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戒厳令都市デタトンの恐怖

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スカイは肩を指で叩かれた。
 スカイは振り返った。
 三つ編みの女がスカイ達を見ていた。
 三つ編み女は言った。
 「あなた達は、永久(とこしえ)の森に行きましたね」
 眼鏡掛けてミドルン王国の赤と緑の軍服を着た女は何か妙に冷たい声だった。
スカイは言った。
 「ああ、そうだよ。なあ」
 スカイはマグギャランに目で合図した。
 奴も怪訝に思ったようだ。
 マグギャランは言った。
 「ああ、そうだ。何で知っている」
三つ編み女は言った。
 「あなた達が。森人達のミドルン王国への帰属運動を妨害したことは局の中では有名なのですよ」
 スカイは言った。
「何で有名なんだ」
 スカイは怪訝に思った。
森人達の住んでいる永久の森で、俺達は…
…。
 マグギャランは言った。
 「スカイ、この女の着ている軍服の左袖に付いているワッペンを見て見ろ」
 スカイは女の軍服の左袖を目を凝らして見てみた。
 短剣を持った幽霊が描かれているワッペンが付いていた。
 これは確か?
 スカイは数週間前に見た記憶があった。
スカイは思い出して言った。
 「ウィッキィド・ゴーストだ」
マグギャランは言った。
 「そうだ。スカイ、この女はミドルン王国の情報組織ウィッキィド・ゴーストの一員だ」
三つ編み女は言った。
 「ようやく、気が付きましたか。私はですね。あなたを後から腰の短剣で刺したい、ぐらいに、怒りを貯めていたんですよスカイ・ザ・ワイドハートさん」
さんと言うところを、やたらと強調して言った。
 スカイは衝撃から立ち直って言った。
「何で、俺が見ず知らずの、テメェに刺されなくちゃいけねぇんだよ」
三つ編み女は言った。
 「判らないのですか。フラクター選帝国と永久の森の森人達は相互防衛を謳った軍事同盟を結んで居るんです。どちらかが、軍事的な攻撃を受けた場合同盟国として参戦するという内容の同盟です。ミドルン王国の真ん中に、不自然に森人達の住む国に近い状態の不自然な場所があるのです。森人達の住む永久の森はミドルン王国から見て、ミドルン王国の一部です」
 ポロロンは言った。
「どういうことなのですかマグギャラン、スカイ」
 スカイは言った。
「話すと長くなるが、俺達三人は森人達が仲違いをしているから調停を手伝うように森人のフラー・ソイラスって奴に頼まれて、森人の住む永久の森に仕事を、しに行ったんだよ。つい二、三週間前の話だ」
 ポロロンは言った。
 「それでは、なぜ、あなたは、この者達に恨みを抱くのです。この者達は悪い事をしたわけではありません。むしろ良いことをしたのではないのですか」
 三つ編み女は言った。
 「あなたは、何も判っていませんね。回り全部がミドルン王国の国土に囲まれた土地が、ミドルン王国の物で無いなどと言う事は在っては、ならない事です」
 マグギャランは言った。
「事は、フラクター選帝国が永久の森を独立国と承認しているから、ややこしくなっているのだ。歴史認識の問題では、ないのかね」
マグギャランは物知り顔で頷いた。
 三つ編み女は言った。
「聞いたような口を利かないで下さい。あなた達は、何にも判っていませんね。一体、どのぐらいの年月と人とカネが費やされて、森人達の間にミドルン王国への帰属運動の機運を高めていたのか、について」
スカイは言った。
「そりゃ、最近だろ、テレビで、永久の森はミドルン王国の領土です、とかいう、真面目くさった、コマーシャルが流れているのは。俺が子供の頃は、テレビなんか存在して居なかったからな」
三つ編み女は言った。
「幾らの金額で仕事を引き受けたのかと調べてみたら、あなた達が一人あたり、たかが二十ネッカー(二百万円)の報酬で国策を妨害したと知ったとき、局の職員達が、どれ程怒ったか判りますか」
 スカイは言った。
「いやあ、二十ネッカー(二百万円)は大金だよ」
そう。確かに大金だった。
 本当は、森人の王様達から、宝物を別口で貰ってオークションで売って更に報酬を貰っていたのだが。それは言わないでおいた。
 マグギャランは頷きながら言った。
 「確かに、一般庶民である我々三人の冒険屋にとっては、二十ネッカー(二百万円)は大金なのだ」
 三つ編み女は言った。
「国土を売ったんですよ。あなた達は、たかが総額六十ネッカー(六百万円)の、はした金で。平均的な伯爵領3つ分の広大な土地を。事態の重要さを判っているのですか」
 スカイは言った。
「いや、それは判らないよ。ただフラーの奴は仲違いの原因を言わなかったし。俺達が、仕事を開始してから、最後の方でミドルン王国が絡んでいる事を知ったんだ」
 マグギャランは言った。
「ああ、そうだ。俺達は、何も知らずに、森人達の住む永久の森へ仕事に出掛けていったんだ。言葉が通じないから通訳を雇ったりして意外と苦労したのだぞ。まあ美女は居たが性格が悪かったのだが。それが判ったのも仕事の最後の方だったのだが」
 三つ編み女は言った。
「総額、たかが六十ネッカー(六百万円)で、国策を妨害した事の意味が判って居るんですか」
スカイは言った。
 「そりゃ、判る筈ねぇだろ。繰り返し言うが俺達は、何も知らずに、取りあえず仕事受けて苦労して色々調べていたらミドルン王国の連中が最後の方に出てきたんだよ」
三つ編み女は言った。
「途中で、止めるように忠告が入ったはずです」
 スカイは言った。
 「ああ、そりゃ確かに、そうだが。この仕事は脅しが入ったぐらいで一々止めていたら仕事に、ならないんだよ」
この冒険屋の仕事は、些か不味い仕事であることも事実だった。
 三つ編みの女は言った。
「このゴロツキ(ローグ)共!普通は、忠告が入れば止めるんですよ!」
マグギャランは言った。
 「いや、あれは脅しだよなスカイ、コロン」
スカイは言った。
 「ああ、そうだ。どう考えても脅しだったよ」
コロンも頷いていた。
 三つ編みの女は言った。
「ミドルン王国人が、やってはいけないことだと何故理解出来ないのですか」
マグギャランは言った。
 「ところで、お前の名前は何というのだ」
 三つ編みの女は言った。
「私の名前はアン・ヘイコックです」
 スカイは言った。
 「ああ?ヘイコック?」
 スカイはマグギャランとコロンと顔を見合わせた。
スカイは名前を思いだした。だが、それは、あまり良い奴の名前ではなかった。マグギャランとコロンも、そうなのだろう。渋面を浮かべて居た。
アンは言った。
 「私の兄が森人達に捕まって居るんですよ。ギルバート・ヘイコック、またはギル・ヘイコックの名前に聞き覚えはありませんか」
スカイは言った。
 「ああ、やっぱり、あのギル・ヘイコックか」
マグギャランも、コロンも困ったような顔をして溜息を付いた。スカイも一緒に溜息を付いた。
 ギル・ヘイコックが悪い奴だった事は間違いは無かったが。酷い悪党だったと言うのは親族の手前、気が引けた。
 マグギャランは言った。