戒厳令都市デタトンの恐怖
「なぜですか。なぜ、ボクでは上手く行かないんですか。ボクは一生懸命、HOW・TO本「シュド・マーチャーセンが語る成功する冒険屋へのなり方」を読んで、リーダーシップの本「シュド・マーチャーセンのリーダーになりたいあなたに贈る108の金言」も読んでいるんです」
ピココの声は絞り出すようだった。
ふーん、御領主様の、お嬢様でも本を読むんだ。レニーは引いたまま思った。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「ピココは、相手の立場に立って考えたことが無いだろう。ピココは世間知らずなんだ」
ピココは言った。
「確かに、それは、そうですが。ボクは、グリップ男爵家の相続を、しなければならないんです。それは,何よりも優先させなければならない事なんです」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは溜息をついた。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「ピココもレニー君を一概に否定は出来ないな」
ピココは言った。
「確かに、ボクとレニーは同じかもしれません。どちらも、必ず成し遂げなければならない目標が在るんです」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「だがピココ、サイ君の様に、気弱な人間を無理矢理、仲間にして、働かせるのは、良くないぞ」
ピココは言った。
「サイが、こんなに気が弱いとは知らなかったんです。サイが、スカウト団の団長の娘だから、父親と同じように気丈な性格だとボクは、さっきまで考えて居たんです」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイはピココの頭を軽く手のひらで叩いた。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「ピココも、まだ若い、人を見る目が無い所は、これからの人生で経験を積んでいくしかない」
ピココはサイを見て悲しそうな顔をした。
ピココは言った。
「サイは、怖いんだね。ずっと怖かったんだね。ご免よ,ボクは、サイが気が弱いことに気がつかなかった。駄目な,リーダーなんだ」
サイは涙を流して嗚咽を漏らした。
サイは言った。
「…こんな怪物達と戦うことなど…考えて居ませんでした。…今までは、弱いモンスターを追い払ったりするような…簡単な冒険屋の仕事ばかりで、…私も怖さを我慢出来ましたが。…この古代モンスター達は怖すぎました」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「留衣君は、どうなんだ。ピココと一緒に……」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイが,そこまで言うと,筋肉魔法使いのミスター・シーンが遮った。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「ミスター・ジェイ。この娘はフラクター選帝国ヤマト領のスパイかもしれない。なぜ、ヤマト人がミドルン王国のグリップ男爵領に住んでいるんだ」
留衣はニコニコと笑顔だった。
留衣は言った。
「それは,私は、フラクター選帝国ヤマト領とは関係は少しばかりあります。ですが、私の家はフラクター選帝国が出来る前からグリップ男爵領に住んでいます」
筋肉魔法使いのミスター・シーンは言った。
「どういう事だね留衣君」
留衣はニコニコと笑顔だった。
留衣は言った。
「だって、コモンでは、ヤマト人は少数民族で、各地に分散して暮らしていたんですよ。だから、フラクター選帝国の建国の時に、各地に散らばっていたヤマト人は結束して参加したんです。ですが、フラクター選帝国ヤマト領には全てのコモンに住むヤマト人を受け入れる能力は無いんですよ」
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「そして有力選帝侯の一人である、竜王院家を作り出した」
留衣はニコニコと笑顔だった。
留衣は言った。
「少し違いますね。竜王院様の家は、ヤマト人の氏子神の神社を束ねているのですよ。実際の選帝侯は、将軍家になります」
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「はっきりさせよう君はスパイなのか」
留衣はニコニコと笑顔だった。
留衣は言った。
「そうと言えば、そうであり、違うと言えば違います」
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「どういう意味だね」
留衣はニコニコと笑顔だった。
留衣は言った。
「私は、グリップ男爵家の領内の神社で神主の娘として、巫女を、やって居ます。回復魔法は少し使えます。私や,私の両親は、ヤマト人同士で、フラクター選帝国ヤマト領の親戚達と、手紙の、やり取りを行います。最近は,携帯電話を使いますが。私も持って居ますよ」
留衣はニコニコと笑顔を浮かべたまま、巫女の服の袖から、白いウサギの顔が付いたデコレーションされた携帯電話を取りだした。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「フラクター選帝国のヤマト人にも携帯電話を掛けるのかね」
留衣はニコニコと笑顔を浮かべて居た。
留衣は言った。
「私はフラクター選帝国には友達は居ませんが、グリップ男爵家の外のヤマト人には掛けますよ」
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「スパイとしてか」
留衣はニコニコと笑顔を浮かべて居た。
留衣は言った。
「私としては、一般人の友達に掛けているつもりですけれど。それとか親戚の人々です」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「シーン、もういい。留衣君には悪意は無いだろう」
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「だが、スパイなら、大問題だ」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「シーン、留衣君がスパイとしても大した事は無いだろう」
レニーは、ゾッとした目で、留衣を見て居た。何時もニコニコしている留衣がスパイだとは考えたことも無かった。
まさか、そうなの?
レニーは、いつもと同じように見える留衣を見て、怖気を感じた。
スカイ達は、フラワー・ビレッジの中に居た。アンは、手続きをしに、どっかに行っていた。スカイ達四人と、酔いどれ決死隊で一人だけ生還した酔いどれ女魔法使いのブランデーは、フラワー・ビレッジの花壇の時計台前で、アンに言われた通り待っていた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは酒を飲みながら笑っていた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃひゃひゃ。今日も、見事な死にっぷりだったね」
スカイは言った。
「何、考えて居るんだよ」
酔いどれ女魔法使いのブランデーが言った。
「あたしゃね、実は酒飲みが大嫌いなのさ」
スカイは言った。
「どういう事なんだ」
酔いどれ女魔法使いのブランデーは酒を飲みながら笑っていた。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「酒飲みが嫌いだから、酒飲みを殺して居るんだよ。あひゃ、あひゃ、あひゃ、こりゃ、面白いわね」
スカイは言った。
「お前も酒飲んでいるじゃねぇかよ」
ポロロンは言った。
「そんな理由でウォッカ達を見殺しにしていたのですか。そしてジンとドブロクを死地に追いやった」
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「そうだよ、あひゃあひゃ。あたしゃね、両親が酔っ払いで、何時も酒飲んだ両親に殴られてDV(ドメスティック・バイオレンス)の中で育ったんだよ。だから酔っ払いが大嫌いなのさ」
ポロロンは言った。
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道