戒厳令都市デタトンの恐怖
「見て、ここに、メガサイズ・トードーに注意という看板がある」
ミセス・ポッポーが目ざとく、木の陰に倒れている看板を見つけた。確かに黄色いカエルの画が描かれていて『大きい物は3メートルを超えます。飲み込まれないように気をつけて下さい』と書かれていた。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「巨大ガエルが、この沼には生息しているのか」
サイが言った。
「見て下さい、橋の上に巨大なカエルの腕が」
サイが木の橋が架かっている向こうの方を指さした。レニーはサイの指が指す方向を見た。眼鏡を掛けているレニーの視力では、よく見えなかったが橋の上に何かが転がっていることは判った。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「この沼にはメガサイズ・トードーよりも強力なモンスターが潜んでいる事は間違いないな」
筋肉女老人レンジャー、ミセス・ポッポーは言った。
「地図を見る限り川と一体化していて迂回は出来ないわよ」
ミセス・ポッポーがバインダーの地図を見せた。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「仕方が無いな。危険を覚悟して、橋を渡っていこう」
そして、レニー達、鋼鉄少女隊とダイナマイト・シルバーズは木の橋を歩いていった。
橋の中程まで来たとき、右手の方で沼の中から突然巨大な3メートルぐらいある、カエルの足に魚の頭を持った人間の様な身体をした怪物が食らいついていた。
筋肉老人魔法使いミスター・シーンは言った。
「あれは古代モンスター、ピラニア魚人だ」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「どうやら、メガサイズ・トードーに気を引かれていて、我々には気が向いていない様だな」
筋肉女老人レンジャー、ミセス・ポッポーは言った。
「早く、橋を渡って、この沼地を抜けましょう」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「その方が良い、ピラニア魚人は群れて人間を襲う。他にもピラニア魚人が居るかもしれない」
レニー達は、沼の上に架けられた橋を渡っていった。中程まで来たとき、右手の方の沼から何かが飛び出してきた。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイが、筋肉女老人レンジャー、ミセスポッポーの腕を引っ張った。黄色と赤い色のピラニア魚人が、筋肉女老人レンジャー、ミセスポッポーの居た場所を飛んでいった。
そして橋の反対側の水面に入っていった。
筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
「みんな走れ!」
筋肉老人戦士ミスター・ジェイが背中から大剣を抜いだ。
カッシーが臨時作戦会議室に入ってきた。
カッシーは言った。
「アハハッ!叔父さん!モルガ!ハッピーなニュースだよ!イェイ!」
ロマシク・ボンドネードは言った。
「何しに来た。今は仕事中だ」
カッシーは言った。
「仕事なんか吹っ飛ぶような大ニュースさ!うーんチュッパ!」
カッシーは二の腕を曲げて盛り上がった力こぶにキスを、し始めた。
モルガは言った。
「今、ボンドネード・ファミリーのルールで、仕事中なんだよ。コーラーの伯父貴の言うことを聞けよ」
カッシーは言った。
「あーん、もう。モルガも、聞いたら一気にハッピーになっちゃう様な、グレートでマーベラスなニュースだよ。ボンドネード屋敷の執事のマグライアからのニュースだ!ハハッ!」
カッシーは腰に手を当ててラインダンスを一人で踊り始めた。
ロマシク・ボンドネードは言った。
「マグライアが?何だ」
ロマシク・ボンドネードはボンドネード屋敷に仕える生真面目な執事のマグライアの顔を思いだした。
カッシーは言った。
「あーっ。やっぱり聞きたくなったでしょ。ハハッ。実は、オレ様が、オーディションを受けた、ウダルの国営テレビ局で、富国強兵の為の筋肉ニュース「MHK・マッチョ・ワールド」のアナウンサーを募集しているって言うじゃない。これは、もう、この美しい肉体を持っているオレ様の為に在る企画。オレ様しかいないって感じで応募したら、モロ当選!キャハッ!やっぱり、時代はオレ様を必要としているんだねアハハハッ!」
カッシーは自分の身体を抱きしめて、身悶えしていた。
正気か。
なぜ、MHK(ミドルン放送協会)が、こんなバカ者をアナウンサーに採用するのか判らなかった。
こんなバカ者をウダルのテレビで放送されたらボンドネード・ファミリーが築いてきた信用が一気に吹き飛んでしまう。
兄のルーサーが何を考えているのか子供の頃から一緒に育っているロマシク・ポンドネードにも理解が出来なかった。
スカイ達は、更に小山を三つ越えたら、急に辺りは開けて、遠くに城壁で囲まれた街のような物が見えた。
マグギャランは言った。
「どうやら、デタトンに来てしまったようだなスカイ」
スカイは言った。
「ああ、そうだな」
ここから見る限りデタトンは回りを畑や牧草地に囲まれた街で農村みたいな村が周囲に点在していた、レインボー・リバーという名前の河が街の中を流れて下流に向かっていた。そして、領主のブードー子爵が住んでいた城らしき物が街の真ん中にあった。
辺りは、のどかな田園風景だった。晴天で空は青く。雲は少し浮かんでいる程度で、スカイ達の居る道の脇にはトウモロコシ畑が、広がっていた。
ポロロンは言った。
「スカイ、アンに電話を掛けましょう」
スカイはウィッキィド・ゴーストの描かれた黒い携帯電話を取りだした。そして電話を掛けた。
アンが携帯電話の向こうで言った。
「はい、アン・ヘイコックです」
スカイは携帯電話に言った。
「デタトンが見えるところまで来た」
アンが携帯電話の向こうで言った。
「それは、どうやら「見晴しカ丘」という辺りですね、これから、デタトンの外壁まで偵察して下さい」
スカイが見る限り、デタトンまでの一直線の道には古代モンスターが居ないようだった。
スカイは携帯電話に言った。
「ところで、どうやってフラワー・ビレッジまで戻れば良いんだよ。来た道を引き返すのは嫌だぜ。古代モンスターがウロウロしているからな」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「レインボーリバー沿いのレインボー道路を通って、フラワー・ビレッジまで帰って来ることになります」
スカイは携帯電話に言った。
「嫌だよ。カイマン男が出るんだろ」
アンは携帯電話の向こうで言った。
「大丈夫ですデタトン近くまで偵察して来たら、携帯を掛けて下さい私が迎えに行きます」
スカイは携帯電話に言った。
「何だよ。最初から、お前も手伝えよ。まあ、馬車の馬がカイマン男に食われてしまうかも知れないが……」
スカイがアンと話していると、急にマグギャランがスカイの腕を引っ張った。
スカイの目の前を何かが音を立てて、通り過ぎていった。
マグギャランが叫んだ。
「スカイ!下だ!」
スカイは道路の下方のトウモロコシ畑がある斜面に奇妙な植物を発見した。
それは、巨大な牙の生えた花が付いている
怪物だった。そしてツタのような触手の先に鎌が付いていた。その鎌の付いた触手は合計で十本近く在った。
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道