死闘のツルッペリン街道
「いや、「赤唐辛子のガラシ」と「武器屋のバンダ」は竹刀と、凶悪武器を持っていただろう」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「なに、確かにそうか。それならば、アロハ・シャツの男女は、こちらへ来るように。素手の一般人を相手にしていた、君達三人は、あちらへ行くように」
男優アギド・モールズはスカイ・ザ・ワイドハートとマグギャランとコロナ・プロミネンスを居丈高な様子で、顎で促した。
男優アギド・モールズは言った。
「こちらに来るように」
女優ラーナ・マピルはバゲットとラバナを言った。
「さあ、あなた達二人は、こちらへ来るように。取り調べは別々に行う」
スカイ・ザ・ワイドハートは言った。
「なんだよ、ここまで来て面倒に巻き込まれたな」
マグギャランは言った。
「うむ、「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」に携帯電話で電話でもして、街道警邏隊に連絡を取って貰うか」
コロナ・プロミネンスは言った。
「……良く判らないの」
スカイ達三人とバゲットとラバナは良く判らないまま、別々に街道警邏隊達に連れて行かれそうになった。
ルシルスがジト目で口元を神官着の袖で隠して言った。
「皆さん、騙されてはダメですよ。その人達は、コロンさんに、お酒を売った男の人と、マグギャランさんを騙した女の人達ですよ」
スカイはアッサリと気がついた。
そうか、コイツ等は偽物の街道警邏隊か。
カナリス・モンドマーネーは内心舌打ちした。まさか、変装の名人であるモンドマーネー劇団の四人の変装を見抜かれるとは思わなかった。
女優メロア・ソペラは言った。
「なにを言っている。われわれは街道警邏隊であるぞ」
スカイ達はルシルスを見ていた。
ルシルスはジト目で口元を隠して言った。
「私の目は誤魔化されませんよ。前は厚化粧をしていましたけれど。同じ人ですよ。女の目を化粧で誤魔化せると、お思いですか?」
ラバナは言った。
「私は判らなかったよ」
コロンも頷いて言った。
「……私も判らなかった」
カナリス・モンドマーネーは演技を続けながら言った。
「何を言うのだ。我々は権力であるぞ。体制であるのだ。ここはヒマージ王国の権力の支配下にあるのだぞ。ええい、この女を引っ捕らえろ」
ルシルスは笑顔のまま黄色い声の悲鳴を上げて。
「いやーん、たすけてぇー!」
突然、周りに居た通行人の男達が、血走った目つきでカナリス・モンドマーネーを殴りつけた。
アッサリと、カナリス・モンドマーネーは鼻血を垂らして白目をむいてKOされた。
スカイは言った。
「弱いぞ、コイツ弱すぎるぞ」
マグギャランは言った。
「そうで在ったか。偽物だったのだな。こんなに弱い街道警邏隊の隊長が居るはずは無い」
ルシルスはジト目で口元を隠して頷きながら、残りの三人に言った。
「あなた達はウソをつく詐欺師ですね。私もウソを付くのが得意ですから。良く判ります」
ラメゲは言った。
「ルシルス様、身も蓋も無い事を言わないでください」
バゲットは言った。
「それじゃ、他の三人の街道警邏隊も偽物なのか」
ルシルスはジト目で口元を隠して言った。
「ええ、そうです。一人の男の方は、マグギャランさんを騙した女を追いかけていた一人です。そして、もう一人の女の方は、ラバナさんに同人誌を売ろうとした女です」
三人の偽物の街道警邏隊の隊員達は狼狽え始めた。
通行人達が、呼んだのか「懐かしのウタタ」
へ繋がる「百メートル鉄橋」を警備している街道警邏隊の隊員達がやって来た。
本物の街道警邏隊の隊長は言った。
「ニセ者の街道警邏隊がいるとの通報が在りました」
バゲットは言った。
「街道警邏隊よ。この四人の街道警邏隊の扮装をしている男女は偽物だ」
マグギャランを騙した女は敬礼して言った。
「我々は、街道警邏隊員である」
本物の街道警邏隊の隊長は言った。
「街道警邏隊を詐称すれば重犯罪で在る事を知らないはずは、ないだろう」
マグギャランを騙した女は言った。
「我々は本物の街道警邏隊である。この七人の男女は、暴走山賊団「闇の腕」と関わりがあるのである。つまり暴走山賊団「闇の腕」の残党なのである」
本物の街道警邏隊の隊長は言った。
「この七人について情報が街道警邏隊に来ている。暴走山賊団「闇の腕」を壊滅させたヒマージ王国の英雄、エルレア・メキア女将軍の戦勝に協力した七人だ。街道警邏隊は、この七人の通行を手助けするように伝令が来て居る」
マグギャランを騙した女は言った。
「この七人は別人である。エルレア・メキア女将軍の戦勝に協力した七人とは別人達である。それ故に我々は、この七人を捕縛しようとしているのである」
本物の街道警邏隊の隊長は言った。
「それでは、七人の方々よ名前を名乗ってくれ」
スカイは言った。
「俺の名前はスカイ・ザ・ワイドハート」
マグギャランは言った。
「騎士のマグギャラン」
コロンは言った。
「……コロナ・プロミネンス」
バゲットは言った。
「ブレッダー・バゲットだ」
ラバナは言った。
「そうよ、私はラバナ・バゲットよ」
ラメゲは言った。
「タビヲン王国の剣士ラメゲ・ボルコだ」
ルシルスは言った。
「ルシルスです」
本物の街道警邏隊の隊長は言った。
「彼等は本物です。まだ、シラを着るつもりでしょうかな」
マグギャランを騙した女は言った。
「私達は、この七人の名前を語る詐欺師を追いかけていたのだ。どうやら勘違いしたようだ」
本物の街道警邏隊の隊長は言った。
「この四人を捕まえろ!」
十数名の街道警邏隊の隊員達が、スカイ達を騙していた四人を捕まえた。
スカイは言った。
「手間掛けさせやがって」
バゲットは言った。
「後は「懐かしのウタタ」の検問所を通るだけだ」
「懐かしのウタタ」の検問所をスカイ達は通った。
五人の男女がスカイ達七人と可憐暗殺隊に向けて歩いてきた。
一人は背が低い四十代ぐらいの男で、一人は恰幅のいい180センチぐらいある四十代ぐらいの女だった。三人の若い息子ぐらいの年代の男達が居た。
恰幅のいい女が言った。
「ブレッダー、待っていたよ」
バゲットは言った。
「久しぶりだな、シナーモ」
背の低い男が言った。
「ブレッダー、どうやら期日通りに、ラバナを連れて来たようだ。「手形」は届いた」
バゲットは言った。
「スカイ、マグギャラン、コロン。紹介するぞ、この五人がモッドゴール商会の五人家族だ。父親のワッサー・モッドゴールに、母親のシナーモ・モッドゴール。長男のマスド・モッドゴール、次男のジンジャル・モッドゴール、三男のペッパ・モッドゴールだ」
シナーモ・モッドゴールは言った。
「ラバナの花嫁衣装は出来ているよ」
スカイ言った。
「どういうことだ」
バゲットは言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道