死闘のツルッペリン街道
「バーリ・ゾーダは頭が、おかしかった。歴史在るヒマージ王国を本気で潰して国王になる気だった。そんなこと、誰が考えたって、おかしいだろう。歴史在るヒマージ王国は永遠に続かなければならないんだ」
ラメゲは言った。
「オレの仕事は、暴走山賊団「闇の腕」の大将首の首級を上げる事だ。ヒマージ王国の歴史なんかに興味は無い」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「オレは貴族の次男坊だ。ヒマージ王国のクメント男爵領の次男坊マラーリだ。マラーリ・クメントが本名だ。ヒマージ王国のスパイ組織「ホーンテッド・ゴースト」のスパイでエージェントで潜入捜査官なんだ」
ラメゲは嫌そうな顔をして言った。
「ヒマージ王国は下らない事をするな。それならば、なぜ、ヒマージ王国の軍隊を負かしたんだ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「予想以上に「闇の腕」が強かったんだ。こんなに勝ち続ける事は予定に入っていなかったんだ。だから、「血の報復」という無理な行軍をして、オレは「ホーンテッド・ゴースト」の命令で、ヒマージ王国軍に暴走山賊団「闇の腕」を潰させる予定だった。だが、だが、ヒマージ王国軍は弱すぎた。装備の劣悪な暴走山賊団「闇の腕」に大敗を喫して、半分にまで負けてしまった」
ラメゲは言った。
「ヒマージは戦争を最近していなかったはずだ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「だが、弱かったヒマージ王国軍は、今日、急に強くなった。そして暴走山賊団「闇の腕」
は壊滅的な敗北を喫した」
ラメゲは言った。
「それは、とあるエロイ男が。指揮を執っているからだ。アイツが、あんなに優秀な将軍だったとはオレは気がつかなかった」
首領の断裂刀のリッヒル・メラーニは言った。
「何を意味不明の事を言っているんだ」
ラメゲは言った。
「半分愚痴だ。聞き流してくれ」
突然木が倒れた。
三メートル以上在る、筋肉隆々の巨体の女山賊が戦斧を持って、次々と森の木々を怪力で切り倒しながら現れた。額には青筋が立っている。そして全身には矢が突き刺さっていた。
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」だった。
横には、バラール姉妹の妹「ガラン・バラール」が腕を組んで立って居る。
そして、「投げ殺しのサナール」が居た。
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「リッヒル。全部聞かせて貰ったよ。まんまんと、あたし達をハメやがったね。この薄汚いスパイめ」
バラール姉妹の妹「鉄手のガラン・バラール」は鉄の手甲を打ち合わせて言った。
「よくも、バーリ・ゾーダの兄貴を売ってくれたもんだね。バーリ・ゾーダの兄貴は、
あたし達姉妹の恩人なんだよ」
投げ殺しのサナールは言った。
「リッヒルの兄貴!ウソだと言ってくれ!俺達を裏切っていたなんて、今でも信じられねぇ!」
首領の「断裂刀リッヒル・メラーニ」は言った。
「サナール。悪かったな。今まで騙していたんだ」
投げ殺しのサナールは言った。
「そんな事、言わないでくれリッヒルの兄貴!」
ラメゲ・ボルコは事情が飲み込めた。汚い話しだった。
ラメゲは言った。
「悪いが。オレは、この男が、ヒマージ王国のスパイだろうと、暴走山賊団「闇の腕」の首領だろうと構わない。首級を上げる事が仕事だ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「さすが、タビヲン王国の剣士だよ。ラメゲ・ボルコ。あんたは話しの通りが良い。この薄汚いスパイを、ぶち殺してくれ。裏切り者だが、リッヒルは、剣士としては強いんだよ。あたし達じゃ腕ずくという訳にはいかないさ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「どのみち、オレは終わりさ。ヒマージ王国のスパイ組織「ホーンテッド・ゴースト」は、ヒマージ王国軍の大敗で、オレが裏切ったと考え始めている。そして、「闇の腕」の幹部達にオレの正体を知られてしまった」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は、腰の断裂刀を抜いた。片刃の剣だった。
ラメゲは言った。
「オマエの剣の腕は、十の剣と見た」
ラメゲは背中の十本の剣から一つの剣を抜いた。
ラメゲは言った。
「十の剣ドラゴン流剣術だ。この剣術の極意は、ただ単に勝つ事のみ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「オレの剣術はベヒモス流剣術。得意技は、あらゆるモノを断ち切る断裂刀だ」
ラメゲは十の剣を構えた。
投げ殺しのサナールは、二人が一瞬で消えたように見えた。
そして立つ位置が逆になって居た。
ラメゲ・ボルコの鎧が左肩から右腰に掛けて切れていた。そして血が断たれた鎧の隙間から垂れていた。
ラメゲ・ボルコは言った。
「オレの勝ちだ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は左肩から、血を吹き出し袈裟に切られて倒れた。
ラメゲ・ボルコは言った。
「強いヤツだったな」
ラメゲは剣に付いた「断裂刀のリッヒル・メラーニ」の血をハンカチで拭って、背中の鞘に十の剣を収めた。
ラメゲ・ボルコは言った。
「それでは、殺した証だ。死体を貰っていくぞ」
ラメゲは馬の鞍の後ろに、暴走山賊団闇の腕首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」の死体を乗せた。
ラメゲ・ボルコは馬に乗った。
投げ殺しのサナールは馬に乗って森の中を走り去るラメゲ・ボルコを見ながら言った。
「あの、断裂刀を使うリッヒル・メラーニの兄貴を一発で殺しやがった。スッゲェ強いヤツだ」
バラール姉妹の妹「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「サナール、よく見ておけ。あのラメゲ・ボルコでさえも手傷は負っている。リッヒルは、ラメゲ・ボルコでも手傷を負うような剣士だったんだよ」
投げ殺しのサナールは言った。
「そんな強いのになぜ、リッヒルの兄貴はヒマージ王国のスパイなんかしていたんだ」
バラール姉妹の妹「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「貴族の世界は長子相続権だからね。リッヒルも結局は、貴族の次男坊さ。生きていくためにはヒマージ王国のスパイ組織「ホーンテッド・ゴースト」に入らざるを得なかったのだろう。あれだけ剣の腕が立ってもね」
投げ殺しのサナールは言った。
「あれだけの剣の腕を持っていても、貴族の世界では日陰者か。情けねぇな。みっともねえ話しだ。そんな貴族の世界なんか、ぶっ壊せば良いんだよ。リッヒルの兄貴は、ヒマージ王国のスパイ組織「ホーンテッド・ゴースト」を裏切って、バーリ・ゾーダの兄貴と一緒に暴走を続けるべきだったんだよ。そしてヒマージ王国の国王や貴族達から権力を奪えば良かったんだ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「あたし達「闇の腕」は、「血の報復」を、必ずヒマージ王国にしてやるよ」
投げ殺しのサナールは言った。
「判った、姉貴が、「闇の腕」の首領になるんだな」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道