死闘のツルッペリン街道
ルシルスは化粧はしていなかった、ようだったが。ヒマージ王国の女性士官の制服を着たサシシ・ラーキーは化粧をしていた。
スカイ達七人と、エルレア・メキア女将軍と隊長達は、ヒマージ王国の軍隊が待つ、広場へと向かって歩いて行った。
歩きながらスカイはマグギャランに言った。
スカイは言った。
「戦争なんかやめろよ。早く、「懐かしのウタタ」に行こうぜ」
マグギャランは言った。
「スカイよ。お前も判っているはずだ。ヒマージ王国の美女、エルレア・メキアが助けを求めているのだ。当然、後で濃厚でディープな、ご褒美が待っているのだ」
スカイは言った。
「減らず口なんか叩くなよ」
マグギャランは言った。
「スカイ、「勝者の剣」を貸せ、験担ぎだ。俺の剣は、こういう戦いに向いていない」
スカイは言った。
「判ったよ」
スカイは腰の剣をマグギャランに渡した。
マグギャランは姉の形見の女物の剣をスカイに渡した。
マグギャランはスカイの剣の剣帯を腰に巻いた。
マグギャランは言った。
「今、暴走山賊団「闇の腕」を負かさなければ、オレ達のバゲットとラバナを護衛する仕事も完了とは行かぬのだ」
スカイは言った。
「確かにそうだが。よく考えれば、バゲットとラバナの護衛は期日が付いていないんだ。アイツ等の都合なんか、オレ達は重要視する必要は無いのだよ」
マグギャランは言った。
「そう言うなスカイ。お前は冒険屋の仕事はキッチリとやるタイプだろう」
スカイは言った。
「確かに、そうだけれどよ冒険屋のルールが通用しない状態じゃ無いかよ」
マグギャランは言った。
「それも、そうだが。これも騎士道的にはアリだ」
サシシ・ラーキーがヒマージ王国の軍服を着て急場作りの広場のステージの上でダンス・ミュージック風の歌を歌いながら踊り出した。
ヒマージ王国の国歌をダンス・ミュージックにしたような感じだった。
サシシ・ラーキーは、それほど背が高く無いが、足が細く長くて、スタイルが良いモデル体型だった。
ヒマージ王国軍の男性兵士達が、燃えていた。女性兵士達も、燃えていた。
マグギャランは言った。
「これは、戦の秘文字教のイケナイ魔法「戦争の歌」だ。多分、サシシ・ラーキーはルシルスの能力を使って、歌って踊っているのだ」
スカイは言った。
「さすが、サシシ・ラーキー、危険な女だぜ。ヒマージ王国の軍隊を戦争に駆り立てるとは凶悪な女だ」
マグギャランは言った。
「スカイ、コロン。お前達は、バゲットとラバナと一緒に「バラントの街」の城壁でオレ達の戦いを見ていろ」
スカイは言った。
「犬死にはするなよ」
マグギャランは言った。
「ああ、そのつもりだ」
サシシ・ラーキーが歌い踊り終わり、ヒマージ王国の兵士達のテンションは異常に盛り上がっていた。
エルレア・メキア女将軍がステージの上に立ってフラクター選帝国製のマイクを持って訓示を開始した。
エルレア・メキア女将軍は言った。
「私は、ヒマージ王国軍の臨時指揮官、エルレア・メキルである。今回、我々は、ヒマージ王国の領土の一部を奪った、暴走山賊団「闇の腕」を滅ぼす、君命をヒマージ王家から下命した。だが、我々は、負けてしまった。
」
エルレア・メキア女将軍は演説が下手なようだった。
マグギャランが、エルレア・メキア女将軍から、マイクを取った。
マグギャランは言った。
「私は、エルレア・メキア女将軍から指揮を託された自由騎士(フリー・ランサー)マグギャランで在る!我々の目的は、ただ勝つ事のみに在る!暴走山賊団「闇の腕」にヒマージ王国軍が負けたのは偶然では無い!これから勝つための必然で在る!暴走山賊団「闇の腕」は、五人一組の戦術以外は持っていない!我々は、五人一組の一人に対し、重装歩兵二人で撃破に当たる!……」
スカイは朗々とした声で演説するマグギャランを見ていた。
そして兵士達が魅入られたように聞いていた。
いつものマグギャランらしさは無くなって、別の男が、そこには居た。
スカイは首を振りながら思った。
アイツはマグギャランじゃ無いな。
暴走山賊団「闇の腕」の幹部達五人の会議は続いていた。
突然、「投げ殺しのサナール」の千人隊長デリマがテントに入ってきた。
「サナールの兄貴大変だ!」
投げ殺しのサナールは言った。
「デリマ、俺達は会議中だ」
千人隊長デリマは言った。
「違うんだ、サナールの兄貴!メラーニの兄貴大変だ!ヒマージ軍が動き出しました!」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「逃げ出したのか?」
千人隊長のデリマは言った。
「逆です「バラントの街」から出てきたんです!」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「戦だよ!戦を始めるのさ!ヒマージ王国の軍隊を目茶苦茶に、ぶっ潰して、ぶっ壊す!」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「今のままだと、オレ達まで殺されるぞ」
投げ殺しのサナールは言った。
「大丈夫さ、リッヒルの兄貴。オレ達は、五人一組で一人を狙う戦い方に慣れている。ヒマージ王国軍とは場数が違うんだよ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「今、オレ達は、バラントの街の北側にある「ヒース平原」に散開している。このままでは、負けてしまうだろう」
投げ殺しのサナールは言った。
「それなら、オレ達も部下達を集めるぜ。デリマ!「投げ殺しのサナール」の薬指の一万人を早く集めるんだ!」
千人隊長のデリマは言った。
「わかりやしたサナールの兄貴!」
他の、暴走山賊団「闇の腕」の幹部会「五本指」に次々と、部下の千人隊長達が報告に来た。
投げ殺しのサナールはデリマの報告を聞いて言った。
「なんだ、ヒマージ王国軍は、槍と盾を持って、クロスボウを持っているのか。騎兵は居ないのか。居る事は居る?だが数は前よりも少ない?」
暴走山賊団「闇の腕」の幹部達はテントから外に出た。既に戦闘は始まっていた。
ヒマージ王国軍は、クロスボウ隊と重装歩兵の二つに分かれていた。
投げ殺しのサナールは言った。
戦いは殆ど一方的にヒマージ王国軍が陣形を揃えたまま「ヒース平原」に散開した暴走山賊団「闇の腕」の山賊達を槍で仕留めていった。
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「不味いな、指揮官が替わったか」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「あんな、チンケな一万のヒマージ軍なんか、あたし等、暴走山賊団「闇の腕」の敵じゃ無いよ」
投げ殺しのサナールは言った。
「早く、オレの薬指の一万人を集めるんだ。ヒマージ王国軍を撃破してやる!」
バラール姉妹の妹の「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「そうさ、いつもの事さ。あたしの中指の一万人で生意気なヒマージ王国軍め、返り討ちにしてやるさ」
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道