戒厳令都市デタトンの恐怖
「許せません。あなたは、それが悪いことだと、どうして判らないのですか」
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃあひゃ、判らないね。三つ子の魂百までって言うじゃないかよ。あたしの酒飲み嫌いは筋金入りさね。酒飲み殺して飲む酒は格別の味さ。ウーン。美味い。プハァー」
ブランデーは湯気の出ている酒を飲んでいた。
コロンが、スカイの腰の辺りをゴソゴソと
していた。
スカイは言った。
「何、やっているんだよコロン姉ちゃん」
コロンは、スカイがベルトに付けている四角いウエストポーチから「小人の肝臓殺し」が入った金属製のフラスコを取りだした。スカイは、安くてアルコール度数が高い、これを消毒液や気付け薬に使っているのだ。
マグギャランは言った。
「まさか、また、酔っぱらうつもりか」
スカイは言った。
「おい、止めとけよ」
スカイはコロンからフラスコを奪おうとしたがコロンは背中を向けて、ぐびぐびと飲み始めた。
マグギャランは言った。
「あちゃあ。また飲んでしまった」
コロンは、しゃっくりを始めた。
「…ひいっく。ひぃっく」
たちまち顔が赤くなったコロンは、しゃっくりを始めた。
コロンは言った。
「…ひぃっく。あちゃしは、怒っている。ブランデーてめぇ、コンチクショウ」
コロンは直ぐに酔い始めた。そして前へ、フラフラと出てきた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「なんだい、お前さんも酔っ払いかい?あたしゃ、酔っ払いは嫌いなんだよ。酔っ払いを見ると無性に殺したくなるんだよ」
酔いどれ女魔法使いのブランデーは用心深く、間合いを取りながら酒を飲んで言った。
ポロロンは怪訝そうな顔をした。
ポロロンは言った。
「コロン。どうしたのですか。急に饒舌になって」
スカイは言った。
「コロン姉ちゃんは、酒飲むと性格が変わるんだよ」
マグギャランは言った。
「うむ、典型的な絡み酒だ。あたり構わず口から炎を吐くから気を付けろよポロロン」
ポロロンは言った。
「そうなのですか。ですがコロンは未成年の筈です。飲酒は断じてNOです」
コロンは言った。
「ひいっく。てめぇ、ブランデーこのヤロウは酒飲んで、仲間殺して何してさらす」
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃひゃ。楽しいんだよ。あたしゃ楽しいのさ。酒飲み殺して、飲む酒は、そりゃもう、この世の物とは思えない美味なのさね。病み付きになる美味さなんだよ。あたしゃ。その美味い酒を飲むために酒飲みを殺しているのさね」
コロンは言った。
「ひいっく。あちゃしは許さないぞ。ひいっく。これはウォッカの分!がおぉぉぉぉぉぉぉ!」
コロンは口から炎を吐いた。ブランデー目がけて炎が吹き付けた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「オン・ザ・ロック!」
コロンの炎を屈んで避けて、呪文印を結んでいた酔いどれ女魔法使いブランデーが指パッチンをして口から酒を吹き出すと。霧状の酒が2メートル近くの氷の塊となってブランデーの身体をコロンの炎から守った。
コロンは言った。
「ひいっく。猪口才な魔法を使いおってからにして、どこのボンクラ学派だ」
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃひゃひゃ。あたしゃ。「錬酒酔遁(れんしゅすいとん)学派のアル中派」の魔法使いさね。そっちこそ、どこのチンケな魔法使いの学派なんだい」
コロンは言った。
「ひいっく。あちゃしは、四代元素魔法「炎の門」学派のコロナ・プロミネンスだ。ひいっく。これはウイスキーの分だ!食らえ!がおおおおおおお」
コロンは更に口から炎を吐いた。酔いどれ女魔法使いのブランデーが作った氷の塊が溶け始めた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは手で呪文の印を結び始めた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃあひゃひゃひゃ、そんなマイナー学派知らないよ。ファイアー・テキーラ!」
氷の塊が溶けきった瞬間。酔いどれ女魔法使いのブランデーが酒を口に含んで指パッチンして吹き出すと。口から炎が吹き出してコロン目がけて走った。
コロンが口から吹き出した炎と、ぶつかった。コロンは口から炎を吐きながら狼狽えた顔をした。
酔いどれ女魔法使いのブランデーのファイアー・テキーラがコロンの炎を押し始めたのだ。
だが、コロンの吐く炎も、酔いどれ女魔法使いのブランデーの炎を押し返し始めた。
コロンと酔いどれ女魔法使いのブランデーの間に巨大な炎の塊が現れた。
そして…炎の塊は爆発した。
コロンは吹き飛ばされた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーも吹き飛ばされた。
ダブル・ノックアウトなのか?
スカイは吹き飛んで大の字に倒れたコロンを見た。
スカイは言った。
「おい、大丈夫か、コロン姉ちゃん」
コロンは言った。
「ひいっく…あちゃしは、まだ、グロッキーじゃないぞ。四大元素魔法は戦いを重んじる学派。ひいっく。まだ、ジンとドブロクの分が残っている」
コロンは、顔や服が煤けていたが、よたりながら立ち上がった。そうして落ちた帽子を拾って、ほこりを、はたいて被った。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃ、あひゃ、あひゃ。なかなかやるじゃないか嬢ちゃん。あたし相手に、ここまで、やるとは見上げた物だよ」
やはり、酔いどれ女魔法使いのブランデーも全身が煤けていたが立ち上がった。そして、魔法瓶から酒を汲み出そうとしたが動きが止まった。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃひゃひゃ。今日は酒が切れたから、この辺で、お開きさね。二次会は無しだよ」
ブランデーは魔法瓶を逆さまに振って言った。そして後に下がり始めた。
コロンは言った。
「ひいっく、あちゃしが逃がすか!がおぉぉぉぉぉぉぉ!」
コロンは、口から炎を吐いた。
だが、酔いどれ女魔法使いブランデーは後に連続して跳んで避けた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃあひゃ。今度は酒が沢山ある時にリベンジ・マッチだよ。あたしゃ執念深いんだ覚悟しておきな。酒飲み娘め。あたしゃ酒飲みは必ず殺すんだよ」
酔いどれ女魔法使いブランデーは、そう捨て台詞を言うと一目散に走って逃げ出した。
コロンの口から吐いた炎は酔いどれ女魔法使いブランデーを捉える事は出来なかった。
コロンは言った。
「ひいっく。逃がしたか。ひいっく。おいスカイ。これ、もっと無いの」
コロンは、落ちているスカイのフラスコを拾い、振った。
ロマシク・ボンドネードは、ミュータントの発生地図を作っていた。正確には古代モンスターの発生場所だったのだが。
モルガも青ざめた顔をしていた。
あまりにも冒険屋達の被害が多かったのだ。
デタトン市への偵察は、16方向から32パーティー162人が参加した。
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道