死闘のツルッペリン街道
いつの間にか目を覚ましていたコロンが巨大な絆創膏をリュックサックから取りだしてスカイに見せた。
マグギャランは言った。
「それは確かに効くぞ」
スカイはコロンが錬金術で作った巨大絆創膏を貼って傷を塞いだ。
スカイ達が乗ったフラクター選帝国製のエア・バスは、街道警邏隊によって護衛されてヒマージ王国のウドルの街へ向かった。だが、道中の間、騎馬の街道警邏隊の男の隊員達が、ずっとルシルスを見ていた。そして女の隊員達が怒っていた。
スカイは言った。
「お、フラクター選帝国の水色と青のエアカーが走って居るぞ」
丸いガラスのキャノピーの中に人間とロボットが乗っている。
マグギャランは言った。
「あれはフラクター帝国銀行のエアカーだろう。現金輸送車だ。フラクター帝国銀行はコモン中に預金者がいるからな」
スカイは言った。
「取りあえず、ウドルの街に着いたら、フラクター帝国銀行からマイリース村の教会に送金しようぜ。トマス神父達が行っているマイリース村の土地改良事業が上手く行くからな」
マグギャランは言った。
「あのマイリース村は、領主のジャグ・ベルマと息子のサグム・ベルマ親子が支配していることが間違いだな。ベルマ親子が、俺達に罪をなすりつけて、裁判を起こして借金漬けにしたが。俺達を有罪にしたニーコ街の裁判官、ドルマも絶対グルだ」
スカイとマグギャランは、マイリース村に出没する、マンティコアを退治する仕事を冒険屋組合を通してマイリース村を治めるベルマ親子達から依頼された。
そしてスカイとマグギャランはマンティコアを捕まえたのだが。ついでに、マンティコアを操っていた。モンスター使いのスラッシャー、ガンガも捕まえた。そしてガンガは、スカイ達の前で、ベルマ親子に雇われたという奇妙な話をし始めた。
そして、その夜、マイリース村が土地改良に反対するベルマ親子を押し切って買った、六万ネッカー(60億円)の錬金術で作られた化学肥料が詰まったサイロが燃え上がりマイリース村の村民達が、貧困から脱出するために買った。化学肥料が全て燃えてしまったのだ。
スカイとマグギャランはガンガを、しょっ引いて行ったが。ガンガのヤツは、スカイ達が、サイロの肥料を燃やしたと言い放った。そして裁判が行われることになった。
そしてスカイ達に、いつも、口やかましい事を言って農作業をしているマイリース村の青年修道士ピートが事態の真相を語った。
マイリース村の、領主である、ベルマ親子は、教会のトマス神父達がマイリース村の村民達と一緒に行っている土地改良事業を妨害しようとしているのだ。マイリース村の農地は、決して恵まれた土地ではなかった。むしろ痩せている土地と言っても良かった。だが、それでも貧困から抜け出すには、六万ネッカー(60億円)の肥料で土地を改良する必要が在ったのだ。だが問題は領主のベルマ親子達に在った。ベルマ親子達は、領地の農民達が裕福になることを望んでいなかったからだ。 ベルマ親子は領主として、昔と同じ様な権力を握り続けようと考えていた。カーマイン大公国のように、クーデターが起きて議会が出来て領民達の力が増すことを恐れていたのだ。
そして結局、裁判官のドルマが移動裁判所で、やって来て、マイリース村のベルマ親子達と村民達が見ている前で裁判の判決を下し、スラッシャーのガンガはマンティコアのロッピロ共々無罪放免となり、スカイとマグギャランは、サイロを燃やした罪を被されて有罪となった。
そしてスカイとマグギャランには、期限付きで六万ネッカー(60億円)の肥料代を支払わなければならないという判決が裁判官ドルマによって下された。
もし期限までに六万ネッカー(60億円)が支払われなければ有罪となり、懲役十五年の実刑判決が行われる事となった。
トマス神父とピート、村民達は、スカイとマグギャランが肥料代を払えないという事は判っていた。だが、スカイは、国外退去を暗に示唆している裁判官ドルマの判決と、ベルマ親子が許せなかったため、トマス神父に、金を返すと宣言した。
スカイは言った。
「あの、ピートのヤツも、俺達が借金を返せるとは思っていなかっただろうな」
マグギャランは言った。
「確かに、総計六万ネッカー(60億円)の借金だ。一介の冒険屋二人組に返せる金額ではないな」
スカイは言った。
「だが、俺達はダンジョニアン男爵の迷宮競技の優勝賞金と、自分達に賭けた金で、九万ネッカー(90億円)と十八ネッカー(180万円)、十八万六十六ニゼ(9万33円)を手に入れた」
マグギャランは、トロフィーを抱えて眠っているコロンを見て言った。。
「冒険屋のルールで、三等分だ。コロンは、丁度三万ネッカー(30億円)を丸々手に入れるのか」
スカイは言った。
「何時も、こんなに金が儲かる事なんて無いことをコロンにも教えて、おいた方が良いな」
マグギャランは言った。
「ああ、そうだ。いきなり最初の冒険屋の仕事で、こんな大金が簡単に…まあ、ダンジョニアン男爵の迷宮競技は冒険屋の仕事じゃないのだが」
そしてフラクター選帝国製のエア・バスは、ウドルの街に、たどり着いた。
そしてフラクター選帝国製のエア・バスの停まる停留所が沢山ある、広場のロータリーに入って行った。馬車や騎馬の警邏隊、牛に引かれた牛車など様々な乗り物が在った。
スカイ達とバゲットとラバナ、ルシルスとラメゲは、フラクター選帝国製のエア・バスから降りた。
マグギャランは言った。
「ここが、ウドルの街か。来るときは、夜行のエアバスで来たから通り過ぎたな」
マグギャランはフラクター選帝国製のエア・バスから降りると、金貨の詰まった、リュックサックを下ろして大きく伸びをした。
コホンとバゲットは咳をした。
バゲットは言った。
「まあ、君達、このウドルの街には、私のバゲット商会の支店がある。そこの事務室を宿屋代わりに使って経費の削減を行おうではないか」
スカイは言った。
「銀行だよ。オレ達はフラクター帝国銀行に行くんだよ。トラップ・シティにはフラクター帝国銀行がないからウドルで自分達の口座に入金をしておく。いいな?マグギャラン、コロン姉ちゃん」
スカイはマグギャランとコロンに言った。
二人とも頷いた。
バゲットは言った。
「君達は我々バゲット商会に雇われて居るんだろう」
ラバナは言った。
「そうよ、あなた達は雇われているんでしょ」
スカイは言った。
「ふざけんなよバゲットとラバナ。オマエ等は敵が出ないとか言っておいて、今の今さっき「青ゾリ兄弟」の弟に腕を切りつけられたんだよ。アイツラは結構強いだろう。違約金を支払ってもらう事になるかもしれないな」
スカイは切られた自分の左腕を、ひっぱたいた。コロンの巨大絆創膏は性能が良く、スカイの切り傷は大分塞がっているようだった。
バゲットは真面目な顔で言った。
「報酬の中に含まれている危険手当で良いのではないかね」
スカイは言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道