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戒厳令都市デタトンの恐怖

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 「止めてくれよ、チクらないでくれ。オヤジは直ぐに、お仕置きでボンドネード屋敷の木に、くくりつけるんだ。アタイはもう二十越した大人なのに。ガキの頃と全然変わっちゃいないんだよ」
ロマシク・ボンドネードは言った。
「いや、今、知らせておく」
 ロマシク・ボンドネードは黒い、携帯電話を取りだした。
 モルガは言った。
 「止めてくれよ、金出すから、止めてくれ。頼むよ」
 だがロマシク・ボンドネードは携帯電話を掛けた。
ロマシク・ボンドネードの弟のリートが出た。
 リート・ボンドネードが携帯電話の向こうで言った。
 「リート・ボンドネードだ」
ロマシク・ボンドネードは携帯電話に言った。
 「ロマシク・ボンドネードだ。お前の娘のモルガが、賭やって、すった」
 リート・ボンドネードは携帯電話の向こうで言った。
 「判った」
ロマシク・ボンドネードは携帯電話に言った。
「それじゃ切る」
リート・ボンドネードは携帯電話の向こうで言った。
 「ああ」
 ロマシク・ボンドネードは携帯を切ってポケットに入れた。
 モルガは言った。
「畜生、コイツラのせいでカネを、すっただけじゃなく、また、アタイはオヤジに木に縛り付けられるのかよ。畜生、許せネェ。おい伯父貴、コイツラの組む奴等を決めて良いか?出来るだけ酷い奴等と組ませてやる」
 別段、ロマシク・ボンドネードが断る理由も無かった。
 ロマシク・ボンドネードは言った。
 「構わない」
暫くの間、ロマシク・ボンドネードとモルガは組み合わせを作っていった。
ロマシク・ボンドネードは言った。
「…鋼鉄少女隊か。仕事の達成率は現在の所百%だが。受けた仕事の難易度の記録を見る限り、このパーティは駆け出しの初心者達だ。コーラーのピココ・グリップは、グリフォン流切り紙の騎士見習い。レニー・ハンドリングは「白き波濤」学派の見習い魔法使い。留衣・ミルカワは巫女でサイ・ミットはスカウト。どうやら自発的に来たらしいが。このメンバーでは的のパーティに入れた方が良いな」
ロマシク・ボンドネードは履歴書を見ながら、一緒に組む冒険屋のパーティを考えていた。
臨時作戦室の扉が開いた。
軽薄さという言葉そのままの声が聞こえてきた。
 「アハァ!ヘイ!ヤァ!」
最低最悪のバカ者が入ってきたのだ。
 プロテインとウエイト・トレーニングで鍛え上げられた雄大な体格をした金色の海パン一枚の二十代前半の男だ。
 ロマシク・ボンドネードは甥のカッシー・ボンドネードに言った。
 「何しに来た、今は、偵察隊の人選を、やっているんだ」
 カッシー・ボンドネードは、ロマシク・ボンドネードの兄のルーサー・ボンドネードの長男だった。
 カッシーは言った。
 「アハッ!叔父さん、このオレ様が次のボンドネードの当主だぜ、そんな無下に扱っていいのかよ?ウーン、アッ!チュパッ!」
 カッシーは右腕を曲げて出来た力こぶに何度もキスをしていた。
この、どうしょうもない、筋肉バカのナルシストの穀潰しが、兄のルーサー・ボンドネードの所の長男だった。長男のカッシーが生まれた後、ルーサーの所には女ばかり生まれて男子が生まれなかった。だから、ルーサーの弟のロマシク・ボンドーネードと、リート・ボンドネードは真面目にルーサーの手からボンドネードの当主の座を奪おうと真剣に画策していた。カッシーが当主になったらボンドネード・ファミリーが崩壊する事は間違いなかった。
