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戒厳令都市デタトンの恐怖

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「まあ、森人達は、独自の精神的に高尚な文化とやらを築いているらしいから、捕まったギル・ヘイコック達が拷問に掛けられるような事は無いから大丈夫だ」
 スカイは言った。
「だが、森人は寿命が長いから刑期が長いんだよな」
マグギャランは言った。
「うむ、確か、俺達が証人になった裁判で、一千年の懲役刑が決まったのだからな」
アンは言った。
 「ううっ、兄が一千年の懲役刑に、かけられた!」
 アンは口を押さえて背中を丸めて、よろけて泣き出した。
 スカイは言った。
「おいマグギャラン、ハッキリ言っちゃ不味いんじゃねぇのか」
スカイは泣き出したアンを見て多少の罪悪感を覚えてマグギャランの方を見た。
 マグギャランは言った。
 「うむ。だが、俺達の知る限りでは、情操教育で捕まったミドルン王国のスパイ達は更生を図るらしいから。上手く行けば改心したと見なされて釈放されるかもしれない」
ポロロンは言った。
「マグギャラン、スカイ。あなた達は無神経にも程があります、この人の兄上は、あなた達のせいで一千年の懲役に掛けられた」
スカイは言った。
 「いやあ、ギル・ヘイコックは悪い事やっていたんだよ」
 マグギャランは頷いて言った。
 「そうだ。森人達の文化を破壊して、おかしな薬とかを使った、いかがわしい文化を密かに森人達の間に普及させようとしていたのだ。我々は、それを白日の下に暴き出したのだ。それは、紛れもなく正義の行いであった」
コロンも頷いていた。
 ポロロンは言った。
「情報組織とは一体何なのですか。話を聞いていると一杯出てきますが。私は聞いたことは在りませんし、どのような物か皆目見当がつきません」
 マグギャランは言った。
 「まさかスパイも知らないのか」
 ポロロンは言った。
「それは知っています。悪い人です」
 マグギャランは言った。
「それならば判るだろう。このアン・ヘイコックと、その兄のギル・ヘイコックはミドルン王国のスパイ組織ウィッキィド・ゴーストのスパイなのだ」
 ポロロンは言った。
 「アン。あなたは嘘を付いたり、泥棒をしたりと悪い事をしているのですか」
 アンは言った。
「祖国のミドルン王国の、ためであれば、私は、どんな事でもします」
 ポロロンは言った。
「悪いことは悪いことなのでは、ないのですか」
 アンは言った。
 「いいえ、国家の為に奉仕することは臣民の務めです。善悪も国家のためなら、関係はありません」
 ポロロンは言った。
 「それは、立派な心がけとは思いますが、やはり悪いことは、悪いことなのでは、ないのですか」
 アンは言った。
「国家は、善悪を超越した存在なのです。それなのに、このゴロツキ(ローグ)共ときたら、端金で国土を売って、いけしゃあしゃあとして、何食わない顔でミドルン王国と永久の森の歴史認識の違いとか言い始めて。ミドルンを愛する気持ちの欠片もない。非国民の中の非国民。クズの中のクズ。大バカ者の売国奴の悪党達、×××の○○○の△△…」
アンは言いたい放題言い始めた。
 終いには伏せ字にしなければ、ならない事まで言い始めた。
マグギャランはムッとした顔をした。
 マグギャランは言った。
 「そこまで言われるほど、俺達は不味いことしてはいないぞ」
 スカイは言った。
「そうだよ。仕方がねぇだろ。俺達はデタトンへ偵察する仕事をするんだから。ミドルン王国のために働くんだから問題は、ねぇだろ」
 マグギャランは小声でスカイの腕を小突きながら言った。
「おい、スカイ。逃げ出す算段では無かったのか」
スカイは言ってから、しまったと思った。
アンがニヤリと笑った。
アンが芝居がかった言い回しで言った。
 「国のために働く。あなた達、ゴロツキ(ローグ)にも、ミドルン王国の臣民としての矜持が、欠片なりとも残っていたのですか」
しまったと、スカイは思った。マグギャランも不味そうな顔をしている。
 アンがスカイ達を見ながらニヤニヤと笑った。
 アンは言った。
 「ゴロツキ(ローグ)の世界では口約束は書面の契約書と同じ力を持っているのでしょ?」
 確かにアンの言うとおりだった。この冒険屋業界は口約束は書面での契約と同じだった。どうやら、アンに、はめられてしまったようだ。
 不味いな。
マグギャランは言った。
 「言質を取られてしまったな」
 スカイは言った。
 「どうする」
マグギャランは言った。
 「まあ取りあえず32組もの冒険屋のパーティが偵察に参加するのだ、俺達は適当に流していくに限るな」
アンは言った。
 「いいえ、これからキリキリと働いて貰います」
 アンが勝ち誇った顔をしていた。
ポロロンは言った。
 「わたくしは、最初から、そのつもりです」
コロンは頭を抱えて首を振っていた。
アンが言った。
「それではバインダーを貸して下さい。スカイ・ザ・ワイドハート」
 スカイは言った。
 「ああ」
 スカイはバインダーをアンに渡した。アンはバインダーを開いた。酔いどれ決死隊は酒を飲んでいたが、アンはスカイ達の方を向いて説明を開始した。
 アンは言った。
「まず概要を説明します。W&M事務所と酔いどれ決死隊は、荷馬車に乗って、このフラワー・ビレッジから幸せ橋を通ってデタトンの北北東に出ます」
 スカイは言った。
「ああ、それは、俺は、バインダーの中身を見て、もう見て知っているよ」
 アンは言った。
「詳しい偵察の報告は知らないでしょう」
スカイは言った。
 「どういうことだよ」
 アンは言った。
「現在、遠距離から双眼鏡での偵察の結果、デタトン市から平均して約半径十四キロ以内の円上の外にミュータント達は出てきていないという事が判明しています。ですが、日を追ってミュータントの活動範囲は拡大しているのです。大体一日に数百メートル近くの半径の拡大が起きています。このまま放って置いてはブードー子爵領のみならずミドルン王国全土がミュータント達の活動範囲になってしまいます」
 マグギャランは言った。
 「なるほど、それは不味いのだな」
 アンは言った。
「当然です。ミドルン王国がミュータントだらけになってしまっては国として成り立ちません。そこで、あなた達が調べるのは偵察ルートに沿ってデタトンまでの道に棲息するミュータント達です。バインダーの後の方を見て下さい。ミュータントを観察してチェックするためのミュータント観察シートが五十枚付随しています」
そしてバインダーの後を開いた。
 スカイは言った。
 「あ?これは、冒険屋組合が配っている新種のモンスターを発見したときに記入して提出するモンスター観察シートだ」
 スカイは見覚えの在る紙を見た。
 マグギャランは言った。
「だが、名前はミュータント観察シートと、なって居るではないか」
アンは言った。