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戒厳令都市デタトンの恐怖

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 モルガがウッゾの首が在った場所から吹き出した血を全身に浴びて叫んだ。
「ウッゾ!」
だが、サイ男がモルガに向かって突進してきた。モルガは剣でサイ男の鋭く尖った角を使った突進を受け止めた。だが、サイ男の突進してきた怪力でモルガは吹き飛ばされてロマシク・ボンドネードが逃げ出そうと足を掛けている窓枠の横の壁にブチ当たった。
 死んだか?
 ロマシク・ボンドネードは、よじ登った窓枠から外へ飛び降りた。
着地し、走りながら大きく息を吸った。
そして…
 ロマシク・ボンドネードは叫んだ。
 「助けてぇ!みんな大変だ!助けてぇ!出たぞ!バケモノが出たぞ!早く兵士達を呼んでぇ!助けてぇ!助けてぇ!」
 ロマシク・ボンドネードは悲鳴と共に大声を出して、恥も外聞もなく叫んでフラワービレッジに集結している軍隊の兵士達を集めようとした。
モルガが横から猛然と、右手に剣を持って左手にハムの塊が突き刺さったサバイバルナイフを持って走ってきた。
 モルガは言った。 
「伯父貴!アタイを置いて逃げるんじゃねぇ!」
モルガは頭の後を押さえている。血が出ているのかもしれなかったが、ウッゾの血を浴びたせいで何処を怪我したのかは判らなかった。
ロマシク・ボンドネードは言った。
 「いや、死んだと思ったんだ」
 モルガが言った。
 「勝手に殺すんじゃねぇ!ボンドネード・ファミリーは一族の者を見殺しに、しちゃいけないんだろうが!」
ロマシク・ボンドネードは言った。
「いや、あの状況では死んだと思っても仕方が無いだろう。家訓の違反には当たらんよ」
 モルガが言った。
「あの怪物の体当たりで吹き飛ばされて壁にブチ当たった頭が痛いんだよ」
ロマシクボンドネードは言った。
 「まあ、仕方がない。ほら、お前も叫べ。モルガ。兵士達を集めるんだ」
 ロマシク・ボンドネードはモルガに言った後で叫びはじめた。
 「助けてぇ!バケモノが出たぞ!兵士達よ武器を持って集まれ!バケモノ達をやっつけろ!助けてぇ!ボクを助けてぇ!」
モルガは叫んだ。
 「情けねぇな!そんな事、みっともなくてできるかよ!」
 ロマシクボンドネードは言った。
 「情けなくてもいい。恥も外聞も関係ない。今は、とにかく、兵士達を集める事が目的だ」
ロマシク・ボンドネードは叫んだ。
 「助けてぇ!バケモノが出たぞ!」
村の家々の扉が開いて、押っ取り刀のミドルン王国の兵士達が飛び出してきた。
そして……

スカイ達は、パレッアー山脈の山道を下っていた。
 マグギャランは頷きながら朗らかな笑顔で言った。
 「何というか、良い物だなスカイ。歴史を良い方向に変えるという事は。俺達はイジア国とアッパカパー伯爵家の長年に渡る怨恨の争いに終止符を打ったのだ」
スカイは言った。
 「今回は、それなりに難儀も在ったが負けっ放しで。カネだけ手に入って情けない仕事だったな。負け続けてもカネは上手いこと立ち回って手に入って、当初の予定より多く手に入った。二百五十ネッカーと二十五ネッカーの合わせて二百七十五ネッカー(二千七百五十万円)だ。それにしても、あのムササビの野郎は、どうにかしないと駄目だよな、調子扱きすぎだったしよ。ジェラールのオヤジやアッパカパーには説教されるし。本当に情けない仕事だったな」
 スカイはフラクター選帝国のニンジャ、ムササビ相手にマグギャランと二人が掛かりで切りかかっていって完敗していた。そしてミドルン人なのにアッパカパー伯爵に雇われたカーマイン団のジェラール・ジェラルドと戦って負けていた。酷く情けない状況では在ったがポロロン・アッパカパーをイジア国に連れていった結果、金だけは手に入ったのだ。
マグギャランは満足げな顔で頷いて言った。
「俺は師匠を得たのだぞスカイ。今まで高原状態に居て、伸び悩んでいた、俺のユニコーン流剣術は、ユニコーン流でコモンの大武術大会を制したソークスによって開花させられて新たなる次元へと進んでいったのだ。それに、絶世の美女カーマイン女卿と知り合いになれたのだ、今回の仕事は非常に実りの多い仕事であった」
 スカイは言った。 
「取りあえず、俺達のホームタウンのニーコ街へ向けて出発進行だ」
マグギャランは言った。
「おう、そうだ、山の空気も美味いし、ここはエイエイオーをやるぞスカイ、コロン」
スカイは言った。
「まあ、良いか、いっちょやるか。コロン姉ちゃんエイエイオー判るか?」
 スカイの実の姉であり魔法使い見習いのコロンは世間からずれていて常識の一部が欠落しているのだ。
 案の定コロンは首を、かしげて困った顔をしていた。
マグギャランは言った。
 「取りあえず、俺達の、やるのを見て、真似をするのだコロン。それじゃ行くぞ」
コロンは大きく頷いた。
スカイ達三人は山に向かって腕を振り上げてエイエイオーをした。
 「エイエイオー!」
木霊が帰ってきた。
辺りでは鳥がピーチク、パーチク鳴いていた。
雨も上がったし。空には虹が掛かっていて。なかなかの絶景だった。
 マグギャランが言った。
「それじゃ、道中の暇つぶしに、歌のメドレーをやるぞスカイ」
 スカイは言った。
 「またかよ」
 マグギャランは関所で手に入れた、ロード・イジアの顔が大きく印刷された、イジア国のパンフレットを取りだして言った。
「そういうな。イジア国の国歌の歌詞カードを手に入れたから。俺は、これを歌うぞ」
 マグギャランには、色々な、みやげ物やパンフレットを集める癖が在るのだ。今回も帰り道にイジア国の国営土産物屋で三角形のペナントやらマグカップ、民芸品などを一通り買ってロードイジアの顔の描かれた紙袋に入れて両手で持って背中の背嚢にも入れて持っていた。
 そしてスカイ達は、パレッアー山脈の山道を下っていった。

 ポロロンは小イジアと話していた。
 だが、ポロロンの考えていた内容とは大きく異なるモノだった。小イジアは、アッパカパー伯爵家と、イジア国の三百五十年以上続く怨恨の歴史を終わらせる事には興味が無かったのだ。
 小イジアは言った。
「ああ、僕は、イジア国とアッパカパー伯爵家の争いの収拾になんか興味ないよ」
ポロロンは言った。
「どういうことです、それでは何故、わたくしに求婚したのです」
小イジアは言った。
 「単純に君みたいな顔が好みだからだよ。君の写真を雑誌で見たとき、簡単に言えば胸が、ときめいて、絶息しそうなぐらいに好きだ!と思って叫んだんだ。そして、その思いは今でも変わらないよ。君を見ているだけで、とっても幸せになれるんだ。やっぱり実物の方が一千万倍良いね。どの角度から見ても良いよ」
小イジアはポロロンの回りをジロジロ見ながら歩き回って言った。
 ポロロンは言った。
「あなたには、アッパカパー伯爵家とイジア国との間の長年に渡る怨恨の歴史を止めて相互理解と、明るい未来の建設に向かおうという心構えは無いのですか。あなたは次代のロード・イジアなのですよ」
小イジアは身悶えした。
 小イジアは言った。