 モルガが言った。
「何しに来たんだよ」
 カッシーは言った。
 「アハッハハハ!モルガ、相変わらず、鎧つけてダサイ、カッコしちゃって!オレ様みたいに、極上の筋肉の服を纏わなきゃ、今の時代乗り遅れちゃうよ?ハハッ!今日もオレ様サイコー!」
 カッシーは身体を、ひねって全身の筋肉を波うたせて居た。
モルガは言った。
「うるせぇな、戦士は男でも女でも鎧を付けるってボンドネードの家訓で決まって居るんだよ」
 ロマシク・ボンドネードは言った。
「おい、カッシー。まだ、モルガの質問に答えていないぞ。何しに、ここに来た」
 カッシーは言った。
 「ハハン?それは、オレ様の美しい肉体を拝ませに来たんだぜい。ウーン、今日のオレ様は一段とハンサムぅ。髪型が決まってチョー、カッコイイ」
カッシーは臨時作戦室に掛けられている、鏡を見て自分の身体や顔を撫で回していた。
ロマシク・ボンドネードは冷たい語調で言った。
「出ていけ」
カッシーは笑いながら言った。
「アハッ?何、オレ様の肉体に嫉妬した?オレ様が格好良すぎて同じ男として妬ける?アハハハッ。叔父さん、もうオヤジって呼ばれる歳なのにヤングなジェネレーションのオレ様に張り合ってもムダァ!アハハッ!」
 ロマシク・ボンドネードは言った。
「出て行け」
 ロマシク・ボンドネードは右手に雷撃球の弱い奴を作った。
カッシーは言った。
「うわっ、アハッ。叔父さん、また暴力しようと、しちゃってぇ。うーんコワイ。アハハハッ!」
 カッシーは両手の人差し指でロマシク・ボンドネードを指さしながら笑っていた。
 ロマシク・ボンドネードは言った。
 「お仕置きだ」
 ロマシク・ボンドネードは雷撃球を少し解放した。カッシーの尻、目がけて電光が走った。
 カッシーは飛び跳ねながら叫んだ。
 「アウチッ!」
 カッシーが叫んだ。
 「オレ様の美しいケツが!」
ロマシク・ボンドネードは更に雷撃球を解放した。三回連続して解放した。
 カッシーの尻に三度電光が走った。そのたびにカッシーは跳ね飛んだ。
 カッシーは言った。
 「アハハン!そんなに、オレ様の美しい尻に嫉妬するなよ叔父さん。アハッ!もしかしてゲイ?」
 カッシーは扉から逃げ出した。
 ロマシク・ボンドネードは言った。
 「いい加減にしろ。仕事の邪魔をするな」
 カッシーは扉の外から顔だけ出してヘラヘラ笑っていた。 
 「それじゃ、オレ様は、この美しいボディを、もっと美しくするために、トレーニングしてくるよアハッ!更に美しくなったオレ様に期待して待っていて!アハァッ!」
 カッシーは、そう言い残すと扉を閉めて出ていった。
 モルガは言った。
 「何で、あんな奴が次のボンドネードの当主に決まっているんだよ。アタイの方がボンドネードの当主に向いていら」
 ロマシク・ボンドネードは言った。
 「ボンドネード・ファミリーは、色々な種族の血などが混じっているから、優秀な人間は優秀で、ダメな人間はダメなんだ。ウチのイオラも頭が悪いから魔法使いにも医者にも、なれないことが早くから判った。仕方がない」
ロマシク・ボンドネードは自分の子供達の中で一番頭のデキの悪いイオラの将来が心配だった。妹のコーネリーの所の子供達は運が良く、全員が頭が良くて魔法使いと医者になれたのだが…。
モルガは言った。
「アタイはオヤジみたいな戦士に、なりたいから戦士になったんだ。子供の頃から、魔法使いや、医者なんか願い下げだね」
 ロマシク・ボンドネードは言った。
「戦士は若いうちは良いが歳を取ったら何も残らないぞ」
 モルガは言った。