死闘のツルッペリン街道
コロンは金切り声のような声を続けて上げた。
「あちゃいは一級錬金術師免許を持っているの!」
途端に、青ゾリ、兄弟のゴドルとギーンの動きが止まった。
右青ゾリのゴドルは、マグギャランとの戦いを切り上げた。
「ギーン!オレ達は戦いを中止するぞ!」
左青ゾリのギーンは言った。
「兄者!判ったぞ!」
右青ゾリのゴドルは剣を収めた。
マグギャランは言った。
「ふむ、そう言う事か」
右青ゾリのゴドルは言った。
「そうだ。オレ達は決闘沙汰に興味があるわけでは無い。妹のドナを助ける事が目的だ」
スカイの前で、左青ゾリのギーンは、マンティコア流二丁剣をクルクルと回して両腰の鞘に収めた。
スカイは可憐暗殺隊の三人を見た。
コロンが、火炎魔法、炎のコマで追い回していた。
スカイは言った。
「お前達はブリリディ・ブリリアントに雇われたんだろう」
キラー・リボンのタリマは言った。
「多分間違いないけれど。私達暗殺者は、依頼主を知らない事がルールなの」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「そう。私達は、あなた達三人を殺さなければ、死ぬしか無いのよ」
ミルカラは言った。
「そう、それがバタンの暗殺者の掟なの」 スカイは言った。
「それなら、他にオレ達を殺さずに済む方法が無いのかよ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「依頼主が、暗殺者ギルドに仕事のキャンセルを伝えれば、私達暗殺者の仕事も中止になるけれど」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「でも、無理よ。どうせ、ブリリディ・ブリリアントという商人は金銭欲に、まみれて、私達を雇ったんだから、キャンセルなんかしないでしょ」
七徳剣のミルカラは言った。
「そうよ。依頼主が仕事のキャンセルをすることは滅多に無いのよ」
スカイは言った。
「それじゃ、取引しようぜ。俺達三人が、ブリリディ・ブリリアントに仕事のキャンセルをさせる。そうすれば、お前達は人殺しをしなくても済むし、オレ達は殺されずに済む」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「バカね、あなた。私達は生まれつきの暗殺者なのよ。あなた達三人を殺す仕事がキャンセルになっても、別の仕事が来れば人殺しをしなければならないのよ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「これ以上、人を殺さないためには、私達は、ここで死んだ方が良いのかもしれない」
七徳剣のミルカラは言った。
「あなた達が殺してくれる?それとも私達で自害した方がいいかな」
スカイは言った。
「おい、やめろよ。暗い話しばかりするなよ」
毒針空気銃のルマナは言った。
「大丈夫だよ、みんな!私は一万ネッカー(10億円)の遺産を持っているんだよ!だから、可憐暗殺隊を、私が、私自身も含めて「カウンター・アサシネーション」で雇えばいいんだよ!」
スカイは言った。
「どういうことだ」
マグギャランは言った。
「暗殺者ギルドは、暗殺を請け負うほかに、暗殺を仕掛けてくる暗殺者達を撃退する仕事も請け負う事がある。「カウンター・アサシネーション」だ。つまり暗殺者を警備員として雇う仕事だ」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「確かに、「カウンター・アサシネーション」で私達が自分達を雇えば、暗殺の仕事はしなくて済む。だけれど。それには大金が必要なのよ。私達には、そんな大金が出せるはずは無い」
毒針空気銃のルマナは言った。
「大丈夫だよ。私が雇うって言っているでしょ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「ルマナ、あなたは、自分の為に、お父さんが残した一万ネッカー(10億円)を使って。私達は、ここで死ねばいいだけだから」
七徳剣のミルカラは言った。
「もう人を殺す事もないから」
スカイは言った。
「ルマナがカネ出すって言うんだから、素直に、その「カウンター・アサシネーション」で暗殺者辞めろよ」
毒針空気銃のルマナは言った。
「私は、タリマも、エプトナもミルカラも好きだよ。私の、お姉ちゃんと同じなんだよ。子供の頃から、四人一組で可憐暗殺隊として、暗殺者の訓練を受けていたんだから。だから、私は「カウンター・アサシネーション」に、お金を使うよ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「ルマナ。ありがとう」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「本当にいいのルマナ」
七徳剣のミルカラは涙ぐみながら言った。
「…ありがとうルマナ」
青ゾリ兄弟の右青ゾリのゴドルが言った。
「コロナ・プロミネンス。お願いがある」
コロンは言った。
「……あちゃし?」
右青ゾリのゴドルは言った。
「この可憐暗殺隊の、キラー・リボンのタリマの母親は、重病のカッカク病で余命が一ヶ月を切っている。カッカク病の錬金術の薬を、キラー・リボンのタリマに作って欲しい」
コロンは、きょとん、としてから言った。
「……うん、いいよ」
スカイ達七人は、再び馬に乗った。
青ゾリ兄弟と可憐暗殺隊も馬に乗った。
そして、眼下に見える街「渓谷のラビド」に向かった。
コロンは、錬金術の材料店に入って、本と材料とフラスコや試験管や、アルコール・ランプなどの器具を買ってきた。そして本を開いて読んだ。そして道ばたで、怪しげな実験の様な事を、やり始めた。
コロンは相変わらず異常に手の動きが速かった。
コロンは、まず、キラー・リボンのタリマに瓶にコルク栓を閉めたモノを渡した。
キラー・リボンのタリマは受け取って言った。
「これが、カッカク病の治療薬なのね」
コロンは頷いて言った。
「……うん」
キラー・リボンのタリマは言った。
「本当だったら、これは、五百ネッカー(5000万円)もする、高価な錬金術の薬なの。判っているの?」
コロンは顔を赤くしてモジモジしながら言った。
「……いいの。ロザ姉ちゃんが困っている人を助けるように言っているから」
タリマは言った。
「この恩は一生忘れないから。ありがとうコロナ・プロミネンス。いつか必ず恩返しをするから」
次に一升瓶ぐらいの大瓶の錬金術の薬が出来上がった。
コロンはコルク栓を閉めた。
そして、右青ゾリのゴドルに渡した。
コロンは言った。
「……これが、虚弱体質の改善をする導入剤ガンキョー。これを一日に10ml飲み続けて、運動を続ければ、虚弱体質は改善する事が出来る錬金術の薬なの」
ゴドルは涙を流しながら言った。
「感謝するぞ、コロナ・プロミネンス」
ギーンも涙を流しながら言った。
「兄者!コロナ・プロミネンスに感謝するんだ!これは、400ネッカー(4000万円)もする錬金術の薬「ガンキョー」だ!兄者と俺達が買おうとしていたのは、もっと安い「ソコソーコ」だ!」
コロンは困った顔をしていた。
コロンはボソリと言った。
「……でも、「ガンキョー」の錬金術の材料の原価は一ネッカー(10万円)で、カッカク病の治療薬の材料の原価は一万六千ニゼ(8万円)なの」
右青ゾリのゴドルは言った。
「それではさらばだ!コロナ・プロミネンス!」
左青ゾリのギーンは言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道