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戒厳令都市デタトンの恐怖

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 「その原コモン人とは何であるかに、ついては幾つもの異説がある。民族系統も謎のままだ。だが、どれが本当であるかは、魔法都市エターナルでも決められていない。むしろ、コモンよりも、他の南方大陸などの方が詳しい歴史が残っているという見解もある」
モルガは言った。
 「なんで、その古代モンスターが、ただ、大きい製薬会社のデタトン製薬の本社と工場が在る以外、何の変哲もない、ただの街であるデタトン市に出現したんだ」
 ロマシク・ボンドネードは沈黙した。
それはロマシク・ボンドネードも気が付いている問題だった。
 だが、このデタトン問題は深入り、し過ぎてはいけないと冒険屋を続けていたロマシク・ボンドネードのカンが告げていた。

スカイは辺りを見回した。
スカイは言った。
「ひでぇな」
 マグギャランは言った。
 「うむ、確かに酷い惨状だ。一体、どれ程の化け物が暴れたと、いうのだろうな」
スカイ達が辿り着いた「トンガリ族村」は
尖った形の屋根をした、家で構成されていた。だが不幸にも、その村の家々は、滅茶苦茶に何か、巨大な力の様なモノで破壊されていた。
 一体何が、起きたのか。
 やはり…。
スカイは言った。
 「やはり、ミュータントのせいか?」
 マグギャランは言った。
 「いや、ミュータントではなくて古代モンスターだろう。ここにも出るのは古代モンスターであることは間違いないはずだ」
スカイは言った。
「なんだよ。アンの奴、出任せ言いやがって。何がミュータントだよ。さっきは、クモ女に食われそうになったしよ」
コロンは、辺りをキョロキョロと見回していた。
ポロロンは言った。
 「ここに住んでいる人達は避難できたのでしょうか」
マグギャランは言った。
 「うむ、転がっている死体が無いところを見ると避難は出来たのではないか」
 スカイは言った。
 「だが、ウィスキーみたいに食われちまったのかもしれないぜ」
 マグギャランは溜息をついた。
 マグギャランは言った。
「それも、有り得るな」
ポロロンは言った。
「なんという事でしょう。このような非道が許されるのでしょうか。無辜(むこ)の民が傷つけ虐げられています」
 マグギャランは言った。
 「うむ、まあ、死体が無いから、取りあえずは避難は無事終了したという風に前向きに捉えようではないかポロロン」
 パオォォォォォォォォン!
 は?
 何の音だ?ゾウの叫び声の様な音が聞こえた。
 そして、壊れた、家の残骸から身長五メートル以上在る怪人が現れた。
全身が灰色の筋肉で覆われた、ゾウの頭が付いた怪物だった。
 スカイは言った。
「なんだ、家を壊していたのはコイツか?」
 マグギャランは言った。
 「うむ、だが、あの酷い壊れようを見て見ろ、奴が、どれだけの馬鹿力を持っているのかが、窺い知れる」
スカイは言った。
 「村に入らないで逃げるぞ。あんなのに掴まったらバラバラにされ…ん?」
 スカイが言っている間にゾウの頭が付いた怪物が四つん這いになって畑の土を巻き上げて突進してきた。
 スカイは言った。
「逃げろ!」
 スカイ達は走って逃げ出した。
 マグギャランは走りながら言った。
 「思いだしたぞ!あれは古代モンスター、エレファント・マンだ!確か出題頻度は星二つ!」
 スカイが後を見ると、エレファント・マンは、こっちまで近づいていた。
 巨体の癖に異常に速い脚力だった。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。
「あひゃひゃひゃ!ジン、お前の出番だよ!得意の神官魔法を見せてやれ!」
 スカイは言った。
「おい!何言って居るんだよ!」
金属製の酒樽と繋がっているストローを口にくわえたまま走っていた酔いどれ僧侶のジンが突然、立ち止まった。
 酔いどれ僧侶のジンが言った。
 「ここは、俺に任せろ!お前達は先に逃げろ!うむっ!酔っ払いと飲んべえを守る偉大なる我が神アルホよ!今、アルホの僧侶ジンが求め訴える、その、大いなる力を我が前に顕現させ示せ!酒神アルホによる、鉄壁の無敵防御!神官魔法「フォース・バリア・フィールド」!」
酔いどれ僧侶のジンは立ち止まったまま、神官魔法を使った。全身から酒臭い青白い光りが吹き出した。
ポロロンは言った。
「ジン!」
 エレファント・マンは突進してきた。
酔いどれ僧侶のジンの全身から青白い光りが輝いていた。
 エレファント・マンは雄叫びを上げた。
 「パォォォォォォォン!」
 そしてエレファント・マンの突進をジンは両手を開いて真正面から受けた。
 ジンは叫び声を上げた。
 「ぐえっ!」
ジンはエレファント・マンの牙が心臓の辺りに突き刺さって居た。
 そしてエレファント・マンは四つ足のまま真っ直ぐ走ってきた。
スカイは避けた。
 スカイは言った。
 「アブネェ!」
マグギャランは言った。
 「なんとするか!」
 マグギャランも叫んで避けた。
コロンは呆然と突っ立っているポロロンに飛びついて、道を開けた。
 酔いどれ女魔法使いのブランデーと、酔いどれ侍ドブロクも避けた。
 エレファント・マンは酔いどれ僧侶ジンを牙に突き刺したまま突進して前へ走り抜けていった。
 マグギャランは今頃思い出して言った。 
 「確か、「コモ騎士、頻出モンスター辞典」によるとエレファント・マンは四つ足になって一度走り出すと止まれないと書いてあったな」
 ポロロンは言った。
「ジンは私達を庇って…私達の未来の為に…」
 スカイは言った。
 「ゼッテーただの無駄死にだよ」
ポロロンは言った。
 「スカイ。あなたは、もっと言葉を選べないのですか」
スカイは言った。
 「こんな時に酒飲んでいて酔っぱらっているから、まともな判断が出来ないんだろ」
「パオォォォォォォォン!」
 再びゾウの叫び声が遠くで上がった。
マグギャランは言った。
「不味いな。また、突進して来るぞ」
スカイは言った。
 「仕方がないな。一旦トンガリ族村に入って迂回ルートでエレファント・マンを避けながら進んでいくぞ」
 マグギャランは言った。
「確かに、それが一番妥当では在るな」
 
レニー達鋼鉄少女隊と、ダイナマイト・シルバーズは、鬱蒼とした森の中を、あちらこちらを警戒しながら歩いていた。レニーの左足の靴下は穴が開いていた。左足の裏は痛んだ。
 道は下り坂になっていった。下り坂の一番下には向こうの岸まで二百メートル近く在る沼が広がっていて、木で出来た橋が架かっていた。
 レニーは言った。
 「カイマン男が居るかも……」
 レニーは、テレビで見た、カイマン男達を思い出した。あの時のタイダー・テレビのテレビ・クルー達は回転しながら飛んでくるカイマン男達に情け容赦なく噛みつかれて食いちぎられて、血しぶきと共に五臓六腑を撒き散らして食べられていたのだ。あんな死に方は絶対嫌だった。
 筋肉老人戦士ミスター・ジェイは言った。
 「カイマン男が居るかは判らないが、水棲の古代モンスターが居る可能性は在る」
筋肉女老人レンジャー、ミセス・ポッポーは言った。