔法使いとして、魔法都市エターナルで、年老いていきたかった。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「ミスター・シーンに任せよう。我々は、あくまで、古代モンスターの発生場所を捜す事が目的だ」
ローサル達、キャンディ・ボーイズは、ロマシク・ボンドネードから地図を受け取っていた。その地図を見ながら作戦の検討に入った。
ローサルは言った。
「南西の門から入るぞ」
ソフーズはガムを噛みながら言った。
「どういう理由だよローサル」
ローサルは言った。
「ミドルン王家やガミオン大臣との取引記録の類いの手紙などの書類が、デタトン製薬の本社の社長室には必ず、あるはずだ。ソイツを探し出した方が早いぜ。オレ達は、古代モンスターを根絶させる事が目的じゃ無い。ガミオン大臣達が企んでいる事を探し出すのが目的だ。コイツは必ず、でっかい裏があるぜ」
ターイは言った。
「あの筋肉老人の戦士の言う事は一家言、在りましたが。ミドルン王国という国は、国民を守っては居ないのですよ。「ミドルン貴族派」「ベチャル改革派」「マキラ軍部派」達、三派閥の利益の代弁ですよ。平民の利益は代弁していません」
シャールは言った。
「オレの雷光が、古代モンスター相手に通用するかに興味がある。オレも屍(かばね)に雷光檻を切られて以降、ずっと考えていた」
ローサルは言った。
「まあな、オレ達は、でっかい秘密ってヤツを暴きに行こうぜ。そうしたら、リスクはデカイがリターンもデカイ」
ポロロンは言った。
「さあ、スカイ、マグギャラン、コロン、正義の為に出発します」
アンは言った。
「立派ですよ。ポロロン。ミドルン王国の危機です。どうぞ、頑張って、きてください」
ポロロンは言った。
「わたくしはイシサ聖王国の生まれですが。正義の為には国境など在りません」
アンは言った。
「偉いです。実に立派ですポロロン。それに引き替え、この三人の冒険屋と来たら、○○○○の×××のピーピーピー(放送禁止用語連発)の連中です」
スカイは、もうアンを相手に、しなかった。
スカイは言った。
「何とでも言っていろ」
マグギャランは言った。
「難しい事では無いぞ。オレ達三人の得意のラン・アンド・ゲットだ。パターンにハマればオレ達は強いのだ」
コロンは頷いた。
コロンは言った。
「……デタトン市の中を走り回って、古代モンスターの発生源をゲットする」
スカイは言った。
「そして逃げ帰ってくる。なんか、文句在るかよアン」
アンは言った。
「私としては、あなた達が、古代モンスターの発生場所を突き止めて報告した後で、美しく、綺麗さっぱり死ぬ事を望んでいますが。意外と、あなた達は、しぶといですからね」
スカイは言った。
「オマエの都合なんかで一々死んで、たまるモノかよ」
マグギャランは言った。
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道