戒厳令都市デタトンの恐怖
「それを使って、発見したミュータントの特徴などを記入して下さい。そして、そのミュータント観察シートを、このフラワー・ビレッジのデタトン問題対策委員会へ持ち帰るのが仕事です。これは、通信専用の携帯電話です。この携帯電話で15分毎に現在位置の定時報告と、ミュータントと遭遇した場合に報告をして下さい」
アンが黒い携帯電話を取りだした。背中にウイッキィド・ゴーストのエンブレムが銀色の線で描かれていた。スカイは受け取った。
アンは言った。
「今日中に出発してビッグストーン村に着いたら。そこで一泊した後、明日の朝の七時に16組みのパーティ達が一斉にデタトン市へ向けて歩き出します」
マグギャランは言った。
「最早、観念するしかないのだなスカイ」
スカイは言った。
「ああ、仕方がないな」
コロンは頭を押さえて、あたふたとしていた。
ポロロンは背筋を伸ばして真面目な顔をしていた。
ピココがバインダーを取りに行った。
レニー達の前にミドルン王国の緑と赤の軍服を着た、男性が来た。
茶色に近い金髪の二十台中頃の男性は言った。
「私はメドウズです」
結構ハンサムかもしれなかったが、レニーの男性の趣味はエターナルの魔法使いの男性だった。
メドウズは話し始めた。
「ダイナマイト・シルバーズと、鋼鉄少女隊はレインボーリバー下流の幸せ橋を通ってデタトンの南南東にあるローリングヒル村を出てからデタトン市へ向かう事となります」
レニーは、もう、諦めきっていた。明日死ぬことは間違いは無かった。だが、せめてエターナルの魔法使いに、なってから死にたかった。
ビッグストーン村にスカイ達は、荷馬車に乗って、たどり着いた。
辺りには巨石がゴロゴロと転がっていた。そういえば、アッパカパー要塞に行く途中にあるアッパカパー峠にも巨石がゴロゴロと転がっていた。こっちの方は、平穏な農村の風景の中に巨石がゴロゴロと転がっているのだ。
ポロロンは言った。
「スカイ。ビッグ・ストーン村に辿り着いたらアンに携帯電話を掛けるのでは、ないですか」
マグギャランは言った。
「そう、ギチギチのガチガチで行くのは良くない、世の中、かなり曖昧に出来ているのだぞポロロン」
スカイは言った。
「確かに、やる気が無いよな。面倒な電話なんか後回しにして、ゆっくりと休みでも取ろうや」
ポロロンがスカイに手を出した。
「スカイ、マグギャラン。私がアンに携帯電話を掛けます携帯電話を貸して下さい」
スカイは言った。
「ほらよ」
スカイはポロロンに、ウィッキィド・ゴーストの携帯電話を渡した。
ポロロンは生真面目にも直ぐに携帯電話を掛け始めた。
ウォッカがフラフラしながら言った。
「ういっ、何か、酔いのせいか、巨大な岩がゴロゴロと転がっているのが見えるぞ」
ビッグ・ストーン村と書かれた木製の看板が見えた。
スカイ達は囲いで囲まれた扉が付いていない木製の門のような物を潜った。
スカイは言った。
「どこだ、村長は」
マグギャランは言った。
「木の門に鐘が付いて居るではないか、これを鳴らすのではないかね」
そして、マグギャランが紐を引っ張って鐘を鳴らし始めた。
すると、一番大きい家の扉が開いた。
そして人が出てきてスカイ達に近づいてきた。
頭の天辺が禿げた、がに股で歩く痩せた
赤ら顔の中年の男がニコニコ笑いながら手を振ってやって来た。
村長らしい男は言った。
「私がビッグ・ストーン村の村長のダンダースです。皆さん、お待ちしていました」
アンの言っていたダンダースは、この男で間違いは無かった。
スカイは言った。
「いやあ、俺達は、今日は、この村で泊まる事に決まって居るんだけど」
村長のダンダースは言った。
「はい、それはヘイコックさんから携帯電話に掛かってきて知っています。宿泊の用意は家内と娘達によって出来ています」
マグギャランは言った。
「まあ、取りあえず、明日の為に英気を養って休もうではないか」
村長のダンダースは言った。
「いやあ、どうなるんでしょうかね。ミュータント問題が急に発生して、私達は、困っているんですよ。このビッグ・ストーン村も避難勧告が出ていて、あなた達を迎える私の一家以外は全員避難して居るんです」
ブランデーが酒を飲みながら言った。
「あひゃあひゃ、酒は、あるかい。あたしゃブランデーしか飲まないんだ」
村長のダンダースは言った。
「ええ?ブランデーは、うちには在りませんよ。ワインなら沢山在りますが」
だが、ワインの様なアルコール度数が低い酒では不満らしく、酔いどれ決死隊の連中は口々に不満を漏らしていた。
こんなヤツラを連れて、どうやってミュータント達で溢れかえっているデタトンまで偵察しろと言うのだ。
スカイは内心かなり嫌になっていた。最初から嫌ではあったが。
レニーは、荷馬車に揺られていた。ローリング・ヒル村に向かっている事は判っていたが。もう事態は取り返しの付かない所まで来てしまったのだ。
ピココとミスター・ジェイは話し合っていた。
ミスター・ジェイは言った。
「私の妹と同じだ、私の妹もグリフォン流剣術を習っていたんだ。そして私もグリフォン流を使う」
ピココは言った。
「ボクは、堅守を誇るグリフォン流が一番良いと思ったのです」
ピココは、今まで見せたことのない、なんか照れたような顔をしてミスター・ジェイと喋っていた。
ミスター・ジェイは言った。
「私も、そうだ。攻めずに守る。それがグリフォン流だ。やはり、血は争えないものだな」
ミスター・ジェイはサングラスを掛けているので目元は判らなかったが笑顔でピココと話していた。
やはり親戚同士で積もる話しも、あるのだろうが、これから確実に死ぬと判っている偵察行が待っているのだ。楽しそうに話している、この二人がレニーには嫌で嫌で、しょうがなかった。
翌日、スカイ達三人とポロロンを加えた四人、更に酔いどれ決死隊の五人は、デタトンを目指して、偵察を開始した。そして森に覆われた小山を何個か超えた先で道を塞ぐ巨大な怪物と遭遇した。
マグギャランは言った。
「ランダム・エンカウンターだな」
酔いどれ戦士ウオッカは言った。
「うおりゃあああああああ!」
酔いどれ戦士ウォッカは首に、ぶら下げた酒瓶を飲んだ後。雄叫びを上げた。
酔いどれ戦士ウオッカは言った。
「うげっぷ」
酔いどれ戦士ウオッカは、げっぷを吐くと両手持ちの大剣を大上段に構えて、5メートルぐらいの上背がある巨大な石の怪物に突進していった。
スカイは叫んだ。
「あっ!バカ!前に出るなよ!」
酔いどれ戦士ウオッカは言った。
「うおりゃあああああああ!」
だが、酔いどれ戦士ウォッカは突撃していった。
酔いどれ女魔法使いのブランデーは言った。 「あひゃひゃひゃひゃ!いけぇ!ウォッカ!やっちまぇ!」
酔いどれ女魔法使いのブランデーが酒の入った器を、あおっていた。
スカイは言った。
作品名:戒厳令都市デタトンの恐怖 作家名:針屋忠